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ワガママガール

 私はアデリーナ様と目を見合わせます。ヤツですよ、魔族フロンですっ!


 私がアシュリンの次に決着を付けたいヤツ!


 つまり、フロンが憑いていたダークアシュリンを倒せば一石二鳥ですね。

 って、そうじゃない。別にアシュリンは本気で殺したい程で憎くは無いです。



「ルッカ、もう少し詳しく教えて頂けませんか?」


 アデリーナ様は真剣な目です。何故かフロンにはご執心なのですよね。あの時も態と逃がしたとかエルバ部長に指摘されていましたし。


 ダークアシュリンを仕留めようとした時に矢を射って私を止めたのも、私を魔族だと考えた以外に事情があったのかもしれません。


 ふふふ、その辺りの秘密を教えて頂きますよ。

 そして、私の足元にひれ伏しなさい、アデリーナ!! 何か怒られた時の切り札にさせて頂きますっ! もう怒られるのは嫌ですっ!



「何から知りたいの、アデリーナさん?」


「では、発見状況と居場所から」


 ルッカさんはアデリーナ様の問いに答えられます。


「そうねぇ、私は空を飛んでたの。魔力補充が出来て、それでいて静かな所を探していたのね。で、巫女さんが言った地域って、大きな森が延々と続いているでしょ。人間も少ないし地の魔力の質も良くて、とてもリラックスできるのよ」


 深い森だから、確かにほとんど人間はいないでしょうね。

 魔力の質はどうなんだろう。気にした事が無いですね。森の奥の方は瘴気が強いって言われていて、それがルッカさんの言う地の魔力なのかな? 人間には毒だと思います。


「その森を切り裂くように、一筋の魔法の跡が残っていたのを見たの。私、スケアリー。まるで道みたいになってるの、不自然に」


 さっきもアデリーナ様が触れられた、私の火炎魔法の爪痕ですね。でも、あの森は植物も元気でして、そろそろ元の森の状態に戻り始めているんじゃないかな。流石にまだ木が育つ程ではないか。



「で、私はその道端に一人の女の子が座っているのを上空から確認。死なない程度に美味しく血を頂こうかなと思ったの。私、グルメだから美味しそうだと食べたくなるの」


 うーん、吸血鬼ですものね、ルッカさんは。

 荒ぶる吸血鬼の血が、他人の血を求めるのでしょうか。……絶対に神殿に入れてはいけないヤツですよ、この人。


 残念ながら感覚が付いていかないですが、山で「木苺を見付けたから摘まもうかな」的なくらいのものでしょうか。

 人類のために、この場で退治した方が良いとも思えます。


「で、美味しく頂戴したの。今の居場所は知らないわよ。殺してもいないし。私、ジェントル」


 アデリーナ様は軽く笑いながら仰いました。


「で、ルッカは例の使役魔法を使われたので御座いましょう?」


 あれか、夜会を抜けた後に襲われた時の。彼らはどうなっているのでしょうか。


「勿論よ。魔族は危険だから。でも効いているかな。相手も魔族だもんね。ストロングでタフ」


 うん、フロンであればしぶといと思います。しかし、その危険な魔族はあなた自身もなんです。


「分かりました。では、なるべく早く向かいたいですね」


 簡単に言われますが、また、あの暴走馬車に乗らないといけないと思うと憂鬱です。でも、私は神殿でお留守番ですよね。まだ神殿の外に出ちゃダメだと聞いていますし。



「アデリーナさん、転移魔法はまた充電中なの。このあいだスードワット様の所へ行ったでしょ?」


「えぇ、大丈夫ですよ。今回はカトリーヌさんにお願いしますから」


 オロ部長? あの人も転移魔法を使えるのかしら。いえ、でも、アシュリンを探しに南の森へ向かった時は地下道を使うって言っていたなぁ。

 ラナイ村までそこを歩いて行くのだとすると、それだけで二週間くらい掛かりそうです。ご飯とかも要るし大変ですよ。


「巫女さん、その魔族と友人だったの? 知り合いだったらソーリーね」


 むしろ息の根を止めて頂きたかったです。その場にいたならばと、好機を逃した悔しさがありますね。



 ちょっとだけ視線を下にしてアデリーナ様は黙ってお考え中です。


「上空からノノン村らしき気配は見えましたか? または他の道とか」


「うーん、山の裾の向う側は見えなかったのよ。道は細いのが別にあったけど、木で隠されてどこに繋がってるのかしらね」


 確かに行き交うには暗い所でしたものね。でも、行商の人もたまに来ていたから、そんなおかしな道でも無いはず。


「分かりました。ルッカ、有り難う御座いました。ノノン村が遠いなら尚良しですね。予想以上の大軍で来られた場合は近隣も襲われますからね。フロンの探索とともにコッテン村を作りましょう」


 森の開拓ですか?

 切り開いて地面を乾かして、建家を立てるには魔法で十分と言うことでしょうね。じゃないと、時間が足りません。

 でも、屋根や壁の木材が綺麗過ぎて不自然に見えるかもしれません。


 それに何より、魔族フロンの近くへ自ら行くという事ですね……。



「準備は私が整えます。皆様は明日の朝、カトリーヌさんの穴の前に集合して下さい」


 えっ、皆様?


「私もですか? 一ヶ月の外出禁止令はどうなるのでしょうか」


「勿論、メリナさんもで御座いますよ。禁止したのはあなたの安全を守る為と民の加熱をおさえるでした。森の中なら構いませんでしょう?」


 さすが王家の方です。自ら定めたルールを簡単に覆します。ワガママガールです。

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