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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第四十六話:スミス卿

 爵位を授与され、鉱山を得て、お祝いの料理を食べることもできた。

 まさに心身共に満たされた翌日。


 レイノルドはいつも通り、朝から宮殿の敷地内にある騎士団本部へ向かい、ギルとミルリアは家庭教師と共に勉強。私は午前中、既に受け取っている令嬢の手紙を清書し、午後に代筆依頼の令息と会うことになっていた。


 朝から元気だった私は、春を思わせる、明るいリーフグリーンのドレスに着替える。


 朝食はみんなで賑やかに摂り、そうしていると……なんだか若い夫婦とその子供たち……みたいに思えるのが不思議だ。


 その朝食も終わり、準備が整うと。


 紺色のセットアップ姿のギル、パステルピンクのドレス姿のミルリアと共に、エントランスで隊服姿のレイノルドを見送ることになった。


 すると。


「鉱山の共同経営については、その道に強い人間を手配し、早急に準備を進めます。王家の方で現地調査が済んでいるので、体制を整え、人手さえ集まれば、採掘はスムーズにできるでしょう。それでも一度、現地に足を運んだ方がいいと思います。ですがそれも春を迎えてからでしょう。リンドローグ鉱山は、ウィリス嬢の領地と緯度が同じ。冬の寒さ・厳しさは同等です。五月か六月を目途に現地へ向かい、それまでは手配した人間に、人材集めを進めてもらいましょう」


 昨晩は“お祝い”ということで、とにかく楽しく食べることが中心だった。でもレイノルドはちゃんとその先に向け、動き出してくれる。そこを頼もしく感じると同時に。つい彼に甘えてしまう自分もいる。


 甘えてばかりではダメだろう。


「何か私の方でした方がいいこと、ありますか?」


「そうですね……。リンドローグの地について書かれた本を手に入れ、読んでみるといいかもしれません。採掘について書かれた本は、屋敷の図書室にあるので、それを読むといいかと」


「ありがとうございます! 早速、図書室で借りてみます」


「……勉強熱心ですね……いえ、領主なのですから、必要なことでしたね」


 レイノルドがあの美しい瞳を細め、笑顔になる。


「ねえ、セドニック様。リンドローグ鉱山、見に行くの、私も行ける? セドニック様も一緒に行く?」


 ミルリアがレイノルドを見上げて尋ねた。

 すると彼はミルリアを軽々と抱き上げ、自身と目線の高さを同じにする。


「ミルリア嬢も一緒に見に行きましょう。ギル令息は学校があるので、バカンスシーズンになったら再度足を運ぶといいでしょうね。そして自分は共同経営者ですから、勿論一緒に行きますよ。それに明日は街で観劇する約束でしたよね」


「そう! セドニック様とお姉様を描いた演劇を観るの!」


 レイノルドは、ギルやミルリアとした約束を、ちゃんと覚えて実行してくれる。


 それは当たり前といえば、当たり前かもしれないのだけど。


 貴族は社交辞令が多いし、子供との約束は、口約束にされることも多かった。

 でもレイノルドは違う。

 まるで我が子のように、ギルやミルリアに接してくれて……。


「ではそろそろ行って参ります」


 愛馬にまたがったレイノルドを三人で見送った。


 ◇


 部屋に戻り、清書を始め、三十分も経っていない。

 扉がノックされ、メイドに告げられる。


「スミス卿という騎士の方がいらしています。お約束はしていないそうですが、手紙の代筆を頼みたいと。……お怪我をされており、その怪我について、地方にいる両親に知らせたいそうです。ご自身では手紙を書けないので、ぜひ代筆をお願いしたいと」


 怪我をしている。

 それはつまり急ぎの案件だ。


 清書していた手紙がまさに書き終わったタイミング。

 すぐに従者を呼び、令嬢に届けるように指示を出し、書斎へ向かうと……。


 顔の左半分が包帯でぐるぐる巻き、右手は三角巾で吊るされ、左足も包帯を巻いており、座ったソファのそばには松葉杖。


 これはかなりの怪我をしていると思えた。


「だ、大丈夫ですか、スミス卿。呼んでいただければ、お屋敷まで向かいましたのに」


「いえ、未婚のご令嬢を部屋に呼ぶなど。それに私は騎士団の宿舎暮らしでして」


「それならば、騎士団宿舎のロビーで会うのでも大丈夫でしたのに」


 するとスミス卿は「同僚に手紙の内容を知られるのは恥ずかしくて」と言う。


 両親へ怪我について伝える手紙を送るのではなかったのかしら?と思い、そこを尋ねると……。


「両親と婚約者への手紙をお願いしたくて。両方とも短いので、二通、お願いしてもいいですか?」


「分かりました」


 そこでメイドが私の分のお茶を出し、扉の外で待機するよう伝えると。


「申し訳ないです、ウィリス嬢。少し込み入った話をするので、扉の外で待機は、両親宛の手紙の時からにしてもらえませんか。婚約者宛の手紙は、プライバシーに配慮いただければ……」


 これだけの怪我をしているのに、私を呼びつけることはせず、自ら出向いた。


 余程、聞かれたくない話があるのだろう。


「分かりました」と応じ、メイドにはベルを鳴らし呼ぶことを伝え、別室で待機してもらうことにした。


 「ではお話しください」と告げると、スミス卿は松葉杖を手に立ち上がる。


「ウィリス嬢の近くに行きます。この距離で話すと、廊下に声が漏れそうですから」


 メイドは扉の外で待機しているわけではない。聞き耳を立てているメイドもいないと思う。


 それでも怪我をしているのに、机の横に立とうとするのは……。

 とにかく聞かれたくないということ。


「分かりました。ではこちらの椅子をお使いください」


 この書斎には、脚立代わりに使っていた丸椅子があったので、それを机のそぐ横に置いた。


 「ありがとうございます」と言ったスミス卿は、丸椅子に座るかと思った。

 だが、彼は突然、松葉杖を振り上げ――。

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