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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第四十話:その姿はまるで……

 令嬢姿のウォーレンは、出されたスイーツを綺麗に平らげると、きちんと屋敷の門から帰って行った。つまりレイノルドの屋敷がある敷地内では、魔術を行使しなかった。誰にも見られない場所で魔術を使い、自分の家まで戻るのだろう。


 何かと気遣いができるウォーレンは帰り際、ある物を私に手渡す。


「これは一見するとただの碧いガラスの小鳥で、オブジェに見えますよね。でもこれには魔術が込められています」


「つまり魔術アイテムなんですね」


「はい。領主様を認識するようになっています。顔を近づけ、息がこの小鳥にかかるようにして、わたしに伝えたいことを話してください。話を終えたら、背中を三回優しく撫でる。そうすると小鳥は生きているように飛び立ち、わたしのところへ飛んできます。これでいつでもわたしと連絡がとれますよ」


 この世界にスマホはなく、メールもメッセージアプリもない。


 郵便はあるが、王都からウィリス領まで手紙を届けるには、とにかく時間がかかる。早馬もあるが、結局、汽車が走るような長距離ではあまり意味がない。


 汽車が走っていないような場所、短距離であれば俄然早馬ではあるが……。


 ということでこの魔術アイテムは、実に便利だった。


「こういうアイテムが大量に出回ったら、私の始めた代筆業は廃業ね」


「それはないですよ、領主様。そもそも魔術師なんて数が少ないです。それに魔術師の腕次第なんですよ、こういう魔術アイテムの質や量は。わたしのそれはたっぷりの魔術が込められているので、王都との往復も問題ないですし、耐用回数も相当です」


「それってつまり……ウォーレンさんが優秀ということよね? それに私が領主だから、特別に渡してくれたのかしら?」


 ウォーレンは可愛い令嬢姿なのに、ドヤ顔になる。


「まあ、そう思っていただければ。わたしは、ハイ。優秀ですからね。それに領主様はわたしの雇い主ですから、特別です」


「ありがとうございます、ウォーレンさん。髪を切るぐらいで呼ぶのに使うのでは、申し訳ないけれど」


「べ、別にいいんですよ、領主様。髪を切る以外の用事で呼んでくださっても」


 もじもじする令嬢姿のはウォーレンは、やはり愛らしい。


「髪を切る以外の相談事も、していいのかしら?」


「相談内容と、何のお菓子をくれるかによりますが……」


 やはりそこはお金ではなく、お菓子でいいんだ。


「分かったわ。その時はウォーレンさんが喜びそうなお菓子を用意するわね」


 これにはウォーレン令嬢の目が、キラキラと輝く。

 その目がキラキラの状態で屋敷を去ったのだから、メイド達は……。


「なんて愛らしいご令嬢でしょう」


 完全に私を訪ねてきたのは、銀髪の可愛らしいご令嬢となっている。レイノルドもこれで変に心配しないで済むだろう。


 未婚の令嬢の元に、わざわざ領地から令息が訪ねてきたとなれば、何事!?と思われかねない。でもそうはならずに済んだ。


 ウォーレンが帰った後。

 届けられた代筆業の依頼の手紙に、返事を書いた。具体的に訪問希望日を書いて来た令息には、その日時での面談を返信。そうではない令息には、希望日を尋ねる手紙を書くことになった。


 するとこの日の勉強を終えたギルとミルリアが、私の部屋にやって来た。手紙を書く私に今日の勉強について話し、その後は二人でダンスの練習をしている。


 ミルリアが練習したいとせがみ、ギルが「ええ、ダンス!?」と言いつつも、応じた形だ。なんだかんだで二人はとても仲が良かった。


 こうしてこの日は、夜勤でレイノルドは不在だったが、問題なくギルとミルリアと夕食をとり、休むことができた。


 レイノルドがいないと、寂しい気持ちにはなる。それでもこれまでは、この三人で食事をしていたのだ──そんな風に自分自身に言い聞かせ、過ごすことになる。


 そして翌朝。


 夜勤明けで帰宅したレイノルドは、疲れて眠いだろうに、朝食の席に顔を見せた。


 朝から元気いっぱいのミルリアの話に応じ、ギルとは夕方、剣術の練習をしようと約束している。


 その姿は実に甲斐甲斐しく、なんだか子煩悩なパパみたいだ。


「さすがにいろいろと疲れたので、もう休もうと思いますが、何か困ったことや心配事はないですか?」


 朝食を終え、自室に戻る前に。

 私のことまで気遣ってくれた。


 それは子煩悩なパパからの延長で、多忙ながら妻を気遣う愛妻家に見える。


 本当に。


 レイノルドは良き夫であり、良き父親になりそうだった。


 そんな微笑ましい気持ちになりながら、彼が安心できるよう、現状を伝える。


「特に問題はありません。今日は午前中と午後に代筆業の依頼がはいっていますが、騎士の方が中心。いつも通りかと思いますので」


「なるほど。それならば安心です。爵位に関する書簡は昨日提出したので、近日中に宮廷へ向かう日が決まるでしょう。なるべく自分も同行できるようにします。とはいえ謁見の場で、ウィリス嬢が何かする必要は、基本的にありません。構える必要はないと思います」


「分かりました。私は大丈夫ですので、セドニック副団長はゆっくりお休みください」


 改めてそう伝えると、レイノルドは肩の力を抜き、ふわっと柔らかい笑みを浮かべる。


「心配いただき恐縮です。……夜勤自体は魔獣討伐に比べると、大したものではなく。むしろ……」


 そこで何か言い掛けたが、レイノルドはなぜか言葉を呑み込んでしまう。


「ともかく自分も問題ないです。代筆を依頼する騎士に、悪さをするような者はいないと思います。ですが何かあれば、自分のことは遠慮せずに起こしてください」


 そう言うとレイノルドは、自室へ引き上げる。


 ギルとミルリアが家庭教師に勉強を習っている間、代筆業を依頼したいという騎士が、屋敷へやって来た。

お読みいただき、ありがとうございます!

【お知らせ】新作スタート

『陛下は悪役令嬢をご所望です』

https://book1.adouzi.eu.org/n0021jx/


「……君との婚約は破棄させてもらう! ここにいる男爵令嬢を君は深く傷つけた!」

婚約破棄された悪役令嬢に、取引を持ち掛けたのは、血塗られた玉座に君臨する王だった――。

前世知識と機転で、困難を乗り越える私だけど、恋心には鈍感です!?


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初日は増量更新です。

ぜひお楽しみください☆彡

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