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役割分担

 グレッグさんのお料理を皆で堪能しました。

 部屋には10人ですね。

 私、アデリーナ様、アシュリンさん、ルッカさん、コリーさんが戦闘要員でしょう。あと、オロ部長は部屋にはいませんが、武器を持った兵と対抗できる人材です。6人です。


 グレッグさんは何でしょう。んー、後方支援係。そう、炊事兵ですね。


 しかし、近況を聞けば、なんと騎士になるための試験を合格されたらしいのです! 本当でしょうか。あの程度の腕で騎士になれるのか怪しいです。

 しかも、王都と事を構えている現状で、こんな辺鄙な場所に配下も揃えずに居て良いのでしょうか。その辺りを質問しました。


「……失踪した騎士が何人かいて、枠が増えたんだ。その中に滑り込んだ。情けない話ではあるが、バンディールへの復封を目指して頑張りたい」


 その前に死ぬでしょうに。騎士ともなると、実戦さながらの激しい馬上稽古があると聞いた事があります。

 あと、失踪した騎士の件ですが、私が牢屋から解放された日に起こったようでした。……その失踪された方はアデリーナ様による粛清の犠牲者のメンバーの可能性が高いですよ……。

 そのまま伝えると、グレッグさんの性格なら苦悩してしまうかもしれませんね。迷いが出来てはいけません。黙っておりましょう。


 で、騎士団長からの特命によって、独りで神殿に行くように伝えられたそうです。そこからオロ部長ライドオンでここに来たのです。

 オロ部長の巣穴は神殿内の『巫女さん業務用領域』の奥の奥にありますが、神殿からの依頼と言う形で入られたそうです。他の方も同時に運ばれたそうです。


「ここで何をするんだ? 和平が成るまで、メリナを匿うための村か?」


 おぉ、アシュリンさん、説明していないのですか? グレッグさん、戦力外にしてもそれは余りに酷いですよ。

 ……もしや、ニラさん達にも危険性を説明していないんじゃないですか!?


 あとで、要確認です。



「夜会では傍に行けなかったから、今言うが、へルマンさんの体を治してくれた件、礼を言う」


 へルマン? んー、誰だ?


「あの人は俺を助けるために囮になってくれたんだ。……酷い拷問を受けてな。あの城で掛けた広域回復魔法、俺はお前の仕業だとすぐに分かったぞ」


 私はへルマンが誰だか全く分からないです!!


「まさか、夜会の舞台で、その人の両目を潰して治す芸をするとは思わなかったが」


 あぁ!! エルバ部長のお父さんっぽい人だ! すっきりです!


 しかし、敢えて『芸』と表現されましたね。グレッグさん的には仕込みだと思われた、という事ですね……。

 観察力が足りないですよ、グレッグ。戦場で相手の実力を見誤ると死んでしまいます。



 ニラさん、ブルノ、カルノは人数合わせでしょう。コリーさんにも伝えて、この人たちは一般の方なので絶対に守りましょうと言わないといけませんね。



 畑の巫女さんに声を掛けました。お名前はケイトさんと言うらしいです。実は私の巫女見習い生活の初日からお会いしている巫女さんなのですが、初めてお名前をお聞きしました。

 落ち着いた方で、見た目はルッカさんの外観年齢くらいなのですが、雰囲気は良い意味で若くないです。静かで理知的な感じですね。彼女は巫女服を身に纏っておられます。


「何故、ここに来られたのですか?」


「薬師長の指示です。うちのマリールさんが成した素晴らしい発明の協力への返礼という形で、メリナさんの護衛を頼まれました」


 私の護衛? 私より遥かに弱そうなケイトさんがですか?


「不思議そうな顔ですね。私の専門は薬毒物なのです。畑でもそう行った植物を育てています。メリナさんが毒殺されないように、対抗薬をすぐに準備しますからね」


 畑には薬草だけでなく毒草も生えているのですか……。アシュリンさんが踏みつけて荒らすのは実は良いことだったのではと思ってしまいましたよ。


「……私に毒が盛られる前提ですか?」


「吹き矢とかも有りますし、吸い込ませる方法も有りますよ」


 何故に嬉しそうに言うんですか!?


「この液なんて凄いですよ。なんと肌に一滴付けるだけで即死です。ある種の鉱石、鳥の糞で出来た島から採れる石なのですが、それを混合酸で溶解し、それを更に植物から取った油に触媒を入れて分離生成したガスを吹き――」


 懐から液の満ちたガラスの小瓶を出しながら、私に説明してくれます……。その小瓶がまた香水の容器なんですよ。間違って触ってしまうかもしれないじゃないですか!?

 この人、怖い。嬉々として合成の仕方を語る様子から圧倒的な狂気を感じ取りました。

 アシュリンさん、なんてお人を敵に回していたのですか!? いずれ暗殺されますよ!


「――で、最後に、瓶へ詰めるのが一番危なくて、作った本人が死なないようにですね、完全防備。それから、解毒魔法のエキスパートをガラス窓向こうに置いてから、封入するのです」


 まだ喋っておられました!


「そ、そうですか。ご助力有り難う御座います」


「えぇ、こんな毒でも対処は出来ますからね。それにしても、ここに来られて個人的にも嬉しいです。神殿域では禁止された植物も、ここでは育てられそうだし」


 ひぃ。怖いです。村の畑には近づかないようにしないといけませんね。



 以上、コッテン村の住人は11人です。

 村と呼べる大きさではないですし、男性が三人しかいません。

 ……偵察兵が来ると怪しまれそうです。ご老人もいらっしゃいませんし。



 夕食後に、私はオロ部長に乗ってシャールに戻って来ていました。


 あの高速地下道で帰るのが嫌で、断ったのですが、巫女長からの要請が出ているとアシュリンさんが言うのです。


 仕方ないです。


 でも、この機会にパン職人になりたい件についても話をさせて頂きましょう。

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