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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第一章

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第七話:帰還

「生きて屋敷へ戻って来てくださいね」


 なんて言葉ではなく「ご武運を願っています」と言えば良かった。「生きて」などという生死を匂わせる言葉ではなく、勝利を願う言葉を掛けていたら……。


 レイノルドは約束通り、屋敷へ帰還してくれた。

 だが、右腕に大怪我を負っていたのだ。


 ◇


 レイノルドが帰還したのは、早朝のことだった。


 私はなかなか帰らないレイノルドを心配し、既に目覚めていたので、スモークブルーのワンピースをちゃんと着ていた。


 そろそろ日の出かと、窓から外を見て、馬に乗ったレイノルドの姿が見えたのだ。そこで急いでエントランスホールへ迎えに行くと……。


「マトリアークはまだ生きていました。でも今度こそ、息の根を止めたので、もう、安ぜ……」


 レイノルドはそこまで告げ、意識を失ってしまう。

 私は慌ててその体を支えた。


 そこに起き出して来たハドソンとマチルダに、レイノルドの傷口の汚れを落とし、清潔にして寝かせるように頼んだ。一方の私自身は、フード付きのマントを羽織り、屋敷を出た。


 乗馬は昔から得意だった。

 男爵令嬢と言えど、ここまでの田舎になると。

 馬ぐらい普通に乗れないと、やっていけない。


「マルグリット、南に向かうわよ」


 愛馬に声を掛け、スピードを上げる。


 マトリアークが出没した村はずれとは、真逆になる場所。


 村の南側のはずれには、魔術師の男が住んでいる。

 変わり者だった。

 しかもいつ会っても同じ姿をしている。

 銀色の長い髪は、顔の半分を隠し、瞳は金色。長身で、黒に近い紫のロングローブを季節問わずに着ている。年齢は不詳だが、見た目だけはいつも二十歳ぐらいに見える。人間と違い、魔術師はその寿命が千年とも万年とも言われていた。


 村人の多くが魔術師とは関わりを持たないが、税金の受け取りのため、一年に一度。ハドソンと私は魔術師の元へ足を運んでいた。その度に魔術師は得体のしれないお茶菓子と飲み物をすすめ、私は辟易しそうになっていたのだ。


 だが税金はきちんと納めてくれるし、何か悪さをするわけではない。村人は「領主様、不気味です。追い出しましょう」と言うが、不気味という理由だけで追い出すこともできなかった。それに父親も「空気みたいにそこにいるんだ。一年に一度税金を納めてもらい、後は気にせず、放置すればいい」と言っていた。


 不気味ではあるが、触らぬ神に祟りなしで放置していたが……。


 レイノルドのあの傷は、魔獣であるマトリアークの牙によるもの。

 つまり傷口から毒が全身に広がりつつある。

 屋敷に残されたレイノルドの持ち物や現在の装備を確認したが、解毒のポーションは見つからない。そうなったらポーションを作ることが出来る魔術師から、分けてもらうしかなかった。


 一体いくら要求されるのか。


 ミルリアのために少しずつ貯めているお金の半分を持参している。

 これで足りるのか。

 いや、なんとしてもこれで用意してもらうしかない。

 後は何かお金以外の要求をしてもらい、それを叶えるしかないだろう。


 お金以外の要求。


 3年前から税金の取り立てで、魔術師の家を尋ねるようになると。

 その金色の瞳が、私に向ける眼差しに、欲求が見え隠れしていた。


 誰も寄せ付けることなく、ひっそり暮らし続けている魔術師でも、男なのだ。

 そちらの欲求がゼロではないのだろう。


 さすがに純潔を、得体の知れない魔術師には捧げたくない。


 でも少し体を触らせるぐらいなら……。


 それで解毒のためのポーションが手に入るなら、ちょっと私が我慢をすれば済む話なのだ。


 そう自分に言い聞かせ、愛馬を走らせる。


 ウィローの木と一体化するように建てられた家。

 それが魔術師の家だ。

 冬の早朝、霧が立ち込める中、その家は幽霊屋敷のように浮かび上がっていた。


 だが煙突からは、既に煙が出ている。


 魔術師は眠らないと噂で聞くが、それが本当に思えてしまう。


「マルグリット、ここで待っていて頂戴」


 魔術師の家から少し離れた場所で愛馬から降り、湿った枯れ葉を踏みしめ、歩き出す。


 そばに沼があるため、冬でもこの辺りはじめじめしていた。


 扉の前に立つと、軒下には鍋がぶら下がっている。

 鍋鐘のルール。

 魔術師も一応守ってくれていた。


 深呼吸を一つすると、扉を叩く。


「おはようございます。魔術師ウォーレンさん。エレナ・ウィリスです。解毒のポーションを分けて欲しく、お邪魔しました」


 一人で魔術師に会いに行くなんて。

 魔術師と言えど、男であることに変わりはなない。

 その男一人の家に、未婚の女性である私が単身乗り込むなんて。


 心臓はドキドキしている。


 だがもしものお金以外の対価を要求された時のことを考えると……。


 一人でいいのだ。これで正解。


 そう自分に言い聞かせたまさにその瞬間。

 木製の扉の金具が、軋むような音を立て、細く開けられる。

 猛禽類を思わせる金色の瞳が見え、私を認識すると――。


 蛇のように細められた。


「これはこれは麗しく若い領主様。おはようございます。さあ、どうぞお入りください」


 ニタリと笑うと魔術師ウォーレンが、家に入るよう、促した。

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