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お給金を頂きます

 アシュリンさんがルッカさんの手を取って立たせました。うん、ルッカさんも敗北を気にしてなさそうですね。



「じゃ、私、お給金を取ってきますね」


「そうだったな。メリナ、私の分も頼むぞっ!」


 はい! 私は二人を置いて本部に戻りました。



どこで受け取るかを、本部の廊下で出会った巫女さんに訊きまして、案内された部屋に入ります。



 長机が一つ、その向こうに巫女さんが二人座っていました。


「魔物駆除殲滅部です。アシュリンさんとメリナの分を貰いに来ました」


「はいはい」 


 と返答がありまして、一人が別室から茶色い皮袋を二つ持って来られました。どっちも小さいです。


「まずアシュリンさんの分です。金貨10枚になります」


 わおっ、金ぴかのコインが袋の中から机の上に置かれましたよ。しかも、10枚って!

 お母さんがコツコツ貯めていたと思う、私への餞別より遥かに多いです!

 流石、聖竜様の神殿で御座いますよっ!


 さぁ、私にも寄越しなさいっっ!!



「次にメリナさんの分です。見習い手当て、金貨3枚。そこから付け払い分として金貨6枚引いて、借金3枚です。借用書が入っていますのでお受け取り下さい」


 ?

 ツケ払い? 全く記憶にありませんよ。

 その旨を伝えます。


「売店で銘菓『香るバラ、それはシャール』を買われております。こちらが伝票です」


 あぁ!! バラで思い出しましたっ! アデリーナ様の事ではありませんよ。


 ラナイ村に向かう前に家への土産に買ったヤツです!


 くぅぅ、あの時は急いでいたから値段なんて気にしていませんでした。シェラさんのお奨めでもあったのですが、とても高級な物を選んでいたのですね………。シェラと私の金銭感覚には大きな山、天まで突き抜ける山の様な隔たりがあったのです。



 狼狽を隠せない私を見て、給金渡しの人が微笑みました。


「ご安心を、聖衣の巫女様。今月の功労金が別途出ております」


 功労金? それは借金が棒消しになる程度には出るのでしょうか?

 私、期待していません。上げて落とされることが多いんですもの。



「聖衣での寄進及び販売額が凄かったのですよ。貢献者の寄与比率で、ある程度を分配致します」


 はぁ。


 さっきの人が再び別室に行かれまして、立派な小箱が乗った台車を押して戻って来られました。


「金貨3000枚です」


 !?


「王国貨幣局からの箱のままですが、ご確認されますか?」


 私は恐る恐る頷きます。


 箱が開けられると、ぎっしりと白い棒が横向きに入っているのが見えました。白いのは包み紙でして、それを少し剥くと光輝く金貨が縦に並んで入っていました。


 おぉ!!


 そこから三枚抜いて、箱は閉められました。


「重いですが、持って帰られますか? 神殿預かりも可能でして、その場合は我々が厳重に管理致しますよ」


 無論ですが、私は持ち帰ることを伝えました。これで、何でも買いまくりですよ。食い倒れ、着倒れですよっ!


 受取のサインをしてから、ずっしりと重量感のある箱を両手に持って、更にその上に皮袋を置いて貰って、私は部署の小屋へ向かいます。

 思わずスキップしてしまいますね。



 本部の近くには調査部が有ります。

 私は一刻も早く小屋へ行きたいのですが、エルバ部長に呼び止められました。運が悪いですが、この程度は我慢しましょう。


「おい、メリナ。………ヘルマンの件は悪かったな。私も止め切れなかった」


 ヘルマン? 誰かと思いましたが、エルバ部長のお父さんっぽい人ですね。


「いえ、こちらこそ、両目を潰して済みませんでした。回復魔法はちゃんと効いていましたか?」


「あぁ。むしろ視力が上がったと言っていたぞ。メリナ………マジで王国を噛み砕く気なのか?」


 噛み砕く? あぁ、私の精霊が竜だからこその表現でしょうか。


「いえ、聖竜様に宣言しました。戦争を止めると」


「マジか。狂犬が? いや、それで良いんだぞ。しかし、どうやって? 既にシャールは軍隊を展開し始めているんだぞ」


 狂犬って……。お前の首に噛みついてやりましょうか。いえ、それはダメですね。変な噂を流されてしまいます。


「アデリーナ様がお考え中です」


「……ふむ。私も協力しよう」


 ありがとうございますっ!

 私は礼を言って去ろうとします。が、エルバ部長はまだ喋り足りなかったようです。


「それから、あのルッカとか言うヤツ、信頼して良いのか? アデリーナからの依頼で私が調査書を作成したが、あいつ、魔族だろ?」


「あの人、聖竜様の知り合いなんです。だから、大丈夫だと思います」


「……はあ? マジかよ。聖竜は、いや、聖竜様は魔族と敵対する存在じゃないのか」


 ですよね。魔族フロンの時なんか「何があっても生かさぬように」と言われましたし、聖竜様の逸話を読んでも、そんな事がよく書かれておりましたし。


「ルッカさんは良い魔族らしいですよ、本人曰く」


「何だ、それ。マジで分からんな。そもそも良い悪いなんか立ち位置で変わるもん――」


 長くなりそうです。箱を持つ手が疲れてきているのですよ。

 私は「またお話ししましょう」と言って、小屋を目指しました。



 が、数歩も行かずに、後ろからアデリーナ様にも止められました。どこから現れたんでしょう。鬼だけに神出鬼没です。私、うまい事を思いましたね。


「あら、メリナさん、今日もおサボりで御座いますか?」


 こいつ……。私は毎日、頑張っていますっ!


「アデリーナ、メリナから戦争を止める心積りと聞いたが、マジか?」


「うふふ、そうで御座います。先ほど、ロクサーナ様ともお話させて頂きまして擦り合わせを行なった所で御座います。メリナさん、二週間程はノンビリして下さい」


 流石の黒薔薇です。仕事が早いです。

 そして、私、二週間後にどうなるんでしょうか。


「巫女長は知っているのか?」


「いえ、それが巫女長様は謁見式の後から姿を見ないんですよ。伯爵も」


「マジかよ。どこに行ってるんだよ」


「巫女長様は大丈夫で御座いましょう。メリナさん並みに危険なお方ですよ」


「……だな。アレも読めないな、マジで」


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