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ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
第二章

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第三十九話:ご令嬢!?

 宰相から呼び出しを受けているというレイノルドは、通常の夜勤の時間より早く、屋敷を出るという。さらにその際、私が勅使から受け取り、サインをした書簡。これを宮殿へ持って行ってくれることになった。


 レイノルドを見送ると、まるで入れ替わるように、訪問者がやって来た。


「ウォーレンという名の、銀髪のご令嬢です。ウィリス領から来たと本人は言っていますが、お通ししますか?」


 自室へ戻り、お茶を飲み、一息ついていた私は。

 そのお茶をあやうく吹き出すところだった。


 ウォーレンという名の銀髪のご令嬢!?

 ウィリス領から来た!?


 それはどう考えても、魔術師ウォーレンだろう。


 まさかの女装をしているの!?


「知り合いです。応接室へ通していただけますか?」

「かしこまりました」


 こうして応接室へ向かうと――。


 驚いた。


 ウォーレンは女装などではない。

 完全にウォーレンという名の銀髪のご令嬢になっていた。


 しかも胸は大きく、ウエストはくびれ、手足はほっそり。


 思わず私が羨むようなスタイルの良さ。


「領主様!」


 声と笑顔まで可愛らしい。


「魔術ですか?」


「あ、はい! さすがに侯爵家の屋敷に男性の姿で乗り込んでも、門前払いされそうだったので」


 ニコリと笑うその姿は、完全にウォーレン()だ。


「魔術を使うなら私の部屋に、直接来てもよかったのに」


「え、領主様は大胆ですね。これでも一応、わたしは人間の分類では男なんですよ。それなのにいきなり自室へ来ていいと言い出すとは!」


「その姿で男です!と言われても……その姿でなら、部屋に直接現れてもいいですよ。部屋にいる間、途中で魔術師ウォーレンに戻るのは、禁止ですが」


 そう伝えると「分かりました~! 領主様!」と応じる。


 完全に話し方も女子なので、本当にウォーレンなのかと思えてしまう。


 ひとまずソファに座るように伝え、訪問理由を尋ねると……。


「だって昨晩はちゃんと、さよならも言わずに別れたじゃないですか!」


 魔術師ウォーレンは、律儀だった。


「それは……そうですね。あ、それでサイレンジン公爵令嬢は?」


「ちゃんと控え室に送り届け、ドレスはさりげなくアルコール臭を消し、乾いた状態にしておきました。別室に侍女もいるということだったので、呼びに行き、その後は……まあ、着替えて屋敷へ戻ったのではないですかね」


 サイレンジン公爵令嬢のドレスが元通りになっていたことに、一安心する。


「結局領主様も帰ってしまったし、そうなったら宮殿にいる理由もないので、わたしも家へ戻りました」


「なるほど。ありがとう……公爵令嬢は何か言っていたかしら?」


 するとウォーレンは肩をすくめる。

 可愛らしい令嬢姿で。


「わたしと同じことを言っていましたよ」

「え……?」

「領主様がお人好しだと」


 これには「あー」だった。


「とりあえず公爵令嬢は大丈夫そうね」


「そうだと思いますよ。わたしが控え室に送り届ける間も『お父様に言いつけて、あの偽皇太子を……』と何だか怖いことも言っていましたから」


 これには苦笑するしかない。


 でも確かにあの令息は悪さをしたから、罰せられても仕方ないと思う。


 ただ、公爵令嬢が襲われ掛けたなんてなると、スキャンダルだ。


 裏で手を回され……だろう。


「でも本当に助けて正解だったのですか、領主様」


 ウォーレンは両手をソファにつき、口をすぼめ、なんだか不服そうな顔をしている。


「えーと、それはどういうことかしら?」


「だって侯爵は、騎士団の副団長に任命されたのですよね? そして国の英雄と、今朝の新聞でも大々的に取り上げられています。しかも容姿もいい。そうなると国中の令嬢が、夢中になりますよね」


「まさにその通りよ。山のように求婚状が届いているわ」


 するとウォーレンは「やっぱり」という顔をして、話を続ける。


「山のような求婚状を退けるのに、公爵令嬢は効果てきめんですよね」


「!」


「サイレンジン公爵令嬢は、宰相の娘。彼女と婚約する……となれば、他の貴族は悔しいでしょうが、黙るしかない。逆にそれ以外ですと、他の貴族の求婚熱を、収拾できないと思います。今頃副団長は宮殿で宰相に呼び出され、『娘と婚約するように』と説得されているのでは?」


 ああ、なるほど。


 でも確かにサイレンジン公爵令嬢が、婚約者の座に収まるなら、他の令嬢はどんなに悔しくても、何も言えないだろう。


 私だって敵に回したら、面倒で怖いと実感している。これは何も私だけではなく、求婚状を送った令嬢達も、同じだと思う。それに令嬢達の両親も。公爵であり、宰相であるサイレンジンに、目をつけられたくないはず。


 もしも昨晩。


 偽皇太子からサイレンジン公爵令嬢が、辱めを受けていたら……。レイノルドと婚約なんて、無理だろう。王侯貴族は婚姻時の令嬢の純潔を重視するためだ。


「ほら。やっぱり。あの時、助けなければ良かったのでは?」


「そんなことはないわ。あの偽皇太子は女の敵。だから公爵令嬢を助けたのは正解よ。間違いなんかではないわ。それにサイレンジン公爵令嬢とセドニック副団長が婚約しても……。公爵令嬢の性格にやや難ありだろうけど、家同士の利害関係では、何も問題はないはずよ」


 私の答えを聞いたウォーレンは、愛らしい令嬢の姿をしているのに、目を剥いている。


「本当に領主様はお人好しです。そして鈍感。後で激しく後悔しますよ」

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