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カルミナント~魔法世界は銃社会~  作者: 不和焙
第二章 アンブロシウスの守護者

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第二十四話 並行眼

 ――カフェ――


 アランたちの事情を一通り聞き終わると、

 今度は朝霧たちのこれまでの行動を辿った。


「……事件巻き込まれすぎじゃね?」


「話しているうちにそんな気がしてきた。」


「しっかし……カジノねぇ。」


 話はカジノホテルの件に移る。

 元領主邸に元領主の弟。確定では無いが、

 アンブロシウスの守護者の手がかりとなり得る。

 彼女から襲撃を受けたアランらにとっても、

 そのカジノでの情報収集は望まれる物だった。


「朝霧さん! 朝霧さん!

 ドレスってこれから買うんですよね!」


「そうだよ。一緒に行こっか!」


「いいんですか!? ぜひご一緒します!」


(ダメって言われてもついて行きそうだな……)


 同期の顔を眺めながらアランはそう思う。

 すると、息巻くアリスを宥めるように

 フィオナが口を開くのだった。


「まぁ買い物は少し後でも問題無いだろう。

 それより、夜までどう時間を使うかだが……」


 乗り込むべき夜の部はまだまだ先、

 それまでの間、可能な限り出来る事をこなしたい。

 朝霧とフィオナには共通してその思いがあった。


「なるほど……朝霧さんはどこか行きたい場所あります?」


「守護者についての情報収集はカジノでもやるし……

 かといって魔王軍関係だと手がかりとか無いし……」


 うーん、と腕を組んで頭を悩ます。

 他にあるとするならば、ニック周りの情報収集か

 本来の目的であった父親探しくらいである。


(あれ……? そういえば……)


 朝霧はふと初日の会話を思い出した。

 ニックに人探しの話をした時の事だ。

 彼はそのとき……こう答えていた。


 ――もしかしたら、探せる人を知っているかもよ。


「……占い師!」


 朝霧は思いついた単語を口に出した。

 突然声を発した彼女に仲間たちはギョっとする。


「占い? 悩み事か? 相談乗るぞ?」


「違うの、アラン!

 この街にいるっていう占い師に会ってみたいの!

 その人は……人探しが出来るかもしれないって!」


「占い師……? この人ですかね?」


 そう言うとアリスはガイドブックを広げる。

 そこにはコラムとして細々と占い師の記述があった。


「『貴方の探しものは此処にある。

 アンブロシウス随一の占い師、カロ様』?」


「ここで時間を浪費するよりはずっと良い。

 まずはその、占い師に会ってみるとしよう。」




 ――三日目・午後――


 アンブロシウスでも一際商店の並ぶ一角。

 いわゆる繁華街と呼ばれる区域に朝霧たちはいた。


「アンブロシウスだけでは無く、

 魔法世界において占い師はかなりメジャーな職だ。

 なにせ、魔法の要素を持たない偽物がいないからな。」


 アリスたちに先頭を任せ、

 フィオナは朝霧に対して魔法世界の知識を話す。


「占いって、正に魔法と関わりの深い仕事だもんね。」


 納得するように朝霧はその話に聞き入った。

 するとフィオナは少し寂しそうに付け加える。


「それと……戦争の後というのもかなり大きい。」


「?」


「先の戦争の後、魔法世界で急激に流行った物がある。

 それが……『宗教』と『薬物』。そして『占い』だ。」


 宗教、薬物、占い。

 これら三つの単語から朝霧は共通点を導き出した。

 どれも……当人が救いを求めて手をのばす物だ。


「それだけ……凄惨な戦争だったんだ……」


「私はまだ封魔局員じゃ無かったから知らないが、

 参加した先輩隊員たちは皆、そう言うな。」


「――朝霧さーん! フィオナさーん!

