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夜会の練習前

 朝起きてもマリールは戻って来ていませんでした。

 いつものマリールの破廉恥な行いがありませんので、シェラも今日はゆったりと髪の毛を整えております。


 代わりに私の枕元に大きな白い岩と″薬師処で一番綺麗な滑石。前みたいに粉砕して、私のベッドへ。夜までよ″と殴り書きの置き手紙がありました。

 



「マリールはお仕事でしょうね」


 朝食後のお茶を飲みつつ、シェラが私に言います。少しだけ心配そうな顔です。


「そうかもしれないね。昨日は薬師処で実験してたよ」


「私もマリールが走っているのを見ましたの。一晩中お仕事って、メリナさんと同じくお忙しいのね」



 さて、シェラにお願いを切り出さなくては。


「シェラ、二日後にあなたのお父様にお会いすることになりました。私に夜会の流れやマナーをお教え頂けないでしょうか」


 謁見については、アデリーナ様は椅子に座っていれば良いと言ってくれましたし、シェラは知らないと以前に伝えてくれました。

 なので、夜会について学ぼうかと思います。


「分かりました。でも、残り二日しかないのですか?」


「うん、そうなのよ」


「大変ですねぇ。では、お仕事が終わった後に練習致しましょう」



 シェラは上品で物腰も柔らかくて、本当に貴族の人って感じです。あんな人がいっぱいの夜会だったら、私も安心してお食事出来そうです。

 豚の丸焼きとか、牛の色んなお肉とか楽しみです。お腹いっぱいになれますよね。



 そんな事をうきうき考えながら、部署の扉を開けました。


 ……今日もアシュリンは居ません。

 にっくきアシュリン、私の頬に屈辱の文字を残した極悪人。


 でも、大丈夫かな。野垂れ死んでないでしょうね。せめて、どこに行ったのかくらい教えていて欲しいものです。

 書き置きのメモには「ぶん殴ってこい」とか有りましたが、こちらにも目的語が欲しいところですよ、アシュリン。



 さて、今日も洗濯です。自分の服をゴシゴシ洗います。


 終わりました。今日の業務終了です。



 私、巫女として大丈夫なのでしょうか。教えてください、聖竜様。

 村娘以上に仕事をしておりません。


 空き時間でマリールの要望通り、石を砕きました。



 夕方となって、私は寮に戻ります。石の粉をマリールのベッドに置くのを忘れませんよ。


 今日の昼御飯は残念でした。折角訪問したのにアデリーナ様はご不在で、その上に代替案であったエルバ部長まで神殿にいなかったのです。

 使えない奴らです。


 ですので、小屋の後ろに広がる森と言うか林と言うか、そこで採取した植物となりました。


 部署の小屋の隣にある畑に野菜っぽいのがなっていますが、仲良くしている巫女さんの努力の賜物ですから、盗むなんて出来ないです。


 茶色いキノコと何かの小さな赤い実を食べました。赤い実は鳥が食べていたので毒はないでしょう。苦かったですが。


 肉と油が足りません。



 部屋で待っているとシェラが帰って来ました。早速、彼女は私に夜会についてレクチャーすると言います。


「ありがとう、シェラ。でも、空腹なの」


「メリナさん、忙しい時はお食事の時間も取れないスケジュールの時もあるのですよ。いい練習です」


 そんな!!

 私、今日は飯抜きなのですか。魔物を追っている時でも食事は大切なんですよ。

 ご貴族様はご飯よりも人との交流を重視されるのですか。


 私はシェラの言葉に負けまして、別の場所へと連れて行かれました。『巫女さん業務用地域』を歩いております。


 で、聖竜様の像が鎮座なされる本殿ほどではないですが、立派な建家に案内されました。

 何本もの石柱が、これまた大きな石の屋根を支える構えで、屋根の縁は竜や魔物の像がたくさん並んでおります。


 屋根の下を少し進んだところに大きな両開きの扉がありまして、それを引いて中に入りました。


 薄暗い外とは違って、そこは魔力式照明で昼間のように照らされていました。とても広くて、村の広場くらいあるでしょうか。そこに十数人の女性が立っていました。


 広さの割りに人数が少ないのですが、がやがやわいわいと楽しそうに会話されておりまして、華やかですし賑やかです。

 巫女さん業務用地域なのに、皆さん、思い思いの服装です。


 そして、私を魅了する物が御座いました。並んだ丸テーブルの上に置かれたお料理の数々です。

 特に真ん中のテーブルには、大きな豚、いえ、豚にしては大きすぎるので、その類いの魔獣の姿焼きが置かれています。



「では、夜会の予行演習を致しますよ。礼拝部の先輩にも協力して頂いています」


 シェラ、凄いです。練習の為にこんな本格的な料理を用意してくれているのですか。

 嬉しいですが、私、食べきれないですよ。


「ありがとう、シェラ。早速頂いていいかな?」


「ダメですよ、メリナ。主役はゆったりするのです」


 えぇ、がっつりは食べてはいけないのです。分かっていますよ、私。



「ルーシア様、それでは宜しくお願いします」


 あっ、配属の時に部屋にやって来たシェラの先輩だ。もうすぐご結婚で巫女を引退される方ね、確か。


「はい、シェラのお願いですから、私たちもしっかり演技しますよ」


 私はシェラと共にお辞儀をして返す。



「メリナ、では一回出ましょう。入場から開始です」


 はい、その後にお食事会ですね。とても楽しみです。



 私たちは一回外に出ました。

 大きな豚みたいなヤツのお肉はお持ち帰りできるかな。明日の昼御飯もゲットです!

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