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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第四十一話:荒くれ者

「ウィリス嬢、よろしくお願いします!」


 代筆を依頼した赤毛にそばかすの彼は、昨年の春に正式な騎士となり、例のダークウッド連山の魔獣討伐にも参加していた。ウィリス領でも見かけ、覚えていたのは。燃えるような赤毛であることに加え、元気もよく声も大きいからだ。


「エール卿は本当にいつも元気いっぱいですね。口調もハキハキとして、声も大きい。卿のことは一度会ったらみんな、忘れないと思います」


「! それもこれも全て、セドニック副団長のおかげです!」


「そうなのですか?」


 私は書斎の机に座り、エール卿はソファセットのソファに座っていた。


 サファイアブルーの隊服をビシッと着こなし、背筋をピンと伸ばしている。


「自分は地方に領地を持つエール男爵家の三男。家出も同然で、王都へやって来たのです」


 三男だったエール卿は、爵位を継げないことが確定していた。ゆえに子供の頃から「やがて家を出ることになるのだから、しっかり勉強しろ」と両親から言われ続けていたという。


「ただ、自分、勉強は得意ではなくて……。赤点をとり、父親からはよく怒られていました。母親は、いつも泣いている自分に、こっそり砂糖菓子をくれて『ディオン、元気を出しなさい。あなたはやればできる子なんだから』と慰めてくれたんです。そんな母親に自分は『だったら爵位を俺にくれよ』と無茶を言って困らせて……」


 エール卿は勉強は苦手だったが、運動は得意。体力もあり、力持ち。そこを見込んだのは、領地にいる荒くれ者。領民を脅して小銭を奪い、酒代を踏み倒すような小悪党とつるむようになる。


「荒くれ者ですが、自分のことを認めてくれたんです。『勉強ができなくても関係ない。お前は仲間だからな』って。でもそれは後からセドニック副団長に言われ、気付きました。彼らは自分を仲間となんて思っていない。口先だったのだと。うまく自分を使うために、自分が喜びそうなことを、口にしていただけでした」


 でも当時のエール卿は、その事実に気付かない。自分を認めてくれる荒くれ者の、言いなり状態だった。


 だが……。


「小悪党だったのに。ある日町で唯一の銀行へ、強盗に入るという大きな計画を立て始めて……。その銀行、領主である父親も経営に関わっていたんですよ。さすがにその強盗計画に関わるのはまずいと思い……」


 だからといって仲間である荒くれ者達を、裏切ることはできない。だが父親に、この強盗計画を、報告するつもりもなかった。


 どっちつかずでいるが、計画はどんどん具体的になっていく。


「今回はでかい山になる。死人が……出るかもしれない」


 そうボスに言われたエール卿は、怖くなった。

 でも今更抜けるとも言いにくい。

 かと言って父親に助けを求めたくなかった。


「それで家を飛び出し、汽車に飛び乗り、王都へ向かい……。王都は領地に比べ、ありとあらゆる物があり、人も多く、驚きました。でもワクワクもしたんです。ここでなら、自分は何でもできると」


 確かに王都には何でもある。

 ただ王都の住人になるには……お金が必要だった。


「王都にはありとあらゆる物がある。でもそれを手に入れるためにはお金が必要。そのお金は湯水のように次々と消えて行く。……結局自分は、領地にいた荒くれ者達と同じです。腕っぷしの強さを武器に、王都民を脅し、お金を手に入れて……」


 王都には王都警備隊という組織があり、前世の警察に当たる組織があった。警備隊は王都の治安を維持する活動をしていた。彼らにエール卿は、目をつけられる。


 ところがエール卿は、その腕っぷしの強さで、警備隊の隊員を次々と倒してしまう。


「そんなある日。身なりの良さそうな貴族の令息を見つけ、財布を盗んでやろうとしたら……呆気なく制圧されました。それが……セドニック副団長。当時はまだ上級指揮官でしたが、捕らえた自分が腹を空かせていると知ると……。ご飯を食べさせてくれました」


 そこで身の上話を聞いたレイノルドは、エール卿にこう言ったという。


「それだけの腕があるなら、罪のない王都民をいじめるのに使うのではなく、魔獣討伐に役立てるといい──そう言ってくれたんです。そして身元引受人にセドニック副団長がなってくれて、自分は騎士見習いになることができました」


 そこからのエール卿は、まさに水を得た魚。


 先輩からの厳しい指導で性根を鍛えられ、さらに武術の腕をあげていく。


 あっという間に従騎士になり、そこからはもうその武術の腕が認められ、異例のスピードで騎士に叙任された。そして今回、魔獣討伐で大活躍し、階級も上がった。


 次に活躍すれば、上級副指揮官になれるかもしれないという。


「ずっと領地にいる両親とは、音信不通でした。でも今回まとまった褒賞金も手に入った。仕送りをしようと思うんです。それで手紙を……と思ったけど、何を書いていいか分からなくて。というか、書くことなんてそんなにないから……。それに自分、読み書きは得意ではないので……」

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