表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/421

スカートを頂きましたっ!

 ラナイ村の隣村でもアデリーナ様は広場で演説された。

 ここでは巫女服を着ているアデリーナ様は尊敬の眼差しで見られていて、話が終わると、魔族から人々を守られた聖竜様とその巫女を称える声が絶えませんでした。


 そうです。

 これこそが巫女なんですね。


 何回も「殺す、ぶっ殺す」とか叫ぶのは、巫女の仕事では無いのです。おかしいとずっと思っていましたよ、私。



 私たちを襲った盗賊の方々、この人達もフロンによる犠牲者なのですが、村長の一存で釈放されることになりました。

 何せ、盗賊行為は私たちに対してだけだし、それも未遂に終わりましたからね。



 フロンに捕まって、最長の人で半年くらいでした。その間、完全に操られていた訳でなく、見張りの時間以外は森から出られないだけで、自由意思はあったそうです。

 森の中で魔物に襲われなくて良かったですね。……いえ、彼らは襲われた後の生き残りなのかもしれません。



 私たちは行きと同じく、ここで一泊した。



「しかし、メリナさん、その服、どうにかならないのですか?」


 村長の家に入る前にアデリーナ様に指摘されました。

 はい、私の服、血塗れです。しかも、片足に至っては、きれいに切られて、膝の下の部分がありませんね。

 すごく惨めな格好です。


「どうにもならないから、そのままなんでしょうがね。よろしい。今日の詫びと頑張りへの褒美として、私がどうにか致しましょう」


 アデリーナ様は村長さんに掛け合って、なんと、中古ですが、村のお姉さんから要らない服を買い取ってくれました。


 私は歓喜しました。


 シェラを再び心配させなくて済みますし、前の私が着ていた服よりも上等ですし。

 ノノン村よりシャールに近いこの村では、より良い服が手に入るのでしょう。



 生まれて初めて、スカートを穿きました!


 下がスースーしますが、これは開放感を楽しむのではありません。ワンランク上の女性になったのです。


 いえ、そう言えば、アシュリンさんの巫女服を着ましたね。あれもスカートでしたか。


 とはいえ、この服は素晴らしいです。何せ、膝くらいの丈で女の子らしさをアピールしているのです。


 同じく中古でしたがシャツの白とスカートの若草色の組み合わせが綺麗ですし、木製のおしゃれ丸ボタン、肩の所にある小さい飾りリボン、広がるヒラヒラ、薄青色の腰紐、全ていい感じです。

 肩からのサスペンダーが付いたスカートなのに腰紐までもがあるということは、腰の括れをアピールするためなのですね。

 メリナ、嬉し恥ずかしで御座いますの。



 着替えで借りた部屋から皆の所に戻った時にも、一回転してスカートを広げてみました。宙返りではありませんよ。



「馬子にも衣装だなっ!」


 カカカ、悔しいか、アシュリン。


 私は貴族風にスカートを摘まんでお辞儀する。足は交互で御座いますよ。



「気に入ってもらったようで、何よりです」


 はい。私は生まれ変わりました。


「衣シラミは取ったんだろうな?」


 無粋で御座います、部長。


 そんなもの、全てプチプチ潰しました!

 ……数匹だけでしたが、付いてました……。

 卵も丹念に始末しましたよ。

 正直、殺虫魔法を覚えたいと強く考えました。


 まさか、おしゃれリボンの中に潜んでいるとは思っていませんでしたよ。




 私は椅子に座る。

 姿勢良くしましょう。


「うむ、先ほどの村で鬼人とばかりの戦闘をした者とは思えんな。マジで」


 鬼?

 私に矢を放ったヤツがそこにいますよ。

 行為としては許しましたが、あの事実は然るべき時に利用させて貰いますよ、私。


「そうですか。そうかもしれません。私は生まれ変わったのかもしれませんね、このスカートにより」



 そんな満足している私にアシュリンが真剣な目で言ってきた。


「では、メリナ、今から持久力を付ける訓練だっ!」


 私の発言を聞いておられましたか? 生まれ変わったのですよ、私。


 アシュリンさん、肩車ならお一人でなされて下さい。



 私は無視して、用意されていた水を飲む。

 それから、勿体振って口を開く。


「アシュリンさん、私は情けないです」


「な、何がだっ!」


「あのような魔族に手玉に取られるなど、鉄の拳の名が泣きますよ」


 ぷっ、鉄の拳……。

 秘め事の際にも『あぁ、愛しの鉄の拳。そなたの煌めく眼差しの前では世界中の宝石が光を失なう如く、逃げ出してしまうだろう』とでも言われるの?


 そんな事をおっしゃる方は眼光鋭い格闘家にでも恋したのかしらね。

 あら、正解だわ。



「ほう、この私に喧嘩を売るかっ!? いいだろう。背中を蹴られた痛み、貴様の泣き顔で消そうかと思っていたのだっ!」


「この竜の靴に喧嘩を売るなんて、世間知らずですわよ」


 私の呼び名も大概ね。


「……二人とも止めなさい。ここは、殲滅部の小屋ではないのです。帰ってから、存分にお遊び下さいな」




 ドアがノックされる。そして、ご飯の用意が出来たとの旨が伝えられた。


 待ってました!

 私はお腹ペコペコでしたのよ。

 怒濤の一日で、お昼を食べてないのですよ。



 気が急いて、アシュリンに背を向けたのが失敗でした。



 私は奇襲を受けました。


 ふわっとスカートが上がります。

 くそ! 悔しいわ!

 こんな単純なことなのにぃいいい!!!


 後ろから捲られましたっ!



「クハハハ、余り調子に乗、っ!」


「メリナさん!!」



 そうです、私のお尻が丸見えにされました……。


「マジかよ! お前、そんなヤツなのかよ!? マジこえーよ! フロン並みにヤベーよ!」



 次はパンツも買ってください、アデリーナ様……。

 私、持ってないのです……。

 一介の村娘には過ぎた物なのですよ……。


 アシュリンさんの済まなそうな顔が、辛いです。



 申し訳程度に


「う、うん、なかなかの筋肉だ。蹴りの鋭さも頷けるな」


って慰められましたが、嬉しくないし、むしろ、お尻に筋肉なんか浮き出てたら嫌なんですけど。


 今のは嘘だと仰って下さいっ、アシュリンさん。私のお尻はぷりぷりだと言い直してっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