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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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三十九話 アイテムボックス

2021/02/02 23:02 修正

 

「――チッ、あの腐れドワーフ、まだ生きてたのね……それじゃ、わたしはそろそろ戻るわねぇ」


 クナは抑揚のある声を発しつつ牢獄の鍵を閉めようと腕を伸ばす――。

 が、俺は即座に動いた。

 ――あるスキルを発動しつつ両腕に魔力を集中させる。

 フンッと力を入れて自身の手首を拘束中の黒い枷を強引に壊した。

 鈍い音が黒い枷から響く――痛っ。


 強引に壊したせいで手首の皮膚が千切れて出血してしまった。


 ま、すぐに傷は塞がるからいい――。

 黒猫(ロロ)の足も自由にしようか。


 相棒の足を縛る闇色の枷と足の僅かな隙間に、魔力を込めた指を数本入れた。


 ……黒猫(ロロ)の足を傷つけないように注意しつつ……闇の枷を指で引っ張るように――。


 壊した――。

 指が裂けて痛かったが、ちゃんと黒猫(ロロ)を拘束していた黒い枷は壊せた。


 腕が自由になるのと同時に、クナは「えっ」と微かな声を漏らす。


 クナは持っていた鍵の束を落とす。

 当然、クナは驚いた表情を浮かべているが、苦悶の表情でもある。

 そのクナは体が宙に浮かんで「ガッ」と小さいうめき声も発していた。


 クナが浮かんで苦しんでいるのは、俺が<導想魔手(あるスキル)>を発動していたからだ。

 その<導想魔手>を強めようか――。


 クナの胴体を握り潰す――。

 <導想魔手>が握る力でクナの両腕が凹むと、細い体がくの字に折れ曲がった。

 

 <導想魔手>の魔力が構成する七つの指の力と魔線が幾重にも重なった掌の圧力は強力だ。

 クナは、万力によって強引にねじ曲げられたような体となった。


 ミシミシッとリンゴが潰れるような音――。

 生々しい肉や骨が潰れる異音が響いた。

 クナの体のあちこちから紫色の血が噴き出していく。


「なっなぜ、う……ご――ガッ」


 クナは苦悶の表情を浮かべつつ、もごもごと喋っている途中で、足の間にぶら下がる尻尾を振るった――。

 宙に弧を描く尻尾。

 その先端は尖っている。俺の頭を突き刺す気か。

 その尻尾の先端を凝視しつつ――左手でガシッと掴んだ――。


 ――驚いた。


 雑巾を絞るように体を潰したが、反撃してくるとは……。

 このしぶとさ、さすがは魔族といったところか。

 しかも、尻尾の先端は長細い針で、毒っぽい液体が滴っている。


「お、お前は……」

「クナ、残念だよ。さっきのお返しだ。少し嬲ってから殺してやるからな?」


 歪な魔力の手(<導想魔手>)の魔力操作を意識――。

 クナを更に絞り上げる。


「ガハッ」


 クナは口から紫色の血を吐く。

 紫色の顔は震えていた。

 クナの尻尾の針を折って尻尾を強引に引っ張り上げた。


「ギャァッ」

「五月蝿い」


 丁度いい、魂をもらうか。

 胴体を握る<導想魔手>を操作。

 

 血塗れのクナを目の前へ運ぶ。

 クナの黒と紫で縁取られた瞳と俺の瞳が交わるように顔を近付けた。


 彼女の瞳がよく見える。


「クナ……君は俺を騙した。だが、それは俺も同じ。実は俺も人族じゃないんだよ」


 その言葉にクナは瞳孔を散大させた。


「君から言わせれば、ざぁんねぇぇんという奴?」


 邪悪な笑みを意識したつもりで、クナへと最後の言葉を贈った。

 そのままクナの変貌した紫色の首筋に顔を埋めて噛み付く。


 血を吸い尽くし、魂をもらう。

 <吸魂>によって僅かに俺の体が光った。

 力が流れ込む。

 ――魂を得た爽快感から思わずブルッと震えた。

 <吸魂>されたクナはあっという間に干からびた。


 更に、乾いた首筋から十センチ大はある虫の死骸が落ちていく。


 なんだろ、この虫。クナの首に住んでいたのか?


