表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/421

万能ではないの

 今は昼時を少し越えたくらいの時間でしょうか。

 しかし、私たちは木々に囲まれた所に転送されまして、相変わらず多い参拝客の方々に見られる事はありませんでした。



 で、またアデリーナ様のお部屋に戻りました。



 一つのグラスが床に転がっていて、赤い液体が溢れていました。勿体無いです。お酒です。

 アデリーナ様は腰を屈めて、自ら処理なさいました。もちろん、私も手伝いましたよ。お酒は飲めるほどは回収できませんでした……。誰もいなければ、雑巾を絞って滴を口に入れたかったです。


 ソファに座ります。ほんのり部屋にお酒の匂いが残っていて気持ち良いです。



「全くメリナさんは突拍子も御座いませんね」


 うふふ。無視です。


「でも、知りたいことは聞けました」


「ねぇ、アデリーナさんだったかな。二人で話したいのだけど。私、シリアス」


「魔族と二人きりになるのは、少々後悔したことが御座いますので、メリナさんをお付け下さい。彼女はこう見えて明晰ですが、恐らくはあなたの話に興味を持たないでしょう。ご安心ください」


 それを受けてルッカさんが私を見る。


「巫女さん。スードワット様には私から、あなたが良い子だと伝えておくから、今から言うことは秘密にしてもらえる? シークレットよ」


「……話に依ります」


 スードワット様に関わる良からぬ事であれば、このメリナ、許しませんよ。



「またスードワット様の所に連れていってあげるから。今日は無理でも、力が貯まった来月とかなら」


 おぉ、素晴らしいです。

 しかし、私は欲深いのかもしれません。


「私の血を吸えば、すぐに魔力が回復しませんか?」


「私、吸血鬼なの。伝承とかで聞いたことあるでしょ。操られるとか。簡単に血を差し出すのはどうかと思うよ、クレイジー。……転移するには、他からの魔力もいるのよ。じゃ、秘密にしてね。あと、私を怒らないでね」


 吸血鬼云々は聞いたことがありますが、最早遅いでしょう。たっぷり吸われております。

 それにしても、残念です。聖竜様の元に再び行けるのはだいぶ先になりそうですね。


 私の表情から了解だということを察せられたのか、ルッカさんはアデリーナ様に向き直す。



「スードワット様は万能ではないの。今は、お困りだと思う」


 スードワット様を貶すのですかっ!

 しかし、先の約束があります。怒らないでと言われました。なので、私は堪える。



「万能というか、無の、いえ、あなたが言わんとする事とご心配の事は分かりました」


「本当に?」


「えぇ。シャールの地の魔力を調整されているのがスードワット様。シャールの民に魔法使いを増やすために多目にその『地の魔力』を設定されている。でも、獣人の出生率は抑制しているから、人間で吸収できなかった魔力のせいで、魔族が増えている」


「その通りよ。インクレジブル」


 何やら会話が続けておりますが、スードワット様が万能でないですって!! 怒りが爆発しそうです。

 私の身が震えているのを見たルッカが慌てて言います。


「巫女さん、誤解しないでね。私はスードワット様の使徒。敵ではないの。今度行くときは、あなたとスードワット様だけのお時間を作るね」

 

 私をそんなもので釣れるとでも思っているのですかっ!

 いいでしょう! 釣られてやりますっ! 何せ、二人の時間ですものね。楽しみで御座いますっ!! 私という者がよくお分かりです、ルッカさん!



「私からも一つ確認宜しいですか?」


 アデリーナ様が訊く。ルッカさんが答える前に次の言葉を紡ぐ。


「聖竜様は地上の人間に、何故、人語で語り掛けないのですか? 非効率でしょう」


「空気を震わせる魔法を遠隔で使えないからね」


「つまり、他の得意とする魔法で巫女にだけ伝えていると?」


「それだけでも凄いこと。グレート」


 ですね。どれだけの距離で発動させているのでしょう。人間を遥かに超越した能力ですよ。少なくともシャールからラナイ村までは届いていましたから。

 あぁ、あの時の礼を申すのを忘れていましたねぇ。


「ところで、アデリーナさん、私を探しておられたようね」


 あっ、そうそう。ルッカさんを仇国の魔族とか訊いてましたね。



「もう結構です。一度、聖竜様のお下に向かいたかったのです。目的は達成致しました」


「……そう。なら、私は自由ね」


「ルッカはメリナさんの使い魔なんで御座いますね。ならば、ここにいても宜しいですよ。部屋も用意致しましょう。念のために、巫女見習いとして私からの推薦状も作成致します」


「知ってるくせに。でも、嬉しいわ。私、ハッピー」


「調査部の書類が揃うのに時間が掛かるのはご了承下さいませ」


「分かったわ。それじゃね。それまで他で過ごすわ。バイバイ」


 ふっとルッカさんは消えました。

 魔族は嘘吐き。ルッカさんが転移魔法を使ったのを見て、フロンを思い出しました。

 信用して良かったのでしょうか。



「メリナさん、お疲れ様でした」


「はい。アデリーナ様もお疲れ様でした」


 残された私たちは互いに労います。



「これが聖竜様のお匂いなんですね」


 アデリーナ様は自分の袖を嗅がれて言いました。



「メリナさんの靴というか足、相当臭うので御座いますね」


 なっ!! そう取りますか!?


「洗って取れるのかしら、これ」


 何たる聖竜様と私への侮辱。



「聖衣のアデリーナ様となられては良いではないですか?」


「あなたの二番煎じ? 冗談でも申さないで下さい。それに有り難みが減るでしょう。あれはボロ切れ、ゴミみたいだから、皆に受けたので御座いますよ」


 歯に衣着せぬ言いっぷりです。

 以前の私が身に付けていた物、全否定ですよ。



「さて、メリナさん、あなたは今から一ヶ月、神殿から出ることを禁じます」


 えっ。


「何故ですか?」


「理由は三つ。シャール伯からの暗殺から守るため。民のメリナさんへの信仰を抑えるため。最後、私の言い付けを忘れて飲酒したため」


 お酒はアデリーナ様がお出しして、正直に言えば飲んで良いって仰ったのにぃ!!!


 ただ、民のところは同意致します。私自身、怖いと思っておりました。


「なお、暗殺についてはそこまで心配していません」


 ええ、返り討ちする自信はありますっ!



「聖衣のイベントも終わりにしてもらえますよね?」


「そうでしょうね。十分に稼ぎました。飽きられないようにそろそろ潮時でしょう。私から巫女長にお願いしてみます。来年は他の街からも見物客が来るでしょうねぇ」

昨晩、焼肉を食べまくって、お肌が艶々のオイリーな感じになっております(^^)

美味しかった♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