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ルッカさんの魔法

 動かなくなった三人を確認してから、まずはルッカさんに回復魔法です。むくっと起き上がられました。


「おかしいわね」


「何がですか?」


「私は生捕りって伝えて、あなたは『了解です』って気持ち良く返事をしたはずなのに、丸焼けにされたの。聞き間違え? 私、ミステイク」


「いえ、その通りですよ。生け捕りにしました」


 黒焦げにはしていませんもの。


「……そうなの? 巫女さん、牢屋の時も私を焼かなかった? クレイジー過ぎない?」


 でも、ルッカさんの体は便利でして、すぐに修復されるんですもの。盾や囮役には素晴らしい才能だと思います。アシュリンとは違った役割ですが、戦闘時には頼りになります。



 ルッカさんは倒れている二人を見ます。ほら、手足がピクピク動いているじゃないですか。よくご覧になって下さいよ。気を失っているだけです。



「わぁ、お母様が立ったぁ」


 アデリーナ様、あなたも、そろそろしっかりして下さい。口調とかドンドン幼児に近くなってきていますよ。

 そのまま、アデリーナ様はルッカさんに抱き付きました。が、やっぱりルッカさんは手でアデリーナ様の頭を抑えて突撃させません。



「じゃ、さっさっと味方を増やすわよ」


 ルッカさん、姿勢を低くして、いきなり刺客の人の首筋に噛みつかれました。

 吸血鬼の本領発揮ですね。


「んー、ホットブラッドなんて初めてよ」


「美味しいのですか?」


 でも、血液は温かいものでしょう。私、色んな生き物の返り血を浴びているので知っていますよ。


 倒れたままの二人から吸い終えたルッカさんがハンカチで口を拭ってから言います。


「何て言うか、香りが沸き立つ感じ」


 ん、今後の人生で一度も使うことのない知識を得ましたよ。神殿の初日に聞いた副神殿長の眼鏡話みたいなものです。


 しかし、味方を増やすのはまだなのでしょうか。ただ単にルッカさんが栄養補給しているだけでしたよ。



『我は願う、その冥き途を往く獅子に。舞い降りる花弁を蹂躙し、其の螺旋を瞞着す。濡れ烏の通りたるは讒訴と枉惑(わわく)の雲居。蒼頭たる鬼骨は亀甲と会逢し、老残たる怨言の傲然を嗤う』


 ルッカさんの呪文の後、倒れている二人が動き出します。

 回復魔法? いえ、でも、何と言うか、アシュリンの魔法と違って、おどろおどろしい雰囲気がありました。

 流石に魔族です。



 そして、私は勘付きましたよ、ルッカさんの意図を。


「回復させて殴って半殺しにして、また回復して痛め付けるんですね。絶対服従するまで止めないんですよね?」


「……心底怖いわ、あなた。どんな教育を受けてきたのよ。笑顔で可愛らしく言わないで。クレイジー」


 違いましたか。



 起き上がった二人は無言で突っ立ったままでした。微動だにもしません。


「私に血を吸われた人間は私の言うがままになるの。エクセレントでしょ?」


 はぁ……。……ん?



 あっ! 私も吸われましたよ! それもたんまりと!


「ルッカさん! 私は大丈夫なのですかっ!?」


「巫女さんはね、私の手に余りそうだから、掛けないわよ」


 私はその様な甘言に騙されませんよ。なので、釘を刺しておきましょう。


「ルッカさん、絶対に止めて下さいね。私を操っても良いのは聖竜様だけですから」


「もしも、操ったら?」


「絶対に殺します。悪意がなくとも、必ず殺します」


 自分の意思とは違う動きを体にされたくありません。恐ろしいです。



 あっ、これ、フロンがナタリアの村で使っていたヤツか! 色んな人を従わせる魔法!


「魔族の人は、皆、こんな真似が出来るのですか、ルッカさん?」


「そうでもないけど、使えるなら使うわね」


 ぐむむむ、私、不安ですよ。今の私はルッカさんの思う通りに動いているのでは無いでしょうか。

 私が歯を強く食い縛るのを見て、ルッカさんが言いました。


「大丈夫よ、巫女さん。あなたはスードワット様の加護があるみたいだから効かないって、言い換えるわ。いつ貰ったのよ。ミステリアス」


 おぉぉぉぉ!! ウオオオォォォォ!!

 何ですか、それ!?


 聖竜様の加護ですって! 私、知らない間に、そんな大それた物が体に備わっていたのですか!?

 うんうん、聖竜様はやはり私を大事に思っていてくれたんですね。

 あれかな? 小さい頃に聖竜様の所へ行った時に与えて頂いていたのかな。



「分かりやすい人ね、巫女さんは」


 はい、にんまりです。今ならアントンにも微笑み掛けられますよ。



 しかし、あれですね。立ち上がった刺客の二人は直立不動です。不気味ですよ。


「では、依頼主の元に戻ってね。そこに倒れている人も忘れずに持って返って。次に命令するまではご自由に」


 そんな人にルッカさんは命令します。聞こえていますかね。

 あっ、同時に二人とも軽く頷きました。


 すぐに動き出しましたが、私が出した氷の壁の前で止まっています。叩き割るとまた動き出しまして、三人で去って行きました。

 私がお相手した方はまだ動かなかったので、背負われていますね。二人の方も多少の火傷のせいで、足取りが覚束無い様子です。


「何をする気なのですか? 殺した方が良かったと思うのですが」


「スパイを作ったのよ。この方が楽なんだよ、巫女さん」




「お母様、お腹空きました。おっぱい欲しい……」


 は? 後ろから声がしました。アデリーナ様です。

 完全にダメになっておられます。色々とアウトで御座います。


「あら、だいぶ進行しているわね。デンジャラス」


 えぇ、私もそう思います。


「いっそのこと、息の根を止めて楽にして差し上げますか?」


「それは楽ではないでしょうね。クレイジーよ。仕方ないわね」


 ルッカさんは魔法を唱えられました。詠唱句に覚えがあります。

 これはアデリーナ様の部屋から聖竜様の下へ転移した時と同じ魔法です!

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