第四十五話:順風満帆?
「それではエレナ・ウィリス子爵。そなたには西の地にある、リンドローグ鉱山を、新たな領地として与えよう。鉄鉱石の鉱脈があることが分かっている。王家には書面にある通り、5%を収益分配として納めるように。残りはそなたの采配で、領地経営のために役立てるとよいだろう」
国王陛下からこう言われた時。
ガッツポーズをしたい気持ちでいっぱいだった。
まず鉄鉱石は、これから需要が増える。
そして場合によっては半分の収益分配を求められることもあり、相場は10%。
5%というのは破格!
「ウィリス子爵の元々の領地は、だいぶ土地が痩せている。この度、騎士団の屯所を置くことで、今よりはましになるだろうが……。よくこれまで頑張って来た。ここまで見過ごしてきたこと、申し訳なく思う。リンドローグ鉱山で、潤うことを願っている」
「ありがとうございます、国王陛下!」
やはり今生の国王陛下は賢王だ。
貴族の数は多い。
その一人一人の生活状況まで、国王陛下が詳しく把握など、普通はしない。しても王都にいる有力貴族ぐらいだろう。地方領の男爵なんて……普通なら気にも留めない。
でも今回爵位を授けるにあたり、通常ならさらっと目を通す報告書を、きちんと読んでくれたんだ。
「セドニック副団長の報告書が、読みやすくよくまとっていた。今後は報告書はあのようにまとめるよう、事務方に共有したぐらいだ。……さて。宰相の方から何かあるか?」
レイノルドへの感謝の気持ちが高まったのは、一瞬のこと。宰相から何か言われるのではと、ドキッとすることになり、温かい気持ちは瞬時に吹き飛ぶ。
「陛下から鉱山を賜るなんて、実に光栄なことなんですぞ、ウィリス子爵。最近は爵位を授けられ、褒賞金が与えられても、土地を下賜することは稀なこと。ご自身の領地経営に力をもっといれても、いいかもしれませんな。もうすぐ春。北の地でも過ごしやすいでしょう」
これには……ああ、やはりと思う。
レイノルドの屋敷に私がいること。
宰相は気に食わないと思っている。
ハッキリと言うことはない。
でも遠まわしで言われている。
王都ではなく、領地へ戻れ――ということだ。
でもこれに対して反論なんてできない。
「本当にありがたく思っています。アドバイス、ありがとうございました」
こうして国王陛下との謁見は、宰相のせいでヒヤリとしたが、無事終わった。
レイノルドはまだ待機部屋にいると思うので、そちらへ戻ろうとしたが――。
「陛下は、セドニック副団長が待機部屋にいることを知り、彼とも会おうとなりました。ゆえに待機部屋に戻られても、セドニック副団長はいらっしゃいません。このままエントランスまで、お見送りしましょうか」
鉱山を賜ることになったこと。
真っ先にレイノルドに伝えたかったが……。
仕方ない。
こうして私は宮殿から屋敷へ一人、戻ることになる。
屋敷に戻ると丁度よくティータイムの時間だった。そこでレイノルドより一足先に、ギルとミルリアにすべて報告できた。
ミルリアは鉱山を賜ると、何がすごいのか理解できていないので、そこから説明することになったが……。そこはギルがしてくれた。
その口ぶりからするに、ギルは領地経営について、かなり深く学ぶことができているようだ。王都で雇った家庭教師のおかげだと思うし、この春から、ギルは無事進学が決まっている。
そう、そうなのだ。
既にレイノルドが動いてくれて、ギルは特待生制度を使い、アルセン王国高等学院へ入学することが決まっている。提出した作文と推薦状から、入学を許可されたのだ。
アルセン聖騎士団の団長と副団長が推薦状を書き、レイノルドが窓口となり、動いてくれた。そのことが功を成したとしか思えない。
ちなみにアルセン王国高等学院は、制服がなかった。男女共に、上衣として濃紺のブレザー、冬は黒のコートを着用すれば、あとは自由だった。
ブレザーはオーダーした服の中に含まれているため、問題なし。教科書などの指定図書の手配も終わっていた。
思わずギルの入学準備に思いを馳せてしまったが。
そのギルは、ミルリアへの鉱山の説明をまさに終えたところだった。
「……だから鉱山を賜れば、鉄鉱石が採掘される限り、富を得ることになるんだ」
「すごいわ! そうしたら領地へ戻ったら、ここみたいなお屋敷に住めるかしら?」
「ミルリア。確かにセドニック様のお屋敷は立派だよね。ずっとこんなお屋敷に住めたら……と思うかもしれない。でも贅沢ばかり考えちゃダメだよ、ミルリア。豪華な暮らしをする前に、領民のみんなのことも考えないと」
「あ、そうか。みんなにも白パン、食べさせてあげたいわ」とミルリアも笑顔になる。
この二人の会話を聞いた私は、胸が熱くなっていた。
ギルが爵位を継いだらウィリス領は安泰だ。ギルは領民から慕われる領主に間違いなくなれる。
「お坊ちゃま、お嬢様。そろそろお茶の時間は終わりです。レッスンを再開しましょう」
メイドが声を掛けてくれた。
ここから夕食まで、二人ともピアノのレッスンになる。
ギルとミルリアが部屋を出て行く際。
とてもいい香りが一瞬した。
夕食の準備がそろそろ始まっているのかしら?
メイドに聞くと、レイノルドの指示で、子豚の丸焼きの準備が進められているという。
領地と違い、王都で食べる肉は、家畜である牛・豚・鶏が主流。その中で子豚の丸焼きは、祝祭日で用意される特別なもの。
「ウィリス子爵令嬢の、領地授与のお祝いのために、用意すると聞いていますよ」
これまたレイノルドの采配と分かり、胸が熱くなる。
この日の夜。
ギルとミルリアは、豚の丸焼き料理を見ると……。
最初はビックリ。
「絵本で見たチキンと豚の丸焼き。それとそっくりだわ!」とミルリア。
「すごいな。初めて本物を見た」とギル。
驚きながらも料理を口にすると、感動しきりだった。
私も豚の丸焼きなんて初めてだったので、ギルとミルリアと同じように、驚きでいっぱいだった。でもさすがに沢山の使用人もいる中、二人のようにビックリはできない。その代わりで今の状況について、しみじみと考えた。
いろいろなことがいい方向に動きだしている。
未来は明るい。
風向きは順調だと思っていたら……。
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『宿敵の純潔を奪いました』
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「殿下の純潔は私が奪います」
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