 虫の死骸と一緒にクナが身に着けていた装備品が床に落ちて金属音が鳴り響く。

 音が反響してしまった。

 あのゴドーというモンスターにバレたかも。


 ……だが、姿はみせてこない。


 金属音は牢獄の外までは届かなかったようだ。

 愛用の黒槍がないから少し不安だ。

 ま、来たら戦うしかない。

 とりあえず、クナが身に着けていたアイテムをチェック。


 床に転がった虫の死骸を踏み潰してから――。

 床へと屈む。まずは指輪だ。


 床には三個指輪が落ちている。

 どれも意匠は凝ったつくり……。

 特殊な指輪だとわかるが……。


 あの光球を産み出していたのは、三角形のトライフォースの指輪だったな。


 これだ。

 嵌めようと思ったが……。

 大きさ的に、小指の先っぽにしか入らねぇ……。

 ま、強引に嵌めておく。

 次はこの腕輪だ。

 

 時計的、太陽のような小さい円盤か?

 紋章があるな。

 何かを埋め込むような溝もある。


 その紋章にタッチ。

 反応はしない。ま、装備しよう。


 手首に嵌めるとして、左手首は<鎖の因子>マークがあるから却下だな。

 だから右手首に嵌める――。

 右手首に腕輪を装着。


 すると、にゅるっと自然に腕輪の金属が締まり、手首にフィットした。


 おぉ、形状記憶合金を超える動きだ。

 その時計のような丸い表面にタッチ。何も反応なし。

 クナは、この小さい腕輪の表面を反対の手で触りながらオープンと言っていた。


 真似してみよう。


「オープン」


 うおっ、コンマ何秒と掛からず反応を示した。

 左手が吸い込まれた。

 と思ったら、太陽の形をした円盤からウィンドウが出現。


 薄緑色のウィンドウには……。


 菱形の◆。

 人型のマーク。

 格納。


 というアイコンと文字アイコンが映る。

 そんなメニューだった。

 

 そのメニューの下に、ずらっとアイテムが――。


 ◆:人型マーク:格納

 ―――――――――――――――――――――――――――

 アイテムイベントリ 30/85


 中級回復ポーション×155

 中級魔力回復ポーション×110

 高級回復ポーション×43

 高級魔力回復ポーション×44

 金貨×25

 銀貨×88

 古魔書トラペゾヘドロン×1

 月霊樹の大杖×1

 古代金剛樹の斧×1

 古代金剛樹の鎧×1

 古代金剛樹のキュイス×1

 古代金剛樹の脚甲×1

 古代金剛樹の籠手×1

 魔剣ビートゥ×1

 祭司のネックレス×1

 魔力増幅ポーション×3

 闇言語魔法《闇壁(ダークウォール)》×1

 暗冥のドレス×1

 帰りの石玉×13

 紅鮫革のハイブーツ×1

 雷魔の肘掛け×1

 宵闇の指輪×1

 古王プレモスの手記×1

 ペーターゼンの断章×1

 ヴァルーダのソックス×5

 魔界セブドラの神絵巻×1

 暁の古文石×3

 闇紋章魔法《闇枷(グラバインド)》×1

 ロント写本×1

 十天邪像シテアトップ×1 ―――――――――――――――――――――――――――



 色んな物が入ってる。

 これを一つ一つ調べるのは時間が掛かりそうだ。


「おぉぉいぃっ、そこに誰かいるんだろぉ」


 アイテムのチェックをしていると、隣の特別そうな牢獄からまた野太い声が聞こえてきた。

 さっきも声を出していたな。

 声の主が気になる。

 

 直に見てみるか。

 アイテムボックスを閉じた。

 

 鍵束を拾ってから、その声が聞こえた牢獄へ向かった。

 牢獄には蛍光色に澱んで光るプールがある。


 水面の光が天井へ反射していた。

 不思議な模様を作りだしている。


「いるぞ。隣に入る予定だった者だ」

「何だと!? 自由に出られるのか? 俺を出せっ」

「それより、何で牢獄に? というか……その気味の悪い色の水に何で浸かってるんだ?」


 バシャッと水面を叩く音がした。


「んなっ、ことより、頼むっ、ここから出してくれ! 俺はラングール王国のブダンド族リチャの息子ハンカイ。今はこんな身だが、羅将軍ハンカイと呼ばれていた者だ。自由にしてくれたら、お前に忠誠を誓おう」


 ラングール王国? 俺に忠誠?

