二百十八話 暗刀血殺師ユイ
ラグニ村を出て沸騎士を召喚。
彼らを前衛に展開し、休憩を交えながら魔宝地図の場所を目指し進む。
その沸騎士から魔界の戦いの様子を聞いたり、ユイと連携して剣術を学びつつ実際にモンスターを倒したりして過ごしていった。
そうして、数日が経った。
相変わらず、空は力のない曇天模様。
雨は止んだ。
地形は調えられた土の街道が続く。
草原に棲息するモンスターは大量だったが、ここら辺は少ない。
しかし、モンスターの死骸に群がるハイエナのようなモンスターもいる。
投げ槍と捨てられた剣に矢が落ちている。
狩りがあったようだ。
キャンプの跡もある。
まだ、この辺りはラグニ族の圏内か、または、邪族の生活圏内かな。
やがて、土の街道から森林地帯に変わった。
菩提樹に針葉樹に、見たことのない曲がりくねった樹が多くなった。
気候を無視したような邪界だけに茂る木々が多い。
見た目が、クリスタル状の樹皮を持つ樹木もあるし、異質だ。
大森林地帯の一部だろう。
「見たことのない樹木。サーマリアにはクリスタル的な樹皮を持つ樹木なんてなかったですぞ」
「ん、ホルカーの南にもなかった」
「ヘカトレイルの近くの魔霧の渦森もオカシナ樹があったけど、こんな形の樹木は見たことがないわ……」
眷属たちが不思議そうに樹木を触り呟く。
木々の間から標高が高いアルプスのような山脈の麓が覗く。
大森林地帯は、隙間のない壁のようだ。
歪な樹木たちが塞ぐから、奥に進む道はない。
しかし、魔宝地図が示す場所は、この森の奥。
空から見るか……。
「空から確認してくる」
「了解」
「ん、一緒にいく?」
「いや、いいよ、直ぐに戻ってくるから。ロロ――」
「ンン、にゃおん」
黒猫は馬のような神獣ロロディーヌの姿に変身。
そんな凜々しい相棒の背中に跨がるように飛び乗った。
神獣の後頭部から伸びた一対の触手手綱を掴む。
その触手の先端が、俺の首に張り付いた。
ロロディーヌとの感覚共有だ。
全速力で森の横を駆け抜けていく。
さっきも見たが、この森は本当に延々と続く壁にも見えた。
そのタイミングで、相棒はドッと鈍い音を響かせた。
馬の姿に近いロロディーヌは後脚で地面を強く蹴った音だ――。
一瞬、浮かんだ感覚を得る、そう、跳躍だ――。
俺も相棒の機動に合わせた。
相棒の足下に<導想魔手>を発動させる。
空中に、ロロディーヌ専用のジャンプ台を作るイメージだ。
掌は基本のパーだが、歪な魔力の手を設置してあげた。
感覚共有している相棒は足下の<導想魔手>を認識。
相棒は自身の足で<導想魔手>を突く――また――跳躍。
足場に使ってくれたロロディーヌは、再び、高く跳び上がる――。
刹那、ロロディーヌは胴体の横から漆黒の翼を展開した。
飛翔を開始する神獣ロロディーヌ。
圧倒的な速度を体感。風が気持ちいい――。
邪界の空模様を確認しながら――。
「ンン――」
「ヒャッハー」
『そら』『そら』『たのしい』『あいぼう』『あそぶ』
ロロディーヌの気持ちを感じながらの滑空――。
眼下に広がる光景は大森林地帯――。
――ここはペルネーテの迷宮の二十階層なんだよな?
と、異世界でもある邪界の光景も、惑星セラの地上と大差ない。
俺が知る地上のエルフの領域よりも……。
変わった形の多い樹木が形勢する乱雑な森だ。
そのせいもあると思うが、地面はあまり見えない。
もっと遠くを見るかと――。
森の奥へ目を向ける――と、んお?
ずっと遠くの森の奥……。
いや、山脈を越えた先に得体の知れない何かが、戦っている?
この位置からの肉眼でも、はっきりと、見える。
あれは……山と同じサイズ?
