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猫11話

「……はい。なでなでおしまい。きもい。早く着替えて」


「…………いやいや!盗んだのお前だからな!!」


「盗んでない」


「嘘つけ!!!」


 いよいよもって飼われている感が凄い。唐突に頭を撫でられたかと思ったら、猫様が盗んだであろう俺の服を乱雑に投げつけてきた。返してくれたのは、財布と俺が風呂に入る前に用意していた服だけ。


 ……一体いつ他の物も返してくれんだよ。


 俺が着替えている間に、猫様が今日俺が愚痴を書きまくったノートをペラペラと捲って眺めている。


「狙い通りだにゃ」


「……狙い通りって何がだよ。俺が愚痴を書きまくったことがか?悪いか??」


「そうにゃ。全然悪くない。気分がスッキリしたでしょ?」


「いや……確かに気分はかなりスッキリしたけど……」


「なんでかわかるにゃ?」


「……いや……思ってること書きまくったから?」


「正解だけど不正解」


「何だよそれ」


「負の感情を言葉にして明確にしたからにゃ」


「……明確?」


「人間ってわからないものが怖いの。だからお化けが怖いにゃ。イライラや落ち込んだ時の感情も一緒。自分が何にイライラしてるか、何に落ち込んでいるのか、明確にしていないからずっとモヤモヤしたりイライラするの」


「……なるほど?……でも別に何にイライラしてるかは普段からわかっていたつもりなんだけどな……」


「でもいつも負の感情を抑え込もうとしてたでしょ……?こんなことを考えるのは良くないって」


「いやだって。負の感情なんだからそうするのが当たり前だろ」


「だからそんなゴミなんでしょ?感情は抑え込んだ状態で理解なんてできない。受け入れないと明確になんかできない。ずっと抑え込んだままイライラするのはバカがやること」


「……だからこんな何もすることがない状況でノートに愚痴を書かされたと……」


「そうにゃ」


「……なるほど……。ちょっと方法が奇抜すぎてあれだったが……良かれと思ってやってくれたんだな?」


「飼い主はゴミのことをちゃんと考えてあげてるにゃ」


「……あ、ありがとう……?」


「良いこと言ったら、お腹が空いたから早く晩飯買ってこい」


「一言余計なんだよ!!」


 猫様に振り回されてばかりだが、どこか自分の人生がプラスの方向に進んでいるような。そんな気がした。

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