 また変なことをいう……羅将軍とか言われても、分からない。

 ニュアンス的に戦国時代のような言い回しだが……。


「忠誠とかはいらん。そんなことをいうのなら助けないぞ?」

「な、なにぃ。わかった、感謝はする。だから、頼む、助けてくれ」


 ここからじゃ顔が見えないが、切羽詰まってる印象は感じられるので助けてやるか。


「ついでだ。ハンカイとやら、助けてやろう。少し待ってろ」

「オォォ、ありがたい」


 クナから奪った鍵束を適当に弄り、牢獄の鍵穴に合う鍵を探していく。

 数個目の鍵を試したところ、カチャッと気持ちいい音と共に鍵が開いた。


 ビンゴッ。

 重い鉄扉を開けて牢獄の中に入った。


「おい、この蛍光色のプールの水は触れても平気なのか?」

「大丈夫、飲まなきゃ平気だ。これは、俺の大地の魔宝石から滲み出した魔素エキス。飲めば力を得るだろうが……魔素中毒になるかもな……」

「ゲッ……」


 滲み出したエキスって言葉に反応してしまったが……そもそも大地の魔宝石とはなんだ?


「先にこっちの首輪を外してくれ」


 そこで、初めて野太いだみ声の主を見る。


 あれ、随分と丸くて……。

 その、何ていうか、タマネギのような頭部だな。

 その玉葱オヤジは首を動かせるのか、上下に頭を揺らしている。

 髪がボサボサで伸び放題……。

 壁から吊るされた巨大な鉄の鎖が首輪につながれていて、上半身までしっかり蛍光色のプールにつかっていた。


 苦しそうだ。助けてやろう。


「……了解、外してやる」

「にゃっ」


 黒猫(ロロ)は不思議そうに光を発するプールに反応。

 猫パンチを水面に当てようとしていた。


「ロロ、この水で遊ぶな、混ぜるな危険って奴だ」


 黒猫(ロロ)は猫パンチをやめて、プールに沈められている玉葱頭のハンカイへ近寄っていく。


 しょうがない、プールへ直に入るか。


 ハンカイの首を囲う鉄板の左右には鍵穴がある。

 クナの鍵の束から合う鍵を探していった。


 牢獄を開けた鍵では開けられない。

 何個か鍵を試して合う鍵を見つけた。

 早速、鍵を開けて鉄板を外す。


 巨大な鎖も取れた。


「……済まない。手も外してくれないか?」

「あぁ、待ってろ」


 プールに浸かるハンカイの両腕を見る。

 両腕には黒いチューブ……。

 触手の管にも見えるチューブが、幾つもプールの底と繋がっている?

 プールの水は黄色いから、今一判別できない。


 凝視すると……。

 底に魔法陣らしき物が描かれてある。

 それはハンカイの両手を拘束している鋼鉄の手形と一体化していた。


 不思議だ。

 魔道具だと思うが機械のようにも見える。


 腕から繋がった管は破れている所も多い。

 そこから蛍光色の液体が漏れ出ていた。

 鋼鉄手形のほうは、壊れている所もなく、がっしりとプールの底の床に固定されていた。


 その床が――。


「何だ? 光?」


 ハンカイの腕を拘束する鋼鉄手形の一部が光った。

 破れた黒い管からは、蛍光色を発した謎の液体がより多く漏れ出ていく。


 そういえば、血ではなく蛍光色の液体?

 どうやら、この鋼鉄手形と繋がった魔法陣は、ハンカイの魔素か何かを吸収する物らしい。


 ハンカイから吸収した魔素が迷宮の一部へ流れ込むような作りなのかねぇ。

 不思議に思いながらも、手首を覆っている鋼鉄手形の鍵穴に鍵を差し込む。

 枷を外してあげた。


 更に、両腕に繋がった黒い管を全部抜き取った。


 うおっ、光。


 ハンカイの両手を出してやると、驚く。

 手の甲には幾何学模様の印があり、模様の中心に八角形の宝石が嵌まり込んでいた。

 宝石は黄色い光を発している。


 ハンカイは手が自由になると、かさついた唇を開いて、


「……この光、不思議だろう? そうなのだ。俺の両腕と腹には大地の魔宝石が埋め込まれてある。この拘束籠手は特殊な魔道具なのだろう。これに俺の魔宝石が反応して魔素が吸収され、迷宮の養分にされていたのだ……」