めちゃくちゃデカイのか?
邪神の眷属なのだろうか?
こりゃ確実に地上では見かけない光景……邪界に住む未知との遭遇だ。
いや、俺が見てないだけで地上にもあんなのが居るのかもしれないが……。
「ロロ、あの巨大生物の近くには絶対に行くな、ここで旋回しながら見学する」
「にゃおおぉ」
怖いが、興奮する。
自然とアイテムボックスからビームライフルを取り出していた。
スコープを覗く。
すぐにズームアップ。
巨大生物同士が戦う様子を見学だ。
おおぉ、すげぇ……。
左側の大怪獣は、デイダンを更に大きくした人型の胴体と黒と青を基調とした多脚を持つ。
右側の大怪獣は、桃色と紫色を基調とした巨大な芋虫の怪獣だ。
デイダン型はバイクのヘルメット的な未来風の頭部。
ヘルメットの左右に戦闘機の翼と似たモノが付く。その翼に合う形で、翼の真上に三角形のオプション的なモノが浮いていた。胴体には、いかつい肩。
細長い腕は、肘から挟み状の二つの腕に分かれて生えていた。
一方、芋虫型は桃色の触手角を武器として伸ばしている。
対空用のレーザーを発する複眼もある。
そこで、多脚型の右と左にある肩口が眩い光を放った。
更に、挟み状の二つの腕から、空間を裂くような渦を巻く未知の魔法を発生させた。
肩口がエネルギー源なのかもしれない。
巨大芋虫怪獣は、全身にその未知な魔法を喰らう。
触手が斬られて、黄金色の血飛沫を発生させた。
いや、血飛沫ではないか。大きさが大きさだから黄金の海の血液か。
が、突進して多脚のデイダン型の大怪獣と衝突していた。
衝突音はこっちにまでは届いてこないが、凄まじい。
面白いが、銀杏の葉のような大森林の一部が黄金色に染まる。
近くの山が一つ削れてしまった……。
あの血は本当に黄金なのだろうか。
興味が尽きない。
しかし、何か……。
このまま空を飛んで見学を続けているが……。
対空レーダー的なモノに感知されて、こっちのほうまで、未知の光線攻撃がきそう?
そんな予感がしてきた。
まぁ、距離的にかなり離れているから大丈夫だと思うが。
そこでビームライフルのスコープを見るのを止めた。
構えを解く。
ビームライフルを握る部分の指が白くなっていた。
興奮して力が入っていたらしい。
魔宝地図があるだろう地域とは、まったく違うことが救いか。
三分間だけ戦うスーパーヒーローと超獣決戦が行われるような場所には行きたくない。
「……ロロ、飛ぶのはここまでだ、皆のところへ戻るぞ」
「ンン、にゃあ? にゃおお」
相棒から、巨獅子型で乱入しないの?
と聞かれた気がしたが、俺の気持ちを理解して、旋回機動に移ってくれた。
いつか、まざりにいくのもアリかもしれないが、今は、巨大生物同士の生存競争は回避だ。
仲間のところへ戻ろうか――。
返事のつもりなのか、相棒の触手が俺の手の甲を叩く。
◇◇◇◇
「ということで、空は危険だ」
「興味はあるけど、止めといたほうが無難ね」
ミスティが巨大怪獣に興味を持ったが……さすがにな。
魔宝地図とはまったく違う方向だし、関係もない――。
森のほうを見ながら、アキレス師匠との槍訓練と草狩りの訓練を思い出しつつ、
「……だから、この森を訓練がてら、枝、樹木を壊しながら進むか」
と、発言。
師匠から教わった槍を∞に動かす技術は基本の一つ。
風槍流の応用は凄まじい。
ま、風槍流は〝一の槍〟を基礎とする。
一本の槍の技術、一つの槍を扱えてこそ、二槍と三槍に活かせる。
『シュウヤ、二本、三本、と槍を揃えても結局は見掛け倒しとなることが多い。基本こそが奥義に繋がると心得よ。結局は、おさまるところにおさまるのが風槍流。それが一の槍の教えだ』
と、黒槍を両手に持って遊んでいた俺を諭すようにアキレス師匠は語っていた。
あの時の師匠の言葉、まだ先っぽしか理解してないと思う俺が槍の妙技を語るには、まだ早いかもしれないが、確かに一つの槍の技術は、奥が深い。
魔闘術と合わせた<槍組手>もそうだし……。
武術に果てはないか。
「……シュウヤの思考はいつも訓練ね。ま、付き合うけど」
「やっぱりお師匠様の影響なのかな?」
ユイは父であるカルードを見ながら語る。
「ん、たぶん、わたしも先生に影響された」
「皆さんには、影響を受けた方が居るのですね」
「……ヴィーネだって、居るでしょう?」
少し考えていたミスティが疑問に思ったのか、ヴィーネの銀髪を凝視しながら聞いている。
確かに、あの光沢が綺麗なサラサラしてそうな銀髪はつい触りたくなる。
ミスティ的にも羨ましいのか?
