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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第四章

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第九十一話:あの時何が

 ダイニングルームの昼食の席につけるぐらい、私は元気になっていた。


 解毒が終わり、回復のポーションも飲んだからだろう。


 さらに気持ちを盛り立てようと、明るいレモンイエローのドレスを着て、食事の席についた。


 全員が揃うと、レイノルドがおもむろに口を開く。


「ウィリス嬢には食事を摂って欲しいので、最初に自分達が話をさせていただきます。まず、自分から。よろしいでしょうか」


 レイノルドが私とウォーレンを順番に見るが、異論はない。


 二人でほぼ同時に頷き、レイノルドが話を始める。


「これまでは追われるばかりだったキングを追い、まずは身動きを封じるため、手足への攻撃を行いました。それが上手くいったのは間違いなく、ウォーレンさんの匂いを消すポーションのおかげです」


 そこでレイノルドがウォーレンにお辞儀をした。

 ウォーレンは少しどや顔でそれに応じる。


「そこまではうまくいったのですが、キングは魔獣であり、本能で生きる。左目を傷つけられ、手足への攻撃を受けた。敵がいるはずなのに、匂いを感じ取れない。そこでキングはまさに野生の勘で、自分の攻撃を察知するようになったのです」


 レイノルドの攻撃が自身を傷つけると自覚したキングは、防御……回避行動をとるようになった。


「驚いたのは……人間の手法を真似ていたことです」


「それはつまり……?」


 私が問うと、レイノルドはあの時を思い出すように宙を見つめ、そして口を開く。


「キングの足止めのため、落とし穴を掘っていたのですが……。それを真似していたのです」


 これにはビックリ!

 魔獣にも稀に賢いものもいるというが……。


 キッシュを食べる手が、思わず止まってしまった。


「自分の攻撃を回避した上で、落とし穴に落ちるようにまんまと誘導されてしまい……。しかも魔獣が掘る穴。深かったので、地上へ戻るのに難儀しました」


 まさにロッククライミングをするようなもの。

 なんとかレイノルドは、落とし穴から這い出すことになった。


「穴から地上へ戻った時、既にキングの姿もなく……。探し出すのに時間がかかってしまいました。でもようやくキングの姿を見つけた時は……驚きました」


 そこでレイノルドがウォーレンを見る。


 ウォーレンは北東の地から王都へ私達を連れ帰ると、そのままこの屋敷に滞在していた。


 その姿はビスクドールのように可愛らしいので、ミルリアは「ウォーレンお姉さん!」と懐いている。


 こうなるとウォーレンは、私達の前ではずっとこのお嬢さん姿でいるしかないのでは……と思えてしまう。


 ともかくそのウォーレンはシチューを飲む手を止め、レイノルドからバトンタッチで話し始める。


「目覚めたらいきなり見知らぬ男がこちらを覗き込んでいたので、あやうく手に掛けるところでした」


 それはつまり不法入国者の男性のことだ!


「え、その男性は今!?」


 私が尋ねるとレイノルドが答える。


「聞くと隣国で奴隷も同然で働かされており、亡命目的で逃げてきたそうです。ただ身分証もなく、正規ルートでは入国できないと、不法入国を試みたそうで。現在は移民の入国を請け負う国の機関に滞在しています。事情を聞き、仕事の斡旋が行われる予定です。年齢的にいい働き手になるので、きっと仕事は見つかると思います」


 レイノルドの補足を聞いて、安堵する。

 突然現れた時は、悪人かと思ってしまったが、そんなことはなかった。


「ともかくその男が、何者なのか。その時のわたしには分かりません。しかも領主様の姿もない。あやうくその男をどうかしそうになりましたが……。そこは気持ちを落ち着けました」


 ウォーレンが激昂型ではなくて良かったと思う。


「男に問うと、自身の身の上を明かし、ここに来た経緯を話しました。そこから判断するに、領主様はどうやら彼らをキングと勘違いし、小屋から出たのではないか。キングは匂いに敏感です。でも空になった空き瓶を見て、匂いを消すポーションをわたしに使ったのだと、すぐに分かりました。さらに男達が現れた時、わたしはまだ意識がない状態。男達のことをキングだと思っていた領主様は、自身が囮となり、わたしから遠ざけようとしたのだと、すぐに理解できたのです」


 さすが賢者の魔術師だけあった。

 きちんとした説明はないのに、状況からすぐに事態を把握している。


「そこで領主様の居場所をすぐに探り、向かったのですが……」


 ウォーレンはぐっと唇を噛み締めた。

 ギルやミルリアも神妙な表情をしている。

 レイノルドも視線を伏せていた。


「領主様は地面に倒れ、キングが……まさにその大きな口を開き……」


 つまり私はキングに襲われる寸前。


「魔術師の力を以てしても、キングを完全に倒し切ることはできません。そこで氷漬けにしました」


「自分が到着した時、キングは氷の彫像のような状態でした。ですが心臓は動いている。そこで聖剣を使い、とどめをさしました」


 その間、ウォーレンは私の蘇生を試みてくれたわけだ。


「わたしにキングを滅する力があれば、その場で八つ裂きにし、骨まで残らない火力で焼いていたことでしょう」


「ウ、ウォーレンさん、落ち着いてください」


「領主様、なぜ毒を飲んだりしたのですか!」


 ウォーレンは涙ぐみ、ギルやミルリアも心配そうにこちらを見て、レイノルドも苦し気な表情になっている。


 ここは全てを話すしかないだろう。


 そこで私はなぜ毒を飲むに至ったかを、話すことになった。

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