 続けて、ハンカイは両手を震わせながら掌を見て、「それにしても、ひさしぶりに両手を見る……」と感慨深げに語っている。


「腹や足も拘束されているな」


 ハンカイの腹の位置にも魔法陣が施された鉄板がぐるりと巻き付くようにくっついていたので外してあげた。


「ついでに両足も外してやったぞ」

「おぉ、済まない。恩に着――!?」


 ハンカイはすぐに立ち上がろうとしてこけてしまう。


「――おい、無理するな」


 肩を貸して、プールの縁に乗せてやった。

 そのハンカイの体を見てまた驚いた。

 下腹部に両腕の黄色く光る宝石とは違う、くすんだ灰色の宝石が埋め込まれていたからだ。


 丹田と言われる位置か。


 くすんだ灰色の宝石は丸い。

 丸く縁取られた周りには、幾何学模様の黒色の線が四方八方に伸びていた。

 その黒色の線は、皮膚を浸食している?

 ひび割れた皮膚にも見える黒色の線が腹から胸にまで及んでいた。


 どうみても異常。


 このドワーフ……。

 腹の光を失っている宝石といい、両腕に嵌まる光る宝石といい、

 絶対に普通ではない。

 そんな灰色の宝石に目を奪われていると、ハンカイが力なく答えだした。


「……この魔宝石の力は、全部吸われたようだ」


 先ほども言っていたが、魔宝石の力?

 ……聞いてみよう。


「それは何なんだ? 魔宝石?」

「エンチャントの秘術は不思議か?」

「エンチャントは聞いたことがあるが、少なくとも……その宝石が嵌まる手や腹はみたことがない。完全に初見だ」

「そうか……」


 ハンカイは沈み込むようにうなだれる。

 あぁ、しまった。そりゃいろいろと消耗しているよな……。

 まずは体力が戻らないとだろう。なら、


 太陽のマークがある腕輪をタッチして「オープン」


 すぐにずらっとアイテムが表示され、その中から中級回復ポーションをタッチ。

 そのウィンドウからにゅるっと回復ポーションだろう瓶が現れる。


「これを飲めば回復するはずだ」

「おお、ありがたい。早速……」


 ハンカイは一気に飲み干した。


 するとやつれた顔が瞬時に回復。

 腕回りの傷が消え、体つきも激変。

 一回り筋肉が増えたようにも見える。

 まぁ見た目はドワーフを一回り大きくした感じで、濃い眉毛に玉葱頭は変わらないんだがな。

 ザガやボンと同じぐらいか少し大きいぐらいだから、やはり同じドワーフなんだろう。

 地下にいたロアよりは断然大きい。


「すまん、ありがとう。しかし、お主は高級回復ポーションに、そんな貴重なアイテムボックスを持っているとは……迷宮都市の高ランク冒険者なのか? それとも何処かの王国貴族か何かか?」

「にゃぁ」


 そこに、黒猫(ロロ)がハンカイの顔を覗くように挨拶した。


「ぬぉ、猫か?」

「あぁ、こいつは俺の相棒で使い魔みたいなもんだ。ロロディーヌって名前だ」


 ハンカイは猫が苦手なのか、少し顔がひきつっている。


「そ、そうか。それで、お主の名前は?」

「俺の名はシュウヤ・カガリ。シュウヤでもカガリでも、好きなように呼んでいいぞ」

「やはり貴族だったか。それではあらためて、シュウヤ、ありがとう」

「礼は別にいらんよ……それと、俺はただの冒険者であって貴族ではない。このアイテムボックスは人族に化けていた魔族を殺して手に入れたんだ」


 それを聞くと、玉葱顔のハンカイは片眉を動かし、


「おい、あの化けてた奴、魔族クシャナーンを殺ったのか?」


 知っているのか。


「……あぁ、殺った」

「――そうか。俺が殺したかったが……しょうがない。あいつに俺もだまされてな……金剛樹装備も取り上げられ、多勢に無勢で捕まったんだ……あれから何年たつのだろうか。気が遠くなるほど閉じ込められていたが……戦争はもう終わったのか?」


 戦争? レフテンとサーマリアの争いのことか?

 それともオセベリアと帝国の戦争かな?


