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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第四章

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第六十九話:安堵とドキリ

 お爺さんは、この博物館のぬしと思える程、詳しい。

 いつ、どこの誰がこの品を、何という騎士に渡したのか。


 来歴や年代が分かっているものは、一つ一つ丁寧に説明してくれる。


 その記憶力には脱帽だ。


「こちらのアーモンドの花のような色合いのマント。少し黄ばみもありますが、二百年前に寄贈されたと言われています。寄贈したのは聖女!」


「聖女!」


「ええ。かつてはこの世界にも、聖女が存在していたそうです。もはや伝承の中での存在ですが。そしてこのマントは、魔獣討伐に参加した聖女が、共に戦った騎士達のために縫い上げたと言われています」


 寄贈されたマントは複数枚あった。だがそれらは実際の魔獣討伐で使われた。この博物館に残るのは、この一点のみだと言う。


 パーンは地味だと言っていたが、すごいものがある!


「聖女が作ったマントなら、何かしらの力が込められていそうですね」


「そうですな。でも聖女が失われた今、これは大変貴重ですから。ここにこうやって展示されているのです」


 もし本当に何らかの力が込められているなら、実戦で使ったらいいのに……なんて思ってしまうが。


「そしてこの剣」


 お爺さんが立ち止まり、私を見た。


 ガラスのケース越しに見えるのは、随分と古びた剣だった。鞘やグリップなどに宝石が埋め込まれているが、そちらもかなり傷んでいる。


「これはシスマリーナ聖堂に長らく保管されていました。この剣自体がいつ作られたものなのか。それは定かではありません。ですが大変珍しい剣で、その刃は硬く、貫けぬものはないと言われていたそうです」


 今の状態からは想像できないが、実はかなりの名剣なのかもしれない。


「聖堂のあった村が魔獣に襲われた時、アルセン聖騎士団がいち早く駆けつけ、村を救いました。そこで村長が司祭にも相談し、当時の騎士団の団長カナールにこの剣を捧げたのです。カナール団長は、何度かの魔獣討伐でこの剣を使い、大切にしていたのですが……」


 そこでお爺さんは肩をすくめる。


「いずれかの遠征時に剣を失うことになり、そこから長い年月が経ち、偶然沼地で発見されたのです。というのも柄頭に、カナール団長は自身の名を刻んでいたのですよ。こうして再び騎士団に献上されましたが、このようにボロボロで……。お役目を終えたのだろうと、ここで展示されることになりました」


 こんな感じでお爺さんが説明をしてくれるので、展示品の数としてはそこまで多くないのに、あっという間に三十分が過ぎていた。


 出入口のところまで戻ると、お爺さんはしみじみとこんなことを言う。


「先程、お嬢さんが言っていた通りだと思います。物と言うのは、鑑賞目的で作られたのではないのなら。有用に活用した方がいいと思います。このような年寄りでも、ロッキングチェアで日向ぼっこするより、こうやって説明をさせることで、役に立っているでしょう。使える物は活用する。真の価値を見過ごさないことが、大切と思います」


 お爺さんの最後の話は、深イイ話だった。

 聖女が作ったマント、活用できるなら活用した方がいいと、このお爺さんも感じていると理解できた。

 そしていわゆる箪笥の肥やしはダメよね……としみじみ考えてしまったが。


 再び騎士団本部に戻ると。

 背筋が伸びる。

 ジーク団長に会えるのか。


 ドキドキしながら、まずはパーンの姿を探すが……。


 残念!

 パーンはここにはいないようだ。


 でも通りがかった別の職員に例のメモを見せると……。


「すぐに団長に確認してきますので、そちらのソファに座ってお待ちください!」と言ってもらえた。


 そこでロビーのソファに腰かけ、彼が戻るのを待つ。

 その間にロビーの様子を見ると、やはりバタバタしているのに代わりはない。


 ジーク団長は会ってくれるだろうか。

 いや、私に会う時間はあるのだろうか。


 でも。


 ギルとミルリアとも約束したのだ。


「お姉様、どうしてセドニック様はいなかったの? 王都に戻っていないの? ミルリアはセドニック様に会えないの?」


「姉様、どうしてセドニック様はいなかったのかな? あまりにも人気だから、遠慮して別の門から王都へ入ったのかな?」


「そうね。どうしたのかしら。……騎士団本部に行って聞いてみるわ」


 そう応じた私に二人は「「セドニック様の無事を確認して!」」と声を揃え、「ええ、分かったわ。必ず確認してから戻るわ」と約束していたのだ。


 約束をすることで、強い気持ちを持てたのだ。

 絶対に、レイノルドがどうしているのか、確認すると。


 それでも気を抜くと、強い気持ちより、心配する思いが勝りそうになる。


「お待たせいたしました。十五分でしたらお会いになることができるそうです。この後、宰相との会談もあるので」


 これには安堵とドキリが同時に込み上げる。


 ジーク団長と話せるのは嬉しい。


 でもサイレンジン公爵……。

 公爵は婚約話を断ったレイノルドを、快く思っていなかった。

 さらには今回の魔獣討伐が、失敗に終わればいいと考えていた。

 ところが討伐成功の名目で、騎士団は戻ってきた。

 しかもキング討伐は不要である、四月末には自滅するという情報を得て戻ったのだ。


 公爵としては大いに不満だろう。

 だからレイノルドが王都に戻れないよう、何か画策した……?

 だから隊列に、レイノルドはいなかったの……?

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