 目的地っぽい所を発見しましたよー!」


 前方からアリスの快活な声が聞こえてきた。

 するとフィオナは警告するように口を開く。


「救いを求める者たちを、救うかどうかは彼ら次第。

 戦争後、占い師の中には相手を扇動し

 自らの私腹を肥やすために利用する者もいた。」


「つまり……信じ過ぎるな、ってことね?」


 コクリとフィオナは頷いた。

 そして、朝霧たちは占い師のいる一角へと向かう。



 ――――


 繁華街の一部。大きな商業施設の一角にて

 朝霧たちの目的の占い師は営業していた。

 病的なまでに白い髪と白い肌。そして灰色の煤けた服。

 足が悪いのだろうか、座っているのは車椅子だった。

 さらにその机の上にはティーカップが置いてある。


「まぁ、……若いお客さんは久しぶりですね。」


 だがその占い師は決して年寄りなどでは無かった。

 肌にはしっかりハリがあり、声色も若い。

 実年齢はともかく、見た目は若い女性だった。


(なんだか凄く……歪な感じ……)


「大勢で失礼。私たちは占いをして欲しいのです。」


「礼儀のなったお嬢さんだ。ワタシは好きですよ。

 ワタシの事は……カロ、とお呼びください。

 ではこちらがメニュー表になります。」


 そう言うとカロは年季の入った紙を見せた。

 朝霧たちはメニュー表?、と首を傾げながら覗き込む。


 〜〜〜〜〜〜〜並行世界占い・コース〜〜〜〜〜〜〜


 ①コース名『地続き』 お一人様、十回まで

 ・隣の世界を視るコース。現実とほぼ同じ。


 ②コース名『対岸』  お一人様、五回まで

 ・少し遠めの世界を視るコース。現実と大きく乖離(かいり)


 ③コース名『異界』  お一人様、三回まで

 ・全く別の世界を視るコース。現実とは無縁。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 気になる言葉が幾つか読み取れた。

 その中でも特に気になる単語を朝霧は口に出す。


()()()()()()……?」


「――ワタシの祝福『並行眼(パラレルアイ)』による並行世界の観測。

 もしもあのときこうしていたら、の結果が視える。

 それがワタシの占いスタイルです。」


 カロは声高に説明を開始した。

 曰く、この世には無数の並行世界が存在している。

 Aを選択した場合、Bを選択した場合。

 そんな個々人の安易な選択肢の数だけ生まれて来る。


 また、並行世界の間には『距離』が存在しているという。


 ほとんど結果の変わらない分岐。

 あるいは同じ結末となってしまった世界。

 それらは『距離』が近しく、環境、歴史、文化は勿論、

 そこに住まう人間とその関係性までほぼ同じとなる。


 逆に大きな決断、大きな分岐が発生すれば

 それだけ結末は変化を見せ世界の在り方を変えてしまう。

 並行世界で誰かが死亡すれば、その人物が生み出した

 歴史、文化は勿論のこと、子孫の存在も無くなる。


 即ち、『距離』が遠ければ遠いほど、

 今ある世界とかけ離れた並行世界になるという事だ。


「だから……大体のお客さんは

 一番近い『地続き』のコースを選んで行きますよ?

 あのときの決断は正しかったのか、ってね。」


 朝霧たちは顔を見合わせる。

 並行世界占い。予想外の手段に困惑しているのだ。

 すると戸惑う朝霧を気遣ってか単純に興味を持ったか、

 アリスが手を上げ一番手を名乗り出た。


「はいはーい! 私がどんな感じか試してみます!」


「良いですね。快活な方って大好きです。

 では、どちらのコースになさいますか?」


 アリスは興味津々にメニュー表を眺める。


「じゃあスタンダード! 『地続き』の十連続ゥ!」


 カロは水晶の前で手を動かし始めた。

 目視可能なエネルギーの流れが漂い始める。

 やがて、水晶の色が変化を始める。


「では、一つ目の並行世界ですよ!」


「ドンとこーい!」


「おや、()()()()()()。」


 占い師はポツリと呟いた。


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