28話 阿鼻叫喚の始まり
そろそろ、前書きに書くものが無くなってきたぞよ……
現在校庭にて、カミラは自チームである紅組の生徒達前で演説をしていた。
魔法体育祭は現代日本の多くの学校でそうである様に、紅白に別れて競い合う。
いやホント、中世ファンタジーどこいったよ。
カミラの陣営にいる親しい者はアメリ一人。
これは、カミラと言うバランスブレイカーを考慮した高度な政治的判断である。
――判断である!
「――今日は魔法体育祭です」
「皆様は今、様々な噂を聞いていると思います。――正解です。……また、ご両親や想い人に良い所を見せようと奮起している者も多くいると存じ上げております」
「その上で、言わせてもらいましょう――――」
「――――温い」
カミラの言葉を静かに傾聴していた生徒達が、ざわめきだす。
何が言いたいのだ、何を言い出すのだ。
不安と期待が入り交じる中、カミラは魔力を全身から燃え上がらせながら言い放つ。
誰が見ても魔王、贔屓目に見ても覇王である。
「――貴方達が見せるのは、日頃の成長でも、成果でもありません」
「しかしそれは、努力をするな、という事ではありません」
「我らの相手は、ゼロス殿下とヴァネッサ様、その懐刀の三人組、そしてなにより――――ユリシーヌ様がいらっしゃいます。
――――白組、まこと手強い相手です、彼ら相手なら、貴方達も負けても仕方ないと思われるでしょう……でも」
紅組生徒の顔が、戦力格差を突きつけられて挫けそうになる。
カミラは、放出している魔力を紅組全体を包み込むように操作した。
「――――勝利を」
慈母の微笑みに、冷酷なる支配者の眼差しで。
勇者を応援する乙女の様に、反逆の牙を剥く獣の如く。
カミラは自身の感情を魔力に乗せて伝え、鼓舞し扇動する――――!
人はそれを洗脳と言う――!
「……敗北は許しません」
「どんな手を使ってもいい、負けなければ、何をしてもいい」
紅組生徒達の目が、獣のそれとなる。
「――力の足りぬ者は、力ある者の頭脳と成れるよう」
魔力に自身のある者が、カミラの魔力に混ざるように、魔力を放出する。
「――力ある者は、力の足りぬ者の矛と成れるよう」
身体能力に自身のある者が、だん、だんと足踏みで威嚇を始める。
「私は、皆の盾となり旗となり、剣となりましょう」
そして、一際大きい怒号が上がった。
戦力差がどうした、負けてなるものか。
勝利の先には、約束のご褒美が待っている!
「――――我らに、勝利と栄光あれ!」
学院どころか王都全体に響きわたる喊声が響きわたった。
なお、白組はその光景にどん引きしていた。
□
白組どころか、教職員と観戦にきた父母達全員をどん引きさせた後。
カミラは悠々と紅組の席に戻り、アメリと歓談していた。
「いやー、カミラ様。少々やりすぎたんじゃないでしょうか」
「ふふっ、いいのよ。だって冷静に考えてみなさい」
「確かに、良くも悪くもカミラ様が突出している
せいで、こっちの戦力配分が不利になっているとはいえ、ちょっと士気が上がりすぎなんじゃ……」
「アメリ、これはユリシーヌ様との大切な勝負が懸かったものなの。手を抜くなんてありえない。これでも未だ不足なくらいよ」
アメリは周囲を見渡した。
成績で言うとやや下の方にいる紅組生徒達は、俄然張り切って準備運動を始めている。
中には、勝利の為に裏工作までし始めている者もいるくらいだ。
「……これが?」
「アメリは……そうね、チェスは知っていて?」
「まぁ、駒の種類くらいは」
「チェスで例えると、白組はキングとクイーン、ルークとビショップナイトがわんさか居て。対してこちらは私というキングと残りはポーンのみ。アメリはルーク足り得るかもしれないけれど、残念ながらクイーンには足りないわ」
「つまりどう足掻いても、勝利は無理だと?」
「普通ならね」
カミラの腹黒い笑みに、アメリはうへぇと漏らした。
「何いっているんですか。只でさえカミラ様お一人で白組の戦力の数倍はあるのに、こちらのポーンを、一回取られても無効、みたいな強化してどうするんですか……」
「ふふふっ、獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすものよっ!」
「ああ、ユリシーヌ様お可愛そうに…………、その上明日は男としてタッグバトル。ああ、ご愁傷様です」
白組の方を向いて敬礼するアメリに、カミラはデコピンした。
「マイナス5カミラポイント」
「あだっ! ……それまだ続いてんですか?」
「ええ、面白そうだから暫く続けるわ。――ああ、そろそろ時間じゃない? 貴女確か実況を任されたわね、行ってらっしゃいな。此方は大丈夫だから、タイタニックに乗った気でいらっしゃいな」
「タイタニックが何か知りませんが、とんだ泥船ぽいですよカミラ様!?」
やりすぎない様にと釘を差すアメリを見送って、カミラも準備を始めた。
最初にカミラが出る種目は――綱引きだ。
綱引き。
普通ならば、大縄を引っ張りあって勝ち負けを付け競技。
しかし、この魔法体育祭では少々ルールが違っていた。
魔法使用可、『直接』妨害可。
使用される大縄は、魔法を受け付けない特別製。
反則は、精神感応系の魔法の使用と、大怪我をもたらす行為、のみ。
つまり――。
「実質的に、――何をしてもいいと言うことよっ!」
「カミラ様っ! 競技に参加する者全員に、対魔法ゼッケンと筋力強化薬の配布、完了しました!」
「ヌルヌルの特殊な水を出す魔法の呪文部隊、振り分け完了しています!」
「妨害防衛部隊は、全員軽量化のかかったフルプレートへの装備、終わりました!」
「応援団を買収し、イケメンの裸体と、際どい衣装のチアチームを準備、相手の気を逸らす様に配置完了しました! お役立てください!」
次々と入る勝利の布石に、カミラは獰猛に笑って拳を振り上げた。
「我らに、勝利を――――っ!」
「「「「「「我らに、勝利を――――!」」」」」」
紅組の、否、カミラの大人げない蹂躙劇が始まろうとしていた――――!
後書きにも書くこと無くなってきたんですけどぉ?
あ、読んでくださり有難うございます。
ブクマや評価お願いします。
レビューだっていいんだぜ。あーレビュー欲しいなぁ……、一回でいいからレビュー貰って、前書きとかでお礼言いたいなー。
……皆、書いてくれていいんだぜ(とっておきのキメ顔で)
明日も夕方七時に会おう!




