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豪奢な馬車で

 謁見の日です。

 私はパンツローテションを乱してでも勝負パンツとしています。大事な日ですから。

 私の社交界デビューとなる、門出の日なのです。

 気合いが入りますっ!


 シェラに鞭打たれた箇所は、その日の内に礼拝部の方に魔法で治して貰いました。すぐに治療できるから、あんなに激しく躊躇なく打てるのですね。貴族様の教育法、とても怖いです。



 早朝からゾビアス商店の方々が神殿に来ておりました。流石に部外者が寮に入ることは出来ませんので、本殿にある小部屋で着替えました。


 仕立てたばかりの新品で御座います。黒い巫女服をモチーフにしてはいますが、何故か、片足の太股まで露になる感じでスリットが入っております。

 また、首と胸の間に大きな穴が空いておりまして、私の肌が丸見えです。


 恥ずかしいですよ、これ。ルッカさんなら違和感ないでしょうけど。


 化粧に入ろうかとしたところで、マリールが走って部屋に飛び込んで来ました。


「ハァハァ……。メリナ、これ、できたよ」


 小さな丸い缶を差し出されました。私は開けます。


「顔に塗る白粉。メリナの肌の色に合わせて調色済みだから」


 マリール……。私、うるっと来ましたよ。


「メリナ、これだけを塗るだけでいいから! 他の睫毛とかはそのままで、お願い!」


 分かりました。私が頷くのを見て、ゾビアス商店の女性の方もマリールの化粧品だけで、私をメイクアップしていきます。

 なお、お店の人、マリールがお宅のお嬢様だって気付いていない感じですね。

 余った化粧品は私が預かることにしました。


「いい感じよ、メリナ! 頑張ってね! 私は寝るから! あと、これ、シェラから」


 私の手に小さな瓶を捩じ込んでから、マリールは去って行きました。

 シェラから頂いたのは香水ですね。ゾビアス商店の人に付けて貰いました。



 私は更に赤い宝石のネックレス、耳に青い菱形の石が付いたアクセサリーを装着されます。

 最後は頭の後ろまで垂れた布が付いた帽子を被ります。ベールって言うらしいです。薄手のレースで出来ておりまして、同じスケスケでもパンツと違ってお上品な気がします。


 服は一人で着替えたのです。何をとははっきり言いませんが、大丈夫です。



 次に鬼が来ましたよ。


「あら、メリナさん、お早う御座います」


 笑っておられます。


「お早う御座います」


 私もちゃんと返します。


「今日は晴れて良かったですね。アシュリンがいたら、また雨が降りそうだなんて仰ったりしますかね」


 ……ラナイ村の付近で聞いた例の符号ですか、それ。雨は敵襲……。


「快晴ですよ、アデリーナ様。寝ぼけておられませんか?」


 私の晴れの日ですし、敵などいません。


「ふふふ、今日は宜しくお願いします」


 アデリーナ様も今日は気合いが入っておられるようで、巫女服ではなく、青基調のワンピースドレスです。スカートのヒダが青色と水色の交互になっておりまして、お洒落で御座います。



 おトイレも済ませて万全の態勢です。



 やって来た馬車は本当に豪奢なもので、黒く艶光る塗料が全面に塗られた箱馬車です。

 中に入ると、窓はないのですが、両壁と天井に魔力式のカンデラが付けてあり、明るいです。


 そこへ私とアデリーナ様が乗り込みました。馬車の人が数段の階段を持ってきてくれて、そこから乗ったのですが、とてもお姫様になった気分で御座います。


 ガタゴトと揺られながら、私はアデリーナ様と向かい合わせに座っております。馬車の中にソファーが二つも備え付けてあるとは思いもしませんでした。



「今日のあなたは別人みたいですね」


 アデリーナ様が私を誉めてくれます。


「巫女服でないアデリーナ様も新鮮です」


「久しぶりにクローゼットから取り出したのよ」




「あら、伯爵様のお城に直接行かないのね」


 アデリーナ様が呟きました。

 窓がなくて外が見えないのに、よくお分かりになられるのですね。


 私が不思議に思っていると、アデリーナ様が仰います。


「曲がるときに遠心力とか減速とか感じるでしょう? それから類推するのよ」


 うん、神業です。私には無理です。地図が頭の中にあるのでしょうか。


「どこに向かってるかも分かるのですか?」


「えぇ。これは恐らく湖に向かっていますね。途中まではシャール伯のお城に向かっていましたのに」


 清めの儀式みたいな事が有るのでしょうかね。アデリーナ様が平気な顔なので、私もそんなものなんだろうと構えていました。




「ギャハハハ!」


 突然アデリーナ様が大笑いをしだしたので、私はビクッとします。


「どうされたのですか!? 日頃のお酒が祟ったのですか!? それとも、日頃の行いで誰かに呪われたのですか!?」


 敵が多そうです、アデリーナ様は! 毎日、どしゃ降りでもおかしくないですよ!!



「メリナさん、墓場に行くみたいですよ。は、か、ば。ギャハハハ!」


 アデリーナ様、怖いですって。

 突然笑い出すのも普通に恐怖なのに、墓場に向かうから大笑いって理解不能です。

 何なんですか!?



「メリナさん、どうやら私たち嵌められたみたいです」


 なっ!


「誰に喧嘩を売っているのか知らないみたいですね! ギャハハハ」


 こわっ! アデリーナ様、こわっ!

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