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後始末と猫さん

 全ての襲撃者を皆で村の一角に集めました。彼らの足は逃げないように潰しています。騒ぐのでへルマンさんとグレッグさんが縄で口を塞いでくれました。


 コリーさんはやっぱり凄いです。

 的確に相手の太股を剣で貫いていました。どの人を見ても同じ箇所を寸分違わず刺しておられます。



 さて、何故こんな風に集めたかというと、アデリーナ様発案で、「メリナさんの死なすなという願いです。ルッカさんの僕となって貰いましょう」となった為です。お優しいです。


 今は一人ずつルッカさんが順番に食いついているところでして、捕まっている皆さんの中には涙を流している方もいらっしゃいます。


 大丈夫です! 私的には全然オッケーです!

 吸血鬼の僕なる者が生者か死者か、すっごく微妙ですし、私はそんな知識もないので、よく分かりません。ただ、動いているなら殺してないと言い張れるでしょう。


 そう言えば、謁見式の夜会の後に襲ってきた刺客達はどうなっているのでしょうか。「次に命令するまでは自由に」とルッカさんは指示を出したのですが、会うことが無ければ、ずっと自由ですね……。

 …………盲点でしたよ。

 やはり殺すべきでした。



 ルッカさんが吸い終わるのを待つのに飽きまして、キョロキョロすると、エルバ部長が怖い目をしているのを発見しました。



「そんなに機嫌を悪くされて、どうしたんですか? へルマンさんと喧嘩ですか?」


「あぁ? へルマンと喧嘩して、私が機嫌を損ねる訳がないだろっ! マジで」


 部長は続けます。


「……おい、メリナ、あいつは何だ?」

 

「前にも言いましたし、昨日もお伝えしたではないですか? 吸血鬼のルッカさんです」


「明らかに人類の敵だろ、マジで。魔物駆除殲滅部の出番じゃないのか?」


 ここで場を読めないグレッグさんが後ろから出てきました。


「お前の思うことも分かるが、その前にだな。口の悪さを直さないといけないぞ。お前が悪いんじゃない、親の躾に恵まれなかったんだ。しかし、大丈夫だ。ちゃんとした学校で学べば、きちんと喋られるようになるからな。頑張れ」


 ……エルバ部長は魔法学校の偉い人みたいですけどね。

 すっごい嫌な顔をされましたよ、部長は。



「巫女殿、私もこれは過ぎたる罰と考えます」


 コリーさんも寄って来ました。それに答えたのはアデリーナ様でした。


「コリー、あの者共は負けたので御座います。それだけの事です。もし、彼らが勝っていれば、私たちにもっと酷い事を実行していたかもしれませんよ」


 その通りです。しかも、その良い笑顔がさすがアデリーナ様です。

 あと、腕に抱いている猫さんがとても可愛らしいです。


 この猫さんですが、コリーさんが森の中で発見されたのです。コリーさんも魔力感知が出来るようでして、先程まで敵を潰していたのですが、魔獣の類いがいると思って向かった先にいたのが、この猫さんだったのです。


 艶々した黒い毛並みでスリムな体。青いお目々が宝石みたいに輝いています。

 こんな危ない森の中にいるのですから、只の猫ではないとコリーさんも思ったようですが、流石に猫を殺処分することには抵抗があったのです。


 とても可愛くて、賢そうな猫ですものね。



 アデリーナ様も一目で気に入られまして、ずっと背中を撫でられています。



「私も触って良いですか、アデリーナ様」


「頭を握り潰してはなりませんよ?」


 ……私がその様な真似をするとでもお思いか!?


 私はゆっくりと手を伸ばします。


 猫は毛を逆立てて「シャーーー!」って言いました。あら、怖がらせてしまいました。


「コリーさん、この猫は人肉を食べますかね?」


「……巫女殿、肉は食べると考えますが、人の肉である必要はないと思います」


 そうですか。ルッカさんの沢山いる(しもべ)の指くらいなら、切って食べさせてあげても良いと思ったのですが……。


 私は諦めます。触ることも餌を上げる事も。あとで、アデリーナ草の舌でも取ってきましょうね。



「可愛いですね」


「そうで御座いますね。メリナさんもお分かり頂けましたか?」


「ちょこっと、私も抱きたいです」


 また「シャーーー!」って、猫は鳴きました。まるで人語を解するが如くです。ただ、解しているなら私の優しい言葉も分かるはずで、やはり獣であることには間違いありません。


「その猫も気持ち悪いな、マジで」


 エルバ部長が言います。全く失礼な人間です。こんなにつぶらな瞳をしている生き物ですよ。



「ふぅ。満腹。フル充填よ」


 ルッカさんが戻って来ました。


「巫女さん、氷が刺さった二人は死ぬわよ。体温が奪われ続けてるもの。私、一目でジョードロップス」


ジョードロップ? 他国の言葉はよく理解できないですね。


 いえ、それよりも!

 あいつら、死ぬんですか!?


 私は急ぎ、氷の槍を引っこ抜いてから、回復魔法を掛けました。二人とも意識を失っていたので楽でした。


 あと、氷の槍を抜いても血は出ませんでして、皮膚が空洞に沿って形成されていました。私の回復魔法は異物があるとそこを避けるように再生するようですね。

 一つ賢くなりましたよ!



「あー、その猫さん、村に来たんだ!? 私、ハッピー」


「どうしたんですか? ルッカさん」


 ルッカさんはご存じの様でした。この辺りに魔力の補充に来たと言っていたので、その時にも出会っておられたのかな。


「でも、まだ血を吸えないかな。もっと大きくなってからね。ソーリーね」


 あぁ、食料として認識でしたか。

 この魔族め! 

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