今度、<従者開発>で色を変えるか聞いてみるか。
「はい……」
ヴィーネに深い意味はないだろうけど、俺を見つめてくる。
彼女が幼い時に体験した魔導貴族での激しい訓練、共に苦労を分かちあった妹たち、励まされた姉と教えを受けた母の話が出ると思ったが……。
「わたしは小さい頃、お父さんに影響を受けて、学校の先生にも少し影響を受けたかな」
「学校といえば、帰ったら書類の山が待ってると思うと憂鬱……」
「少し休むと手紙を出したんでしょ?」
「うん、マスターが雇っている使用人に買い物ついでに頼んでおいた」
準備してる間にそんなことしてたのか。
二、三日の有給休暇とか? あ、そもそもこの邪界、迷宮の二十階層で流れる時間はどの程度なんだ? 地上と同じ? まさか浦島太郎状態とかないよな。
一瞬、嫌なことを想像したが、眷属たちは楽し気に会話を続ける。
「ん、帰ったら、ディーとリリィに巨大牛の肉をプレゼントするっ」
「シュウヤが言っていたけど、グニグニという名前ね」
「グニグニの肉、新メニュー、客が増えるかも」
「ふふっ、エヴァ。興奮しちゃって」
「ん、美味しかったから……」
「でも、分かる。わたしもベティさんに柔らかい舌を煮たのを食べさせてあげたかったな」
確かに、あの柔らかい肉はベティさんも大丈夫だろう。
実は顎が強く、これ、美味いねぇ、もっとないのかい? とか、話すかもしれないけど。
「村の邪族? 何を言っているかサッパリ分からなかったけど……あの魚の料理と肉の料理の味は他では味わえないものだったわ」
「娘の話す通り、言葉は分かりませんでしたが、彼らの身振り手振りから感謝されているのは伝わってきました。我々が通された家も風情を感じ、サーマリア東部にある群島諸国に影響を受けた【シジマ街】の光景が目に浮かびましたぞ」
シジマ街? 四島街というイメージ。
「……ユイとカルードさんは群島諸国に行ったことはあるのですか?」
ヴィーネが聞いていた。
「ないですよ。ただ、仕事で【シジマ街】にはよく通いましたので、群島諸国から流入してくる人族、亜人、魔人たちから、様々な伝承は聞いたことがあります」
「うん、父さんと同じ。それ関係の人と仕事で関わったから」
ユイは殺し屋としての仕事を少し思い出したのか、気まずそうに話す。
「様々な伝承……」
ヴィーネは興味を持った? 銀彩が少し輝いて見える。
寂しいが……いずれは彼女たちも自分自身の道を見つけるかもしれないな。
さて、ここらで指示を出しておくか。
「それじゃ、開拓の時間といこうか。沸騎士、作業を開始しろ」
「はいっ、お任せを」
「先陣は赤沸アドモスが貰い受ける!」
「ぬ、先駆けか!」
赤沸騎士アドモスと黒沸騎士ゼメタスが競争するように枝を斬りながら進み出す。
「了解、燃え移らないように気を付けないと」
「ん、ぼあぼあに負けていられない」
少し遅れてレベッカが蒼炎弾を連発。
そう語るように、あまり激しく燃えていない蒼炎の弾となっていた。
「その蒼炎は性質を弄れるのか?」
「うん、ある程度は」
へぇ……。
エヴァは紫魔力の円月輪で遠くから複数の枝を斬る。
ヴィーネ、ユイ、カルードも刀剣の斬撃で枝を斬り進み出した。
ミスティはゴーレムを操作して樹木を圧し折る。
「ロロちゃんには負けるけど、この仕事が一番貢献できそう」
