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95話 今章のボスはアメリ……アメリ!? アメリいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?



 頭に、山羊のような二本の角が生えていた。

 黒く染まった肌に、煌々と輝く緋色の瞳。

 腕は肩より先にいくに連れ、肥大化して巨大な鉤爪が。脚もまた同様に。



 脳ですら、破壊衝動への染め変えが終了している事を。

 『分析』の魔法で把握したカラミティスの思考は、後悔の念で満ちあふれた。



(アメリ、アメリ、アメリ、アメリ…………!)



 間違えた。

 怒りに飲まれて、完全に優先順位を間違えていた。



(あんな雑魚に構っている暇なんて無かった、誰の言葉も聞かず、一もニも無く灰燼に化せえばよかったっ!)



 溢れ出す後悔は無限に、怒りは止めどなく。

 だが、懺悔も謝罪も後。



「ユリシーヌ! ガルド! アメリの動きを止めろっ! セーラは離れて待機! 後で当てにしてるっ!」



 アメリが異形に変貌してしまった事態に、誰もが言葉を失い思考を止める中。

 場慣れしたカミラが真っ先に、行動を開始する。

 直後、グルルと呻き声を上げたアメリが、続いてユリシーヌとガルドが反射的に動き出す。



「ユリシーヌ! 聖剣は呼ぶな! カミラの“魔王”が使えなくなるし、アメリにもダメージが大きすぎるっ!」



「言われなくても――――ッ!」



 アメリから距離を取り、拘束魔法を発動しようとする二人に合わせ。

 一番近くに居たカラミティスは、魔力で筋力を底上げし、物理的に捕まえようと手を延ばす。

 魔法を発動するより、コンマ数秒早いからだ。

 だが――――。




「――――いないっ!?」




「いったい何処に――――ぐあっ!?」



 カラミティスの手が空を掴んだ直後、ガルドの前にアメリが出現。

 反応すら出来ずに、ガルドは鉤爪で殴られ東屋から遠くにいたセーラの下まで弾き飛ばされる。



「早い――――ッ!」



(いえ、違う。これは真逆――――!)



 今の攻防に、強化された身体能力“以外”の何かを感じ取ったカラミティスは。

 ユリシーヌへ、オートカウンターの光波防護魔法をかける。

 ――――しかし。



「――――防壁を抜けてッ!? がぁッ!?」



 ユリシーヌの眼前に現れたアメリは、ガルドと同じ様にユリシーヌを殴り飛ばす。



「ユリウスっ!?」



 反射的に意識をユリシーヌに向け、駆け寄ろうとしたカラミティスの眼前に、アメリが突如として出現する。



「同じ手なんて――――っ!」



 攻撃パターンが解っているなら、カミラに対処出来ない事など無い。

 ガツンと拳で迎撃し、同時に拘束魔法を発動。

 人知を越えた一撃に鉤爪は割れ、アメリはよろけて捕縛は完遂されると思われた。



「――――見事、と言っておく」



 だがしかし、またも姿を消したアメリは。

 吹き飛ばされた二人と、カラミティスを繋ぐ三角形の中心まで後退していた。




「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」




「逃げる気は無いという事か…………」



 壊された右の鉤爪が痛むのだろうか。

 風を感じるほどの勢いで咆哮するアメリに、カミラは油断無く構えた。



「まだやれるな二人ともっ! 生きてれば構わん! 手足をもいででも止めろっ!」



「糞っ! 致し方無いっ!」



「すまないアメリ――――ッ!」



 聖剣の代わりに、トーナメントで使った魔銃剣を全員の手元に転送しながら、カラミティスも駆け出す。



(“あれ”は肉体の力じゃない、懐中時計による“時間停止”)



 牽制に放った光弾が、避けもせず命中して霧散する様を見ながら、カラミティスは歯噛みした。



(この分だと拘束魔法も弾かれる! しかも“時間”を“停止”する者を相手に、どう戦えばいい!?)



 並の人間なら認識出来ない速度でガルドが切りかかるも、アメリは受け止め、その豪腕をもって弾き飛ばす。



(“時間停止”を使うまでも無いって事っ!?)



 間髪入れず、背後からユリシーヌが切りかかる。

 だがそれすらも反応し、一瞬で振り向き悠々と受け止めた後、魔銃剣をへし折る。



(――――反応はしていた。けど、振り向くその一瞬、時を止めていた!)



