猫10話
恐らく自分史上、最も愚痴をノートに書いたと思う。
……というかノートに愚痴なんて今まで書いたことがなかったのだけど。
初めは猫様に対する愚痴を書きまくった。これでもかっていうぐらい理不尽な暴言を書き続けた。
……しかし、1時間もすると書くことがなくなってしまい、何故だか以前就職していた会社に対しての愚痴を書くようになっていた。
書きながら、自分が何故会社を辞めてこんな状況になったのかを思い返してみる。
会社を辞めるというのは、いわば社会的にいう負け組。
そんな負け組達に押し付けるように、よくこんな言葉を耳にする。
『会社は3年は働け。3年で辞めてしまうようなやつは他の会社に行ってもすぐ辞める』
その通りだと思う。
会社を辞めた理由は俺のせいであり、俺が全部悪い。社会のレールから外れてしまった俺が悪い。俺が他の企業で頑張っていける可能性も少ないだろう。
でも腹が立つ。
人生の王道レールから外れた途端、まるで人としての価値が下がってしまうような
そんな世の中に腹が立つ。
俺が選んだ企業に働いて、俺が耐えられなくなって急に辞めてしまうなんて、完全に自分都合でしかない。
どういったって自分の責任だ。
でも、腹が立ったから、愚痴を書きまくった。
ノートの中から誰かに自分の考えを賛成されることもなければ、否定されることもない。
ただ思いつくままに自分がイライラしていたことを書き連ねた――。
◇
「ただいまにゃ」
「……へ!?猫様!?」
あまりにも書くことに夢中になりすぎて、時間を忘れていて、気が付けば夕方になっていた。
猫様に従うつもりは全くなかったのだが……ある意味、このノートでいっぱい遊んでしまったのかもしれない。
しかし、今まで溜まってきた心のモヤモヤをノートに吐き出したおかげか、ここ最近で気分が一番すっきりしている気がする。
「にゃ」
「と、突然いなくなりやがって!?お、俺の服とかどうしたんだよ!?返せよ!?」
「ごめんにゃ。……いっぱい書いたんだね。偉いね。頭撫でてあげる」
「え……」
そこにはパンツ一丁の成人男性が女の子に頭を撫でられるという、ヤバイ絵面が展開されていた。




