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食堂にて

 ルッカさんは巫女見習いとして寮に入ったのですが、私たちの部屋にベッドが一つ余っているということで、こちらに来られたと仰いました。


 ルッカさんは手荷物も有りません。空いている窓際のベッドに腰掛けて部屋を眺められました。


「結構、古風な作りね。青春時代を思い出すわ。私、センチメンタル」


 おい。早速15歳設定をお忘れではないですか。


 そんなこんなで時間が経つとお腹は空くもので御座いまして、マリールは敵視したままでしたが、四人で食堂でのディナーとなりました。



「ルッカさん、他の同期の方々と一緒に食事をお取りしなくて良いのですか?」


 私は気を利かせて尋ねました。これから神殿で苦楽を供にする人達ですよ。日頃からコミュニケーションを取った方が良いかと思うのです。


「巫女さんと同じ部署なのよ。そっちのコミュニケーションの方が大事じゃない?」


「メリナ、こいつを地獄の特訓で追い出して良いわよ」


 また無茶を言いますね、マリール。

 ルッカさんは死なないんですよ、たぶん。


「オロ部長にお任せします」


「あら、あのバイオレンスな軍人さんの上司がいるの?」


「近々会うんじゃないですか」


 あっ、肉が美味しい。



「メリナ、そう言えば、給金貰った?」


「はい」


「金貨三枚だけって、見習いだから仕方ないけど少ないよね。竜の神殿って、もっと高給取りだと思ってたわ」


 …………。

 マリールもお金持ちの育ちでしたね。私、金貨なんて村では見たこと無いんですけど。

 むしろ、お金さえ滅多に目にしない生活でしたよ。物々交換って訳でもなくて共生的な助け合いがモットーの村だったんです。



 しかし、お金の話となると、あの件を伝えないといけませんね。


「余り他の人には言って欲しくないのですが、実はお給金以外にも私は支給がありました」


「はぁ? ずるくない? どうしてよ?」


 言葉の割りには口に野菜を持っていったりと、マリールは余りそう思っている様子では有りませんでした。


「聖夜での貢献という事で金貨3000枚を頂きました」


 ぶはっ! と、マリールが口にしていた葉野菜を勢いよく吹き出しました。とても汚いです。

 隣のテーブルの方々、すみません。


「マリール、ダメですよ」


 静かに言うシェラは、あの夜会の練習の時のような鋭い眼をしていました。鞭を手にしていれば、鋭い一撃でマリールの頬は赤く腫れていたに違いありません。


「だ、だって3000枚って! 一年は遊んで暮らせる金額よ!?」


 声が大きいです、マリールさん。聞こえちゃう、聞こえちゃう。

 それにしても、一年で金貨3000枚を使いきる生活など、どうすれば良いのですか。


「巫女さん、リッチね。羨ましいわ」


 その時です。ルッカさんが喋ったタイミングで、ぬぅと背後で気配を感じました。背中がゾクッとしました。

 ヤツです!


「メリナさん、後でいらっしゃい。それから、新人のルッカさんもね」


 それだけを伝えて、アデリーナ様はどこかへ行かれました。人が美味しくお料理を頂いていたというのに、無粋な方です。


 あっ、アデリーナ様は今日入ったばかりの他の新人二人とも話されています。新人係のお仕事をされているのですね。もう、そのまま新しいターゲットに移られても宜しいのですよ。

 新人のお二人とも恐縮されていますが、その金髪が王族だと知ったら、もっと畏まることでしょう。……頑張ってください。


「メリナは本当にアデリーナ様と仲が良いのね」


「そう見えます?」


 でも、まぁ、仲が悪いって感じではないかな。結構優しくて、お昼御飯もくれるし。



「……メリナ、逃げなさいよ……。王都との戦争、あなたが犠牲になる必要はないんだから……」


 すっごい小声でマリールが言いました。目が真剣です。

 私の横にいたシェラもこちらに向きます。今はハンカチや水で口を整えることをされませんでした。


「……そうですよ、メリナ。湖の向こう岸に私の別荘があります。そこに潜まれませんか?」


 別荘生活。それは魅惑の言葉。憧れです。

 レディーの香りが致します。


 私は頷きたい所を抑えて、丁重にお断りしました。聖竜様とのお約束、戦争を止めるという誓言があります。

 ありがとうございます、皆様。心配してくれていたのですね。


 アデリーナ様が帰る時に私たちの机の傍を通過されたのですが、マリールもシェラも微妙に姿勢を正されました。緊張されていたのでしょう。


 そして、アデリーナ様はそれに気付いておられましたね。通り過ぎる時に唇の端が薄く上がりましたもの。

 そういう仕種が皆から怖がられる原因ですよ、黒薔薇さん。

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