 同じく時間を操る事の出来る、カミラだからこそ正確に把握できた攻防。

 ――――そこに、一筋の光明が見える。



(私の予想が正しいのならば――――っ!)



 カラミティスはガルドより早く加速し、亜音速で突きを繰り出しその肩を穿つ。



「見切った――――!」



 予想の的中に喜びながら、カラミティスは拳を叩き込もうとするが、やはり先程と同じようにアメリの姿が消える。



(やはり、連続で“時間停止”は使えない!)



 更にもう一つ判明した事実がある。

 それは“時間停止”にアメリは“タキオン”を使用していない、という事だ。



(今、アメリの魔力は私とガルドに近いくらい増えている)



 だが、それを魔法に使っていないという事は、筋力の増加と“時間停止”に全て使っている証拠だ。



(魔力は汎用性故に“タキオン”の代わりになる。けれど――――)



 代替物が故に、その効率が悪い。

 回避の一瞬しか使えない事、連続的に使えない事が、それを表している。



(とはいえ、次に使用可能になるまで一秒足らず)



 ならば、――――アメリを止める方法は一つ。



 一度“時間停止”を使わせてから、カミラの支配下に置いた“タキオン”を叩き込み。

 アメリに融合している“銀の懐中時計”――――タイムマシンのコントロールを奪う他無い。



「ユリシーヌっ! ガルドっ! アメリの“時間停止”は不完全だ! 一度“使わせろ”――――!」



「わかったッ!」



「手抜かるなよカラミティス――――!」



 カミラの言葉で、アメリの“絡繰り”を察した二人は、即座に行動を開始。

 またカラミティス自身も、東屋周辺から根こそぎ“タキオン”を集め始める。



「これで終わりにするぞガルドッ!」



「ああっ! 魔法は任せるがよいっ!」



 カラミティスの拳に、通常では不可視の光が集まる。

 だが、カミラと繋がる事で光が、――――“タキオン”が見えるようになったユリウスは。

 それが何かは解らないものの、勝利を確信する。



(あれはきっと、カミラが隠したかった“事”だ。だが、それを惜しげもなく使うと言う事は――――)



 ユリシーヌ/ユリウスは羨望を覚えながら、アメリの気を引くために叫ぶ。



「愛されてるな、アメリいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」



「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」



 アメリは、攻撃の意志を見せるユリシーヌに突進。

 相対するユリウスは、進路上に炎弾の魔法を無数にばら撒き、そして。

 壊れた魔銃剣に必要以上の魔力を込めて投げる、――――目眩ましだ。



 瞬間、炎弾を避けずに直進していたアメリは、その眼前で爆発した魔銃剣によって、反射的に目を瞑ってしまう。



「見逃すまいよっ!」



 ユリシーヌによって生み出された“隙”に、ガルドもきっちり役目を果たす。

 アメリが動きを止めた一瞬、拘束魔法の直撃を成功させたのだ。



「――――ガルドッ!」

「やはり来たか――――っ!」



 だが、いかにガルドの拘束魔法といえど、今のアメリには通じない。

 すぐさま目標をガルドに切り替えたアメリは、“時間停止”を使って接近。

 無事な左の鉤爪で、ガルドを押しつぶそうとして――――刹那、その動きが鈍る。



(読んでいたぞ、アメリ――――っ!)



 そう、ガルドの魔法は二段構え。

 目の前に“五重”の拘束魔法を、置いておいたのだ。



 そしてその、コンマ以下の時間すらあれば――――。




「今、助ける――――――――」




 トン、と軽い音と共に、カラミティスの拳が。

 眩いほどの“タキオン粒子”が叩き込まれ。

 次の瞬間。




「――――え?」




「え、ええっ!? ここは何処なんですか!? わたしはどうなっているんですかカミラ様ぁ!?」



 真っ暗闇の空間に、女子制服姿の“アメリ”と“カミラ”の二人だけが存在していた。



次の更新は9/3(日曜)20:00頃の予定です。


……ぶっちゃけリアルの都合上、土日が一番忙しいので。

遅れたり、次の日にずれ込んだりするかもしれませんが。

その時は、心配してチヤホヤかまってください(直球)

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