表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/421

お腹が空きました。何か下さい

 見張りは別の人を連れて戻って来ました。

コリーさんではありません。男性です。見張り番仲間でしょうか。


 私はズボン姿になっているので、安心しての三角座りです。



「おい、どの牢のヤツが脱獄したんだ?」


「昨日の深夜に入った女だ」


「……中にいるだろうが」


「あれ、なんで……。そんなはずは……」


 彼らが私の前の牢に来ていたので、私は顔を上げて観察します。



「俺、休憩してたんだぞ」


「しかし、鉄柵を手でぐいっと曲げて」


「ふざけんなよ。俺は飯食ってたんだぞ!」


 応援に来た人は、見張り番の人を小突いてから戻って行きました。

 柵については、私、残った歪みも出来るだけ丹念に真っ直ぐにしましたもの。



 そう言えば、お腹が空きましたね。

 窓もないので時間が分かりません。



「おい、お前! お前のせいで、俺が怒られただろ!!」


 牢の前で男が喚きます。

 が、アデリーナ様に好きにして良いと言われたのです。

 反応しない私に、男は諦めて、どこかに行きました。




 しかし、暇ですね。一向にご飯も運ばれてきません。


 私はまた牢を出ます。

 本当に柔いですね。少々気合を入れて力を込めれば余裕なのです。魔力を練り込んだ魔鉄を使えば宜しいのに。


 見張りの人は探さなくても見付けられました。入り口近くで座っていましたから。




「お腹が空きました。何か下さい」


 そんな彼に私は直接的に要求します。


「……ぁぁあ……」


 声にならない声を漏らしております。おしっこを漏らしそうな勢いですが、それは本当にご容赦ください。

 私からは殺気が漏れていると思いますが、それもご勘弁を。仕方ないのですよ。空腹を満たしたいのです。


「早くお願いしますね」



 持ってこられた食事はうっすいスープのみでした。具は何かの葉一枚のみです。



「……ふざけているのですか?」


 私は彼に牢から問いかけます。穏やかに。


「私は今、あなたが死に腐りやがれと心の中で願っています。なぜか、分かるかな?」


 口調は穏やかなんですよ。優しくです。ほのぼの感も多少はあるかと思います。



 私はスープを彼に投げ付けた。金属製の皿も一緒ですので、良い音を出して、彼の顔に当たります。

 私と彼を隔てる仕切りは、もう御座いません。何故なら、鉄の棒を曲げて戻すのが手間でしたので、全て折ったからです。


 もはや、牢ではなく、ちょっとした窪みですね。洞窟の入り口みたいで、少し懐かしいです。




 スープまみれというか、お湯まみれの彼は想像以上に悶絶し始めました。


 えっ、何これ…………。


 床を激しくのたうち回ってます。




「ど、毒っ! い、痛い!!」


 なんと。

 ……飲まなくて良かったです。


 どうしたものかと見ていると、肌の色が変色していきます。ゴブリンの様に緑色かな。たまに、肉片が落ちて腐敗していくよう……。


 これは、解毒が必要なんですかね……。でも、迷っていたら死んじゃいますか。

 死んでも構いませんが、アデリーナ様と約束しましたからねぇ。私が殺したと思われるのも癪です。



 解毒魔法と回復魔法の連続使用で、彼は一命を取り止めました。解毒魔法は簡単な文句の緩やかな魔法では効かなくて、どれだけ強烈な毒を盛りやがったんでしょう。

 慌てて、魔力使用量の多い魔法に切り替えましたよ。肌に触れただけで腐食開始って、兵器レベルでしょ。



 男が落ち着いた所で、私は自分の牢に戻る。解毒魔法くらいで体が疲れるなんて、思ってもいませんでした。



「……体、大丈夫ですか?」


「あぁ……。なんだよ、お前……。しかし、あいつ、とんでもない毒を渡しやがった。殺す気だったのかよ……」


 貰い物の毒ですか。そんなお気軽に手に入るのですか。


「何故助けてくれたのか分からないが、あんた、回復魔法の遣い手か……?」


 私は首肯く。


「冒険者でもやっていれば良かったんだよ。医者にでもなりたかったのか。……シャールじゃ、貴族の特権だ。貧民が、幾ら人を助けたかったとしても捕まるさ」


 そういう物なんですね。



「……水を掛けて悪かったな……」


 しまったな。殺したかったのに、謝罪を受けてしまいましたよ。

 その前に毒を盛ったことを謝って欲しいところではありますが。



「あなたも仕事です。仕方御座いませんでしたね。許しますよ」


「すまんな。……しかし、あんた、ここでも魔法が使えるのか。あっ、いや、黙っていてやるよ。もっと下に入れられてしまうからな」


 もっと下と言うのは、階のことでした。アンチマジックの術式は地中にあり、そこから近い順に重罪、もしくは魔力の強い者が入れられていくと、彼は言いました。


 私のいるここは、最も軽い部類の者が入るフロアとのことです。つまり、一番上にある牢屋なのでしょう。



「……あんた、名前は?」


 正直に答えてあげましょう。


「メリナです。聖竜様にお仕えしています」


「!! 聖衣の!?」


 私は再度首肯く。

 参拝者はあの人数でしたから、シャールの多くの人間が知っているのでしょう。



「…………そんなバカな。巫女様がこんな所にいるはずがないだろっ!!」


「……そうですね。証明するものもないです」


「……やめて、くれ…………。聖竜様に楯突くつもりなんて無いんだ……。巫女じゃないって、否定してくれよ……」


「聖竜様は罪無き者には何もしませんよ」


 お優しいですから、むしろ、マンデルさん家みたいに祝福も与えてくれるのです。

 ただ、見張り番は今まで以上に震えだしました。




 扉が開く音がする。


「おい、あいつ、牢から出てるぞ」


「正直、驚きました。どうも脱獄を謀ったのでしょう。愚か者です」


「見張りが怯えきっているな。魔法を使ったのは間違いないか」


「そうですね。先程、感知したと担当者から連絡がありました。アントン様もお聞きになった通りです」


 アントンとコリーが立っていました。後ろには何人か武装兵がいます。



「ったく、俺の判断ミスだ。一番下に入れておけ」


「! アントン様、それは少しばかり酷では……」


「法は法だ。王族からの要請書にも反していない」


本年も宜しくお願いします(^^)


朝からお酒はサイコーですね(*´▽`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