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54話 カミラ様は乙女、いや乙女だかんね!?

ようやく戻ってきたぞ日常回!



 あれから一週間。

 トーナメントから数日は騒がしかった学院内だが、カミラやユリシーヌが何も語らなかった為。

 今では何事も無かったかの様に、日常を取り戻してた。


「しかし、本当に魔族が襲ってきたのかと疑いたくなるような平和さですね……」


「案外平和ボケしてるわよね、ウチの生徒も。すぐそこに黒幕がいるっていうのに」


「…………今のは聞かなかった事にしますから、口を噤んで下さいませんか? セーラ様」


 加害者である事実も何処吹く風、洗脳による心神喪失で、かつ、カミラがまたも取りなしたため、セーラは元の自由さを取り戻していた。


「ユリシーヌは女の格好してる割に、キンタマちっさいわねぇ……」


「キンッ――――!? セーラ様ッ!? しーーッ! しーーッ!」


「あははっ、そんなに慌てなくても誰も居ないわよ……くくっ、くすくすくす」


「ううっ、誰か監視変わって下さいよ……」


 ユリシーヌは廊下の壁に、こつんと頭を当てて嘆いた。

 謹慎させて、また同じ事態が起こることを避けるため、彼女には監視が付くことが決定。

 しかし、それが出来る人物はユリシーヌ、アメリ、カミラの三人であり。

 現在はカミラのボイコットにより、実質ユリシーヌ一人である。


「まぁまぁ。アタシはこれ以上何か企むつもりは無いし、安心しなよって。…………それよりアンタ、アタシに付いてて平気なの? ――避けられているんでしょ? カミラに」


 ゴン、と大きな音が廊下に響いた。


「あら、いい音したわね」


「どどどッ! どどどこでそれをッ!?」


「どこでそれをって、今学院で一番ホットな話題じゃない?」


「ほわたぁああああああああああああああああッ!?」


 ユリシーヌが奇声を発し、失意体前屈を披露。

 あれから一週間。

 一週間だ。



 ――ユリシーヌは今、カミラに避けられていた。



「~~~~ッ!? くそう……、あの馬鹿女。何考えているんだ」


「まー、後ろから見てたから知ってるけどさ。ちなみに最初に断られた言い訳は?」


「先生に呼ばれている、と」


 姿勢はそのままに、ぼそっと答えるユリシーヌ。

 その声には怨念が籠もっている。


「んで次は?」


「アメリに用事があるからと」


「アメリに聞いたら無かったのよね、その用事」


「――――ガハァッ!」


「んでその次が、ヴァネッサ、ゼロス王子、さらに次は?」


「………………蝶々」


「ん?」


「あ、蝶々が……なんて言って、どっか行きやがったんだぞあの女ッ!」


「ユリシーヌ、ここ学校よ。ステイステイ」


「人を犬扱いしないでくださいませんかッ!」


「なら、急にあの馬鹿に避けられたくらいで、動揺してるんじゃないの! まったく童貞はこれだから……」


「童貞って言うなッ! 俺……じゃない、私は自分を大切にしているだけですッ!」


「へー。この所毎日靴下の色違うのに?」


「うぐッ!?」


「あの馬鹿女が目に入っただけで、何回荷物を落としたの?」


「ぐはッ!」


「仕舞いには、アメリの髪を、カミラと同じ匂いがするってクンカクンカしてたわよね――――変態」


「…………童貞でいいです」


 とうとう廊下で不貞寝を始めたユリシーヌを一蹴りし、セーラは宣言した。



「安心しなさい女装童貞残念美少年――――我に秘策あり。あのカミラにぎゃふんと言わせられるわ…………のる?」



「――――その話、乗ったッ!」



 飛び上がらんばかりに立ち上がったユリシーヌは、セーラと堅い握手を交わした。




 一方その頃、カミラはサロンにて優雅なティータイムと洒落込んでいた。

 その姿は美しく、静かで穏やか。

 聞きたい事があったアメリも、思わず見とれる。

 ――外面はいいのだこの女。


(あれから一週間余り……“あれ”以降タキオンは使えない…………やはり“魔王”が戻ったからかしらね)