確かにゴーレムの鋼鉄パンチは樹木を蹂躙する勢いで薙ぎ倒していた。
神獣ロロディーヌは太い前足から出た爪で薙ぎ払う。
『閣下、わたしも手伝いますか?』
『いや、斬るだけだろうし、いいよ』
『……はい』
元気なく返事をするヘルメ。すまんな。
よーし……ここらで頑張って樹木を削るか。
「皆、俺より前に出るな――これなら、結構、削れるだろ――」
沸騎士を抜き去って先頭に立ったタイミングで、皆へ忠告。
そのまま<闇穿・魔壊槍>を繰り出した。
壊槍グラドパルスが太い樹木たちを幾つも抉り取る。
虚空に穴を空けたように闇ランスは消えていった。
――よし、前方に生えていた樹木がだいぶ削れた。
こうして、全員で邪界に生える自然といえるか分からないが、歪な樹木が多い大自然の一部を破壊しつつ強引に前へ突き進む。
魔宝地図の現場に近づいていくと、だんだんと、獣道らしき土の道が増えてきた。
魔素もあちこちに反応を示す。
「モンスターの反応だ」
「はい、左辺から近付いてきます」
ヴィーネの指摘通り。
巨大猪型のモンスターが出現。
大きい牙だ。
中型の白色の兎を、必死に追い掛けながらこっちに突進してきた。
草原の巨大牛よりは小ぶり。
んだが、大きい牙だけでなく、前足に角ばった角が生えている。
見た目は、異質な巨大猪だ。
観察していると、<ベイカラの瞳>を発動させたユイが前に出た。
ユイの双眸が変化を開始。
黒曜石のような瞳に雪のような白い斑点が無数に出現。
揺らめく銀白色の雪が舞い落ちる幻想的な光芒の瞳となった。
最終的に双眸は、白銀色へと変化を遂げる。
「あれは、わたしが貰うわ」
ユイは右手に握った魔刀の切っ先を標的の巨大猪へ向けている。
左手の拳を腰に差してある、もう一つの魔刀の鯉口辺りにコツンと当ててから、その拳を解きつつ柄巻を握ると、居合の技を行うように、その魔刀を腰から引き抜いた。
同時に、彼女の双眸から白銀色の靄的な魔力が放出。
双眸から出た白銀色の靄の魔力層は両手が握る魔刀と繋がった。
二本の魔刀のすべてを、白銀色の魔力が覆う。
切っ先から迸る白銀色の魔力。
それは、刀身の内側から熱のプラズマ的な白いエネルギーが生み出されているようにも見えた。
その迸った白銀色の魔力は粒子となって宙に散る。
その消え方は、あたかも大気の中へと循環するようで、儚く見えた。
美しい<ベイカラの瞳>の魔力から生み出された白銀色の魔力層と繋がる二本の魔刀。
その魔刀を扱う黒髪の女子高生、いや、女性のユイは純粋に美しい。
「……了解」
俺が見惚れながら発した短い言葉に、ユイは微笑を浮かべながら頷いてくれた。
ユイは巨大猪型モンスターを見据える。
白銀色に輝く二本の魔刀の角度を調整した。
カチャッと金属音と、やや遅れてチャリッとした金属音が二つの魔刀の柄巻から響く。
音が鳴った部分は、ヴァサージの持ち手を覆うトレンチナイフのような部位だろうか。
ユイの前髪が少し揺れる。
白銀色の双眸だが、鋭い視線と分かる。
殺し屋として猛威を振るった<ベイカラの瞳>の能力で巨大猪の姿を赤く縁取ったようだ。
そのユイは足に魔力を溜めた。
瞬間、駆ける――前傾姿勢だ。
爆発的な加速で巨大猪のもとへ突進していく。
巨大猪は白色の兎を喰おうと口を広げている最中だ。
今にも巨大猪に食われそうな白色の兎。
