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異世界の乙女たちは、社長と一緒に笑っていたい  作者: まあく
第二章 栗色の髪の少女
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相談

 次の日ミナセは、リリアのことをマークに相談した。自分には何もしてやれないし、マークにだって何かができるとは思えなかったが、一人で抱えるにはあまりにもつらい出来事だった。


 リリアの両親のこと、借金のこと、そして、どうしても欲しいと言っていたペンダントのこと。

 話を聞き終えたマークは、腕を組んでしばらく考え込んでいたが、おもむろにミナセに質問を始めた。


「リリアの実家があったのは、この町の北側って言ってましたっけ?」

「はい。尾長鶏亭から、町の中心にある教会までの距離と同じくらい北に向かったところだそうです」


「その場所で、ずっとリリアは暮らしていたんですよね?」

「火事で焼けたお店を再建する間はともかく、生まれてから十才まではそこにいたんだと思います」


「リリアには、尾長鶏亭の夫婦以外に親戚はいないんですか?」

「たしか、父方も母方も皆さん亡くなっていると言っていました」

「なるほど」


 ひとしきり質問をすると、またしばらく黙り込み、そして真顔で言った。


「リリアといろんな話をしてくれていたんですね。ミナセさん、ありがとうございます」

「あ、いえ」


 急にお礼を言われて、ミナセはうまく反応できない。

 その時、マークが急に立ち上がった。


「ちょっと出てきます」

「えっ?」


 ミナセも慌てて立ち上がる。

 だが、マークはミナセを見ることもなく、足早に玄関へと向かっていった。


「あの、どちらへ」


 マークを視線で追い掛けることしかできないミナセを、扉を開けたマークが少しだけ振り向く。


「俺は、リリアからたくさんの元気をもらいました。あの子には幸せになってほしいと、心から思っています。だから俺は、俺にできることをしてみます」


 チラリと見えたその顔には、微笑み。呆然とするミナセとその微笑みを残して、マークは事務所を出て行った。

 パタリと扉が閉まる。立ち尽くしていたミナセは、やがて力が抜けたようにストンと腰を下ろして、大きく息を吐き出した。


「社長って、ほんとに分からない」


 でも。


「何となく、何とかしてくれそうな気がするのは、期待し過ぎなのかな」


 さっきより楽に呼吸ができていることに気付いたミナセは、玄関を見つめながら、小さく微笑んだ。


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