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謁見の日程

 お食事が終わりましたので私の用は無くなったのですが、アデリーナ様は私を引き留めました。



「メリナさん、伯爵との謁見の日程が決まりました」


 おぉ、ついに私も夜会で可憐にダンスを踊るのですね! 知りませんが、そんなイメージです。


「ドキドキします」


「はい、そうだろうと思います。伯爵も乗り気でして、三日後となりました。あなたの街への繰り出しも、その日は解禁しますから」


「早いですね」


「今回は早くした方が良いのですよ。不手際があっても準備する側も時間がなかったと言い訳ができるでしょう?」


 アデリーナ様が笑います。

 準備する側、つまりホストは伯爵様の側ですよね。粗相なんかあるのでしょうか。



「何かご質問は御座いますか? 受け付けますよ」


「当日は、いつくらいにここを出発しますか?」


「その日は寮でお待ちください。私と共に行きましょう。私があなたの付き人となりますね」


 えっ、アデリーナ様を顎で使って宜しいのでしょうか。とても楽しみですよ!



「他には御座いませんか?」


「謁見の儀式はどうすれば宜しいでしょうか?」


「椅子が用意されると思います。そこにお座りください。あとは黙って伯爵の側の進行にお任せすれば宜しいです」


 えっ、昨日の練習は無駄なのでしょうか。


「分かりました。良かったです。私は伯爵様を殴らないように我慢するだけですね」


「……勿論ですよ。何をどうすれば殴るシチュエーションがあるのですか。謁見を何だと思っています?」


 アデリーナ様は溜め息を吐かれました。



「メリナさん、夜会では色んな方々からお誘いされると思います。あなたは貴族では御座いませんから、やっかみも有るでしょう。気になさらず自然体でいなさいね」


「大丈夫です。私、そこもシミュレーション済みです」


 アデリーナ様は私の言葉に対して、少し考えた風に沈黙されました。



「……神殿としての今回の目的ですが、伯爵様の威信強化に協力し、恩を売ることです」


 そういう風に私は振る舞いなさいということですね。


「了解です。で、アデリーナ様の目的は?」


「ふふふ、お互い分かり合えて来たようですね。私の目的は、シャール伯爵と私の間に確かな繋がりが在る事を、先の処罰に不満を残す者に見せ付け、考えを改める機会を与えること。それと、その者達の炙り出し」


 黒薔薇、再び現れましたね。

 先の処罰とかいうのは、アデリーナ様に関する報告書を王都に出していた担当官の方々を全員処刑した件ですよね……。


「……炙り出された方はどうなるのでしょうか?」


「あら、お聞きになられる?」


 私は首を横にブンブン振ります。アデリーナ様の笑顔からは、嫌な予感しかしません。もはや、邪悪と呼んでいい領域ですよ、そのお顔。またもやドン引きさせられます。


 私、殺して良いのは戦闘の時だけだと思っているんです。暴力は別に何とも思わないのですが、謀略とか怖いです。感知する前に嵌めるなんて、賢い方々を敵に回すのは避けたいところです。



「ところで、メリナさん。ルッカさんからは、まだ接触ありませんか?」


「無いですね。どこに行かれたのでしょうか」


「お早めに出てきて頂かないと、エルバさんからお叱りを受けてしまいますわ」


 エルバ部長、アデリーナ様であってもあの態度ですものね。あの人、王家の人より偉いのかしら。



「メリナさん、成長されましたね」


「そうでしょうか?」


「えぇ、今日はお酒に目もくれていません」


 あっ、確かに。どうしてでしょうか。

 石を砕くことに、手触りの良い粉を得る事に興味が行っているからでしょうか。


「頂けるなら遠慮はしないです」


「誉めているのだから、少しは謙虚さを見せてはどうかしら」


「私、淑女に近付いていますか?」


「えぇ、私好みの人になりそうですよ。そう言えば、まだ転移魔法を見せて貰っていませんね。ラナイ村で使っておられたとは推測しておりますが」


 覚えていたか、アデリーナ!

 一ヶ月以内に見せないと殺すとか言ってたヤツ!



「ひ、秘術ですから、そうそう簡単にはお見せできないのです」


 私は焦りを隠すためか、無意識に手を粉を集めている皮袋に入れます。ツルツルして、その感触で精神が落ち着きます。


 石の粉と擦れて、柔らかい石鹸の粉が小さくなっていくのが手触りで分かります。



「勿体振る必要はないのですよ」


 これは困りました。たかが昼飯を食べに来ただけなのに、私の命の危機です。


 いえ、殺られるなら殺るの精神ですよ。


 アデリーナ、お前の命の危機でもあるのです。お分かりですか!?



 皮袋の中の私の指の動きも激しくなります。ツルツル、ツルツル。今の私を癒してくれるのはこの粉達、いえ、この子達だけで御座います。


「ル、ルッカさんに魔力をお分けしましたので、一ヶ月は少し厳しいかもしれません」


「ふふ、そういうことにしておきましょう」


 はい。お願いします。



「で、メリナさん。先程から、その袋で何をされているのですか?」


 アシュリンの時みたいに皮袋毎、取り上げられるって事はないでしょうか。私、警戒しながら喋ります。


「私が趣味としている石砕きの成果で御座います」


「耳を疑う趣味で御座いました。それ以上深く知りたいと思いません。ありがとうございました」


 良かったです。

 アデリーナ様に取り上げられたら、また決闘となるところでした。


 アシュリンと違って、アデリーナ様なら一撃で頭を粉砕してしまうかもしれませんでしたよ。

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