表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/421

血をどうぞ

 松明がいよいよ消えそうとなっています。

 再び誰か人が戻ってくる恐れがあるので、照明魔法は使っていません。



「巫女さんはどうして魔法使えるのよ。ちょっとジェラシー」


「どうしてでしょうか。ただ、いつもより威力は弱いのです。そんな気がします」


「アンチマジックは引き算なのよ。私でも使えないくらいの引き算。巫女さんは、よっぽど強い魔力を持っているのね」


「理屈はいいです。制圧してからお聞きしますよ」


「うわぁ、魔法使いの風上にもおけないわね。好奇心が最大の教師なのよ。ディスガスティングよ」


「何ですか、それ?」


「魔法を上手に使うには物事の本質を知らないといけないって事」


「ディスガスティングの方です」


「そっち? チョームカつくって事」



 私はコリーさん達がいなくなった後も最下層のフロアに留まった。二人きりのこの状況で、吸血鬼が私に不審な行動を取らないか確認するためです。


 戦闘時に背中を預けるのだから、信頼できるかどうか、少なくとも裏切らないかの見極めが必要です。


 結果、残念と言えば残念なのですが、こいつは私と本当に協力するつもりだと判断しました。

 なので、自己紹介。礼儀正しさは淑女の装いですからね。



「私はメリナです。得意な魔法は火炎魔法です。肉弾戦も行けます」


「肉弾戦はさっきの壁破壊で十分に分かったわよ。信じられない物を見たわ。拳を痛めても殴り続けるなんて狂ってるわ。……あらためて、私はルッカ。得意なものは……剣かしらね」


 剣士ですか。どこかで武器を入手しないといけませんね。あと、魔族に狂ってると言われたの、凄く心外です。



「そこの檻の柵ではいけませんか?」


「剣って言うか棒よね、それ。手で良いわよ」


「爪が伸びたりします?」


 魔族フロンを思い出します。私の足を切断できるくらいの鋭い爪。


「うーん、外殻を調整すればできるわよ。あなた、意外に博識。私、超サプライズド」


 その後、聞いてもいないのに、ルッカは外殻について説明してくれた。

 体内の魔力を皮膚に纏わせる魔族の鎧みたいな物。体内の魔力を使うから、ここのアンチマジックには掛からないのかしら。



「もっと血を頂戴。盾にはなれるわよ。殺しはダメなんでしょ」


 ふむぅ、信じて良いのかしら。

 いえ、何かあれば、魔法が使える私が圧倒的に有利です。良いでしょう! 血をやりましょう。



 私は裾を絞る。赤い滴と一緒に乾いた粉も降りつつ、ルッカは手に受けて口に運んだ。


「んー、新鮮なのがいいけど、これはこれでデリシャス」


 黒かった髪が少し青くなったような……。そういうものなのでしょうか。


「では、行きましょう! お日様の下に! サンシャインっ!」


 陽気ですね。あやふやな知識ですが、吸血鬼って太陽の光に弱いんじゃないかしら。




 ルッカを先頭に上へ繋がる扉を開く。鍵はされていませんでした。慌てていたんでしょうか、コリーさん。部下には鍵を閉めるように命令しながら、うっかりさんですね。


 階段が続く。連れてこられる時にも思ったけど、とても長くてぐるぐる螺旋になった階段。両側に壁があるけど、内側の壁の中は空洞になっているのかしら。

 んー、通路幅が狭くて上に人がいれば、簡単に封鎖されてしまいますね。

 


 でも、人は出てきませんでした。逃亡者を探しに人手を使っているのでしょうか。


 上階の扉まで何事もなく進んで開けます。こっちも鍵なしですか。コリーさん、やっちゃってますよ。


 部屋に入ると、まずは鼻を突く臭気。それから、呻き声が聞こえた。



「まぁ、ここは重犯罪者向けの拷問室かしら。とっても食欲をそそられるわね」


 同意しませんよ。


「上に行く? 倒すべき者はいなさそうよ」


「いえ、全員を回復させます」


「十人はいるわよ?」


 ご心配なく、たぶん、大丈夫です。



 私は回復魔法を唱える。真っ白に一瞬だけ輝く床と、それに驚くルッカ。


「ハ、ハイヒール? しかも広域? アンチマジックの下で……?」



 牢は急に騒がしくなる。ぐったりと倒れ込んでいた囚人どもが動き出したからです。「出せっ!」とか「チクショー!!」とか、基本、友達になりたくない感じの罵声ばかりです。


「私の餌を作ってくれたのかしら?」


「まさか。一人くらいは一緒に来てもらいたいと思ったのですが……」


「私以上の力の人は居ないわよ。そういった、ややこしいのは街中じゃなくて、外にある牢に入れるでしょ?」


 そういう物なのですか。だから、頭が弱そうな顔の人しかいないんですね。

 でも、そうであるならば、この吸血鬼は何故ここにいたのでしょうか。わざわざ刻印まで書いて封印みたいにされていたのですよ。



「ルッカさん、あなたは、どうして街中に?」


「私がややこしいってこと? 入れられた時は街の外だったのよ。市街区域が長い時で広がったのね」


 どれだけ長生きしているのよ。

 完全に下町でしたよ。



「良いことを思い付いたよ、巫女さん。グッアイデアよ」


 絶対に碌でもないことです。


「何ですか?」


「私が血を誰かから吸い取って、巫女さんがその人を回復するの。そしたら、私、ドンドン強くなれるわ! グレートよ!」


「……それ、私の魔力を吸い取ってるだけじゃないですか」


「あら、そうね。ミラクル!」


 ほんと、ふざけてる人だわ。いえ、人じゃなかった。



「ちょっとくらい分けてくれてもいいじゃない。恵まれてるんだから」


「日々の行いの差でしょうね」


 私は冷たく言い放つ。


「まあ、スードワット様の使徒である私に何て口なんでしょう」


 使徒!!

 何か知りませんが、特別感がずるいですっ!!



「あなた、今度、スードワット様にお会いしない? きっと仕えたくなるわよ。私、案内できるよ」


 にべもなし。

 もうお仕えしておりますが、もう一度お会いできるのですね。素晴らしいです。


 首を縦にぶんぶん振ります。



「今更で申し訳ないですが、ルッカさん、とてもその服、凄いですね。とてもお似合いですよ。えぇ、肌とか輝いて見えます。先に言えば良かったです」


「……とってもキモいわ。あなた、クリーピー」


 クリーピーの意味は分かりませんが、私を貶したことは間違いないでしょう。ディスガスティングですっ!!


 が、ご機嫌はお取りしますよ。



「それでは、早速、私の血をお飲みください」


「えぇ、有りがたいのだけど、どうしたの? でもアメージングよ」



 私、腕を差し出しまして、いっぱい吸って貰いました。

 もちろん、造血魔法で血を作り続けます。

 ルッカさんの涎とか唇の感触とか、少し生温かくて鳥肌が立ちそうです。


 ルッカさんの髪の毛はより青みが強くなりました。


「何ですか、それ? 気味が悪いくらい綺麗です」


 いえ、気味が悪いだけなんですけどね。


「とても良質の魔力だわ。艶やかになったでしょ? んー、セクシー」


 答えは頂けませんでしたが、魔力を補給しての変化だと思っておきますよ。


 あっ、吸血の際に言われていた程の苦痛は御座いませんでした。

実は、筆者である私が今日から新しい部署に異動となりました。

会議が多いみたいで、ちょっと大変で御座います。

物語は完結まで持っていきますので、これからも宜しくお願い致しますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