 幸いにも致命傷を負っていた体は、その傷が戻る事は無く、物理現象として定着しているのではとカミラは推測していた。


(ある意味、不幸中の幸いかしら? 考える時間、確証を得る時間を設けると同時に――――)


「ふふっ――――、愉しいわね。ああ、本当に愉しいわ。待っている時間がこんなに愉しいだなんて、知らなかった」


 カミラは今現在、校内で出回る噂に思いを馳せた。

 無論言うまでもない事だが、ユリシーヌがカミラに避けられているという噂の出所はカミラだ。


「ご機嫌がよろしいのは良いですが…………カミラ様、そろそろ噂を流すように言った真意を知りたいです」


 はいっと挙手をしたアメリに、カミラは鷹揚に頷いた。


「――ふむ、そうね。そろそろいいかしら?」


「では、その真意とはっ! 何なのでしょうカミラ様っ!」


「これはね、アメリ。――――恋の極意よ」


「恋の……極意ですか?」


 あ、これ駄目なパターンだと、聞いたことを後悔し始めたアメリだが、実の所、セーラとユリシーヌの企みに荷担しているだけあって、聞かないわけにはいかない。


 そんなアメリの内情など知らず、カミラは胸を張って言う。



「即ち――――押して駄目なら、引いてみろっ!」


「馬鹿なっ! ――あのカミラ様が引くことを覚えた…………そんな馬鹿なっ!」


「――あら? その言いぐさは酷いんじゃないアメリ?」


「だってだって――、いつも押せ押せで、果ては物理的に押し倒すカミラ様がですよ? そんな……引いてみるだなんて、今度はどんな外道な事をユリシーヌ様にするんですか!? ユリシーヌ様は童貞なんですからっ! 今のまま押したら直ぐに押し倒されてくれるのも時間の問題じゃないですか!?」


「…………貴女、ユリシーヌ様の扱いも雑になってない?」


「気のせいです、気のせい。……んで、何でまたそんな理由で避けているんです? 何かくだらない理由があるんでしょうから、とっとと吐いてください」


「やっぱり雑…………! これは真逆、反抗期!」


「阿呆な事言ってないで、早く理由言って下さい敬愛なる美しきカミラ様」


「気のせいだったわ! ―――じゃなくて理由ね、うん」


 そこでカミラは、真面目な顔をした。

 アメリも義務感十割で、ゴクリと唾を飲み雰囲気を作る。



「今明かしましょう…………私はね、何と。――押し倒すより、押し倒されたい派よっ!」



「やっぱりくだらない理由だったあああああああああああああああああああああああああああああああ!」



 ぎゃーすどちくしょー、とアメリは嘆いた。

 解っていたが、面倒くさ過ぎる主人である。


(実はちょっと、セーラの企みに乗るのは気が引けていたんですが、これはちょっと…………)


 普段、迷惑やら心配させてばかりの主に、お灸を据えなければと、アメリは決意した。

 故に、躊躇無く合図を送る。


「――遠慮は入りません! やってくださいユリシーヌ様!」


 瞬間、バンとサロンの扉が開いて、セーラが飛び込んでくる。


「な、何事よ!?」


 え、何? 本当に何事? とカミラは反射的にテラスへ続く大窓へと向かい――――。


(うん? ユリシーヌってアメリは言ったわ。でもセーラしか入ってこない…………ではユリシーヌ様は?)


 カミラは足を止めて首を傾げ――、その一瞬の隙を見逃さなかった。



 ――――がちゃん。



「…………がちゃん? がちゃん? え、あれ? 何で手錠――――」



「――――話は聞かせて貰った。もう逃げられないぞ、……何か言い訳はあるか馬鹿女?」



「ユ、ユリシーヌ様ああああああああああああ!?」


 カミラは酷く狼狽した。

 ユリシーヌの手首と、カミラの手首が手錠で繋がれていたからだ。

 更に、ユリシーヌの怒気に青ざめたカミラは恐る恐る口を開く。



「あー、えー、その…………ユリシーヌ様の、えっち」



「頬を赤くして言うなこの馬鹿女ああああああああああああああああああああ!」



 直後、カミラの脳天に拳骨が振り下ろされた。

 然もあらん。



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うう……、何故か誤字修正する暇がない…

いや、後回しにしてるのが悪いんですが


では、また明日!

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