そこでユイの左手が振るった魔刀が巨大猪の口端を捉えた。
口端に刃が引っ掛かったように見えた巨大猪の口は真横に裂かれた。
そのまま強引に巨大猪の口を拡げるように切断。
魔刀を振り抜いたユイは、巨大猪の横を走る。
続けて、ユイの足が少し沈んだかと思った瞬間――。
巨大猪の頭上を越えた。
――左側転のジャンプだ。
同時にユイは下側に二本の魔刀を向けて側転機動に合わせて、振り抜いた。
血飛沫の螺旋が美しい。
巨大猪の頭部をなぞるようにざっくりと切り裂く。
左側に着地した直後も、制動なく、軽業師のような素晴らしい身のこなしで細腕を動かす。
ぶれるような速度で突き出された二刀のスキルと思われる動きから、十字斬りに移行する技を繰り出していた。
巨大猪は頭蓋骨と口が十字架のようにざっくりと切り裂かれる。
巨大猪の大きな頭蓋付近の肉片と脳漿が飛び散った。
頭が無くなった巨大猪は衝撃音を立てながら前のめりで地面に沈んだ。
生き残った白色の兎はユイにお礼をいうように尻尾を揺らす。
ユイの足下を回っては、ピョンッとジャンプしていた。
「……素晴らしい刀の技術。切れ味だ」
「……ありがと。<筆頭従者長>になり、訓練&実戦を経験しているからね」
彼女の美しい<ベイカラの瞳>からくる視線は自信に溢れている。
……<暗刀血殺師>ユイ。
彼女が更に成長し<血魔力>の略して第二関門スキルを獲得したら……。
どんなスキルになるんだろう。興味がある……血刀とか、刀の暗殺系?
略して第三関門は<血液加速>を獲得するだろうし。
まぁ、俺とは違い、魂を直で吸えたり、急激に成長を遂げるスキルはないだろうから……。
第三関門を獲得するのは数十年、数百年後かもしれない。
それに、見た目で分かる訳じゃないからな。
と、思うが、案外……宝箱から出現する守護者級、或いは、迷宮の部屋を守るように出現する守護者級を倒し続けていれば、覚えるのも速くなるのだろうか?
そんな思考を重ねながら口を動かす。
「……<暗刀血殺師>の戦闘職業を得てからも、刀の技術が上がっているように見えた。さっきの技もそうなんだろう?」
「うん。やっぱり分かる? シュウヤの血を受け継いだ時に新しく覚えた<ベイカラの瞳>から派生したスキル<銀靭>を使い<十字斬り>へ応用してみたの」
そんなスキルを覚えていたのか。
「へぇ、あの目から銀色の靄が出ていたのはそのせいか」
「そうみたい。目から白銀色の煙? みたいなのが出ているとは分かるけどね、実感はあまりないのよ。何回もやればもっと上手く操作できると思う――」
ユイは楽し気に魔刀の柄巻を指に挟んでくるっと魔刀を回して器用に扱い、笑顔を浮かべていた。
黒い前髪が揺れて微笑む姿はいつ見ても美しい。
「……そっか、これからの成長を楽しみにしよう」
「わたしも娘に負けていられませんな」
魔剣を掲げ肩に掛けて、ユイの様子を見ていたカルードだ。
父親らしく嬉しそうに微笑んでいた。
やはり、娘の成長は嬉しいらしい。
「あ、大きい魔石が猪の体内に入っているわよ」
レベッカが指摘。
地面に倒れている死骸から宝石のような魔石が姿を覗かせていた。
「俺が回収しとく」
大魔石を回収してから、魔宝地図を確認。
もう少し先かな、森を進む。
19日、22日、0時更新予定です。




