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31話:桜を見かけたのでお昼ご飯に誘う(悠斗視点)

 翌週の月曜日の朝。


「はぁ……どうっすっかなぁ……」


 俺はため息をつきながら学校へと向かって歩いていた。何でため息を付いていたのかといえば、それはもちろん桜の事について悩んでいるからだ。


「流石にこんなにも長い期間飯を作ってくれなくなるって事は……相当怒ってるって事なのかなぁ……」


 飯を作るの少しの間止めるって言ったときは学食の飯を久々に毎日食えると思って内心喜んだりもしたんだけど……でも流石に二週間近くも飯を作ってくれなくなるのはおかしいもんな。


 そして飯を作ってくれなくなったという事は必然的に俺の家にも来てくれなくなったので、それは結構悲しいというか寂しい気持ちになっていた。だって今までは毎日俺の家に来てくれたのにさ……。


 という事でもしかしたら桜は俺に対して怒ってるのかもしれないんだけど、でも……。


「うーん、でも別に話してる限りは全然普通なんだよなぁ……」


 もちろん多少の違和感はあるんだけど、でも別に桜がブチギレてるような雰囲気は全くないんだ。桜とは今も普通に他愛無い話とか余裕でしてるしさ。


「はぁ、どうにかしてまた桜に飯を作って貰いたいなぁ……って、あ」


 ため息交じりにそんな事を呟いていると、偶然にも前の方を歩いている桜を見つけた。どうやら桜も俺と同じタイミングで学校に登校していったようだ。


 なので俺はそのまま桜に近づいていつものように気さくな感じで話しかけていってみた。


「よっす、桜」

「んー? あぁ、悠斗じゃん。おはよー」


 俺が桜に話しかけていくと、桜もいつも通り笑みを浮かべながら俺にそう挨拶をしてきてくれた。


(んー、やっぱり怒ってる感じは全然しないんだよなぁ……)


 だってもしも桜が怒ってるとしたら、こんな満面の笑顔なんて出来るわけないもんな。という事で俺はそのままいつも通り他愛無い話を桜に振ってみる事にした。


「なんか最近は一気に暑くなってきたよなー。外歩いているだけで汗とかすぐ出て困るわ」

「あぁ、うん、本当にそうだよね。もう夏が来たって感じだよね。それに汗もそうだけど私はすぐ日焼けしちゃうから、もうこの時期になると日焼け止めクリームが必須だよ」

「え? 桜って日焼け止めクリームなんて塗ってんのか? はは、何だよそれ、まるで女子みたいな事してるじゃん……あ、やべっ」


 そんな事を言ってすぐに後悔した。俺はいつも通りの感じで桜を煽るような事を言ってしまった。


(や、やべぇ……もしも内心ガチギレしてるとしたらこんな事を言ったら滅茶苦茶にキレてくるんじゃ……)


 俺はそう思って恐る恐る桜の表情を確認していった。でも……。


「ちょっとー? 私だって立派な女子なんですけど??」

「え?」


 俺のそんな軽口に対して、桜は頬を膨らませながらジトっとした目つきで俺の事を睨みつけてきていた。でも桜の顔は怒っているわけではなく、普通に笑みを溢した表情だった。


(あ、あぁ、なんだよ。やっぱり桜は怒ってるわけじゃないんだな)


 俺はそんな桜の表情を見てホッと安堵していった。やっぱり桜は俺に怒っているわけではないようだ。


 という事で安心した俺はそのまま笑いながら桜の事を煽っていく事にした。


「はは、そういやそうだったな。でも小学生の頃の桜は図体がデカくて半袖半ズボンで全身日焼け色になってたとか誰がどう見ても男にしか見えなかったからなー??」

「ふぅん? そんな事を言うんだ?? それじゃあそんな男っぽい女の子だった私にいつもスポーツ全般で負けてた悠斗は本当に男の子だったのかしらねー?? あ、もしかして悠斗も私と同じで女の子だったのかしら?? ふふ、そうだったのなら子供の頃はもっと手加減してあげたら良かったかもねー??」

「うぐっ……さ、流石に今はもう負けねぇって! それじゃあ今度の部活の時にバスケのフリースロー対決でもやって決着をつけようぜ!」

「うん、もちろんいいわよ? それじゃあ今回も私がコテンパンにしてあげるとしましょうかね?」

「はは、絶対に俺が勝つから今に見てろよ?」

「ふふ、それは楽しみだね」


 という感じで俺達はいつも通りお互いにお互いの事を煽っていきながら笑い合っていった。


(あぁ、良かった! これで俺達はいつも通りの仲に戻ったはずだ!)


 俺はそう思いながら笑い続けていった。そしてせっかくなので俺は笑いながらこんな提案を桜にしてみた。


「あ、そうだ! それじゃあせっかくだし久々にさ、良かったら今日は一緒に昼飯を食わないか?」

「え? お昼?」

「そうそう! ほら、最近俺達って全然一緒に昼飯食ってなかっただろ? だからたまにはどうかなって思ってさ? それにどうせ桜はいつも一人で飯食ってんだろ? だから別に良いよな?」


 いつも通りの仲に戻れたという事で俺は嬉しくなってそんな提案を桜にしていった。きっと桜も同じように笑みを浮かべながら受け入れてくれるはずだ。


 と、俺は思ったんだけど……。


「うーん、それはごめん。今日は友達と食べるから悠斗も他の友達と食べてよ」

「え……?」


 そう思ったんだけど、俺は普通に桜に昼飯を断られていってしまった。


(え……な、何でだよ……?)


 俺は今まで桜にお願いした事が断られた事なんて一度もなかったので、初めて断られたという事実に大きなショックを受けていった。


「だからまた今度別の日にでも誘ってよ。まぁでもしばらくはずっと友達と食べるから無理そうだけどね。……って、あ! そろそろ登校時間が過ぎちゃうから走った方が良いかも! ほら、走るよ悠斗!」

「え……えっ!? あ、あぁ……わかった」


 俺はしばらくの間放心状態になってしまったんだけど、でも桜のその声によって俺はなんとか正気に戻って走り出す事が出来た。でも……。


(な、なんで……なんで俺のお願いを聞いてくれなくなったんだよ……)


 俺は桜がお願いを断ってきた事に大きなショックを受けながらも、俺達は学校に遅刻しないように桜と一緒に全力で学校まで走っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 悠斗、もうお前の時代は終わったんだよ
[良い点] 親しき中にも礼儀あり。デリカシーは大切よ?
[良い点] 今までお願いを断られたことがなかったってすごいな!?同じ年のこに、そんなに尽くしてもらっていたの?ストーリー的にいい意味で驚愕させられました( ;∀;) お昼誘って断られただけでこれだけ…
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