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ミミズ

遂に200話……。

王都にはいつ辿り着くのか(^^;

 出し抜けに手に入れた我が家の前で、私は立っています。

 ちょっと大き過ぎましたかね。一人で直すには少ししんどいかも。二階のない平屋作りで良かったです。


 いえ、やってやりましょう! このメリナ、シェラの別荘に匹敵する物を作って、マリールとともにご招待するのですっ!!



 錆び付いて動かなくなった扉を強引に叩き割って、私は中に入る。


 出迎えたのは、いきなりの白骨でした……。


 初っ端から心が折れそうですが、頑張りますよっ!



 白骨死体は人間の様でして、頭蓋骨から足の先まで綺麗に残っていました。倒れ死んだまま、骨と化したのでしょう。


 これはラッキーです。壁とか痛んで見えますが、この家には野獣や魔獣は入り込めないくらいには状態が良いのでしょう。ポジティブシンキングです!


 私は骨を全部外に投げ捨てました。地面に張った氷で、カランカランと音が鳴ります。


 あと、扉が開かなかった理由は閂がしてあったからです。叩き割って正解でしたね。



 慎重に家中を探りました。

 四部屋あったのですが、その内の一部屋に骨がありました。複数で、全部人間です。

 ……殺人事件でもあったのかと思いますよね。不吉です。不吉ですが、ここは今日から我が家なのです!


 骨はまとめて外に出します。氷の上にぶっちゃけました。仕方ないのです。氷が固くて土が掘れる状況ではないのですから。

 お許し下さい。



 私の選んだ家屋には大きな穴は有りませんでした。雨漏りの跡も無かったのです。かなり、上等な空き家で良かったです。


 問題は埃っぽさと虫が多い事です。特にベッドのシーツの下とか覗く事さえもおぞましいですよ。絶対虫が湧いていますよ。


 あとは木窓も早くガラスにしたいところですかね。部屋が暗いです。しかし、私にはガラスを嵌める知識も技術もないので、後日の課題と致しましょう。



 まずは虫退治です。

 ちっちゃくて黒い甲虫がよく床を這っています。……どこかに卵もあるでしょう。


 燃やし尽くしたいですが、家も大火事になってしまいます。どうしたら良いか、私は考えます。


 とりあえず、外に出ました。



「メリナさん、作業は大丈夫ですか?」


 アデリーナ様が近付いてきていました。


「あっ、はい。そんなに大きな問題はなかったので、あとは虫とかの対策です」


「そこの骸骨の山を見て、そう思えるあなたの神経が羨ましくもあります」


「あとでちゃんと土に戻しますよ」


 アシュリンさんがご自分で選んだ家の屋根に登って、トンカチでカンカンやっておりました。ああいった道具もアデリーナ様が持って来られたのでしょう。



 突然、バシンって重い音が響きました。

 これはオロ部長の尾の音です。恐らくは敵襲!

 オロ部長は氷が冷たいとかで村の入り口で待機されていたのです。



「アデリーナ様!」


 私は蟻猿戦を覚えています。でっかい蟻猿と戦う前にアデリーナ様は敵の数を正確に言い当てていました。それを今回も期待したのです。



 アデリーナ様はしばらく目を瞑ってから言いました。


「魔物が二匹で御座いますね。森の中です」


 周り中が森です。もっと詳しくお願いしたいので御座いますよ。

 しかし、二匹程度ならば、何とかなりますね。ほっとしました。フロンでなくて良かったです。


 いえ、フロンであっても、こちらはオロ部長も人として計算して五人、対して向こうは一人ですから苦戦するとは思いませんね。もし出てきたときても、捕らえて胴体から頭を離してやりますよっ!



「どこだっ!」


 アシュリンさんも屋根から飛び降りて臨戦態勢です。


 オロ部長の頭が見えました。どうも普段以上に鎌首を上げ、首を左の方に向けて舌をチロチロ出します。

 さすが、オロ部長! 情報共有の適切さが半端ないです。そっち方向にいるんですね!



「騒がしいわね。魔物なんて居なかったわよ。ビリーブミーよ」


 ルッカさんはゆっくりと汚い小屋から出てきました。


 木々が揺れて、その梢よりも高くに出てきたのは大きなミミズでした。黒くてヌメヌメ感の強いヤツ!

 オロ部長よりも一回り大きくて太いです。


 私、知ってます! こいつは鰐蚯蚓(わにみみず)

 ミミズの癖に牙を持っているのです! しかも切っても焼いても動き続ける厄介な魔物ですよ。


「あっ、土の中にいたら分からないわね。ソーリーね」


 えぇ、こいつらはヤバイんです。滅多に地上に出てきませんが、出現した時は飢えている時で、とても凶暴です。

 私の家が押し潰されるかもしれませんよ。


 一匹しか見えないということは、もう一匹は地中のままですね。


 ドンっと下から突き上げる衝撃が走りました! 幸い氷を張っていたお陰で、ミミズは出て来れませんでしたが、森の中に見えたのは囮で、地中から出て来て私たちを挟むか、奇襲する考えだったのでしょう。



「さっき調べた時は、あの見えているヤツの傍にいたと思いましたよ! もう後ろに移動したので御座いますか!?」


 アデリーナ様が驚かれました。


「違います。あいつらはとても大きくて、更に体が伸びるんです。あそこから、ここまで地中で体をぐいーって伸ばしただけなんです」


「かなりの化け物ではないですか?」


「はい。すぐ殺しましょう」


 大丈夫です。このメンバーなら油断しなければ誰も犠牲にならないはずです。


「アシュリンさん、前に出ます!」


「分かった! メリナ、ヤツの弱点は!?」


「動かなくなるまで切り続けるしかありません! あと、体液は毒です。触れないで下さい!」


「アデリーナさんは避難ね。ちょっとムーブ」


 近寄ってきたルッカさんはそう言うと、アデリーナ様の後ろから脇に手を回して持ち上げる用に空を飛びました。


 ちょっ、あなたは盾役でしょうに、ルッカさん。後ろに下がるとは何事ですか!?


「ちょ、ルッカ! く、くすぐったいわよ!?」


 足をバタバタさせながらアデリーナ様を屋根の上に置かれましたね。

 そこは私のお家です。アシュリンの小屋にして頂きたいです。


 さて、何はともあれ、襲われる前に配置は完了しました。オロ部長は横槍を入れる係でしょうかね。


 さぁ、参りましょう。

 私は地面の氷を蹴った。まだ融けてないので滑りませんよ。

「こしょばい」って西日本の方言なんですね。

念のために調べて良かったです。

「くすぐったい」だと私個人的にはニュアンスが違うんですが、東京の人だと一緒に感じるのかな。

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