猫7話
人間マジで疲れていると、案外どこでも寝れるもんだ。
太陽の光で目が覚めて、意外にもベランダでも熟睡できていたことに気づく。
だが、体を動かすと節々はめちゃくちゃ痛い。布団も引かずに寝てたから、そりゃ当たり前か。
ベランダの鍵は幸い閉められておらず、自分の部屋なのに何故だか慎重にドアを開けて入る。
猫様は何だかイメージ通りで、俺のことなんて一切気にせず小さな寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている。
「……どうしてこうなったんだろ……」
小さくボソッと呟いてしまう。
完全に自業自得……なのかはわからないが、自分が引き金なのは間違いない。改めて部屋を見回すと、昨日までとは別風景が広がっており、思わずため息がでる。
ゲームも漫画も。今まで時間を使ってきたものが全て無くなっている。……昨日の出来事は夢なんかじゃない。
ふと、唯一捨てられずに守ることができた、机に置いてあるノートが気になり、パラパラとめくる。
実はこのノートには、今読むとあまりにも痛すぎる、俺が中学生の時に書いたファンタジー小説が書かれている。
自分のかっこいいと思う主人公が敵をどんどんなぎ倒していくお話。
大したストーリーでもないし、どこか当時流行っていた漫画のキャラクターと似ている気もするが、主人公が物語の中で、生き生きと自由に暴れだす。
文章はめちゃくちゃヘタクソだけど、物語を書くのが楽しくて仕方がないみたいだ。
……これを書き始めてから、小説家なんていう職業に憧れを抱いていたんだっけ。
……大人になっていくにつれ、そんな夢は諦めてしまったけどさ。
――そんな考え事をしていると、何やら猫様がもにゃもにゃと言っている。
寝言だろうか?気になって耳をすましてみる。
「……ライオン……キリン……」
一体何の夢を見てるんだろう?
「……ラクダ……パンダ……」
動物園にでも行っている夢を見ているのだろうか?
「……人間どもに抗え!!!」
マジでなんの夢を見てるんだ。猫様。