「戦争? そういや【オセベリア王国】がなんとか帝国と戦争中とかは聞いたことがあるが……」


 俺の言葉を聞いたハンカイは眉間にある繋がりそうな太い眉を大きく曲げる。

 困惑した顔を浮かべながら、


「なんだ? その、オセ、なんたらは聞いたことがないぞ。帝国とはエルフのベファリッツ大帝国か? 我らドワーフの国は……」


 ドワーフの国か。

 一瞬、地下世界で出会ったはぐれドワーフのロアのことが頭に過った。


「……ハンカイはどんな国出身で、どこと戦争していたんだ?」

「俺はドワーフの国【ラングール王国】所属。特殊黒寿千人隊を率いていて、羅将軍ハンカイと呼ばれていた。戦争の相手はエルフの【ベファリッツ大帝国】だ」


 ベファリッツ大帝国……。

 そういや過去にそんな国があったと師匠が話していた。

 三百年前にはドワーフの王国があったとされる場所は消えていて、古戦場跡だったとも言っていたな。


 地下で出会ったドワーフのロアはラングール帝国と話していたような……。

 ハンカイはドワーフの国を王国と言っている。

 帝国ではない? ロアは確か、過去に大きな戦争があって地上を嫌い、長い間交流を断っているとも語っていた。

 名前からして、同じラングール国だと思うが。

 年月と共に王国から帝国へ移り変わったのかな?

 師匠がくれた地図には、ベファリッツ大帝国やラングール国の名前はない。現時点ではドワーフの国は地上から完全になくなっているとみていいだろう。


 このハンカイは、相当長い間閉じ込められていたようだ。

 まぁ、そんな過去のことを余り知らない俺が話してもややこしくなるだけだから、黙っておく。


「……悪いが二つとも知らないな。地図があれば見せてやるんだが、今は背嚢がない」

「……そうか」


 ハンカイはがっくりとうなだれてしまった。


 さて、それよりも……。

 武器がないし、使えそうな武器を探すか。

 アイテムボックスの中を見てみよ。


 また「オープン」と言ってアイテムを表示させた。

 アイテムボックスから武器っぽいのを次々と取り出していく。


 ――魔剣ビートゥ、金剛樹の斧っと。

 金剛樹の斧を出すと、ハンカイが、


「おおぉ、俺の武器だ、金剛樹の斧」

「おっ、そういや金剛とか言ってたな。これ要る?」

「――勿論っ。しかし、いいのか?」

「いいよ。それじゃ、ここに入ってる金剛樹の一式はハンカイのか。全部出してやる」


 そう言って、アイテムボックスから金剛樹一式を出してやった。


「おお、まさしくこれだ。本当に全部いいのか?」

「持ってけ。みたところ、俺にはサイズ的に合わないし。俺はとりあえず、この魔剣ビートゥを使ってみる」


 魔剣ビートゥは、反った赤黒い長い鞘に包まれていた。


 鞘から剣を抜くと、不思議な音が響く。

 赤みを帯びた刀身は僅かに反っており、そこにはアラビア文字と象形文字に似た字が紫色で彫られてあった。

 赤黒い闇色の靄がかかっていて、剣先の方にいくほど濃くなっている。


 柄の近くには、〝闇神リヴォグラフへ捧げる〟

 と彫られてあった。剣の名前ではなく闇神か。


 その魔剣ビートゥを振り回し、斬り落としから斬り上げと、感触を確かめた。


 最初の感想は軽いの一言。

 見た目的には師匠に作ってもらったククリ剣を全体的に長く分厚くしたような感じだが、ククリ剣よりぜんぜん軽い。


 奇怪な剣だが使えそうだな。

 サイズ的にバスタードソードを変形させた感じか?


「ほぅ、その剣は片手半剣か」


 と言ったハンカイは金剛樹の一式を装着していた。

 橙色系で統一されたその姿は、映画や海外ドラマで見たことのある古代ローマに出てくる兵士っぽい姿。

 そんな感想を抱きながら、


「片手半剣?」

「片手、両手、どちらでも扱えるって代物だろう?」


 やはりこれはバスタードソード系か。

 中世では雑種剣とか言われていたんだっけ?


 刀身の赤黒い色合いを見つめながら、


「……そういう物なのか」

「その剣の見た目からはそんな印象しか感じられないが。シュウヤは剣についてはあまり詳しくないようだな」

「あぁ」


 そりゃ、こんなおどろおどろしい赤黒い反った魔剣なんて見たことがなかったし、映画やゲームに似たような剣はあったが、実際に見て触るのは初だからな。


 そんな風に魔剣を眺めて考えていたその時――。


「あれぇ、グナ様ァ、どこにイッダんデつかァ、どうヂダんデずがァァ」


 モンスターの声が響いた。

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