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(仮)芸能事務所の社長からクビを宣告されたので、大人しく田舎のBarで働くことにします。  作者: 空白さん


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第40話 逃げる(➡︎失敗)

 や、やばい。

 まじで本当に自分の体が臭すぎて気持ち悪くなってきた。


 ていうか和也の奴……何でこのルートを指定してきたんだよ。

 どう考えてもおかしいだろ普通に。


 排気口から突撃とか思考がぶっ飛んでるぞ。まじで。


 何とか外に脱出出来たは良いものの。

 これ。もし俺が抜け出せなかったらアイツ……放置したまま事を進めてたんじゃないか?


 く。どいつもこいつも俺にばかり面倒事を押し付ける癖……どうにかしてほしい。


 もう俺、現役じゃないし。

 昔の片桐さんみたいな護衛って立場でもないのに。


 本当であれば、何とか係員の人に土下座して正面から入るつもりだった。


 なるべく目立たないように。

 そして穏便に済ませるようにと。


 しかも、和也はなぜか()()()()()()()()()を持ち込んでいたからな。


 いや、それを最初から言えよと思った。

 それをぶら下げて入れば最初から余裕だったのにと訴えたほどだ。


 しかし、それを提案したらなぜかあいつは――。


『それじゃあ、僕が中に入れなくなるだろう?』


 と、何バカなことを言ってるんだい君はみたいな顔をしながら言ってきたのだ。


 え、なに。

 じゃあこの件、俺の役目は終わりってこと?


 あ、あの和也が全て片付けてくれるなんて……。


 お前はあれから随分と成長したな。うんうん。

 見違えるほどにな。


 きっと。

 今日の俺の苦労を見越して、遠慮してくれたのだろう。


 一般人の俺なんかよりも、芸能界で力を持っているお前の方がよっぽど発言力強いしな。うん。


 それなら。

 これで、本当にお終いだ。


 コイツならきっと影山のことをなんとか救ってくれるだろうし。

 先程までの自身の積極的な動きは必要なかったということだ。


 ふ。流石は元親友よ。

 俺のことをちゃんと分かっているじゃないか。


 それに、あの時。

『トイレに行ってくるわ』と言ったのも、目の前に川島さんが居たから話せなかっただけで。


 本当のところは逃げる口実を作りたかっただけだしな。うん。


 ふ。俺……。

 超ラッキーじゃん。

 まじでこれで帰れるぜ。


 早く新幹線にでも乗って、途中で駅弁でも買いながら。

 後は、まったり帰宅しよう。


 あ、途中で温泉に寄るのもアリだな。

 昼間に熱中症で倒れそうになったし。


 この汚い体と汗を流すには充分だろう。


 ふ、ふふ。

 うん。それが良い。絶対に。


 これで、ようやく。

 金田君と仲森君たちと一緒に、楽しいBar生活を始められるぞ!


 と、心の中で静かに喜びを噛みしめながら。


 今後の計画を頭の中で高速に描いていたのだが――。


『大介君なら余裕でしょ? ()()()()()

『あ、あのー。和也さん? さっきから仰ってることがよく分からないんですケド……?』


 あの後。

 三分間の時間が経過し。


 なんやかんや。

 和也のSPの人達にも担ぎ上げられて。


『えーと。君たちは一体、俺に何をさせようとして……?』

『『『『Good Luck! Mr.Saito!』』』』


 皆さん、笑顔で口を揃えながら親指を立てていた。


 それからのことは、自分もあまり覚えていない。

 無理やり裏口にあった排気口にお尻から強制的に入れられてからは、ただ脱出することだけを考えていた。


 芋虫達と一緒にブンブン突き抜け。

 ハエは耳元でうるさく飛び交い、過酷な環境の中で体をねじりながら前に付き進む。


 後ろに戻っても地獄。前に進んでも地獄。


 はい終了。

 俺の逃亡計画、全て崩れたよ。


 く、なぜだ。どうしてなんだ。


 本当に命懸けでここまで来たというのに。


 毎回不思議に思うんだが。

 俺がこうなる結末を迎えてしまう理由が本当に分からん。


 いくらなんでも。

 普通に辛すぎるだろ。人生。


 それに、床に着地するとともに、衝撃は多少あったし。

 まあ、ダメージは少なくて済んだから良いけど。


 途中、大変なこともいくつかあったし……。


 うん。でもまあ。

 無事に脱出できたし、良しとするか。


 終わり良ければ全て良しって言うしな。


 それに。

 これは貸しだ。貸し。


 後で絶対に和也には請求してもらうぞ。色々とな。


 というか、この部屋。

 思ったよりも広いし、視界も暗い……。


 え。もしかして俺。

 閉じ込められたパターン?


 流石にどっかに扉はあると思うけど……。

 外側から鍵でも掛けられたりしてたら、ここまで来た意味無いんじゃ……。


 く。やはり今日の運勢。

 占いで二位だったのはただのデマだったようだ。


 和也め……後で絶対に覚えてろよ。


 この仕返しは、必ず倍返しにしてやる。

 絶対に。絶対にだ。


「俺、もう帰りたい……」


 って、ん?

 煙が徐々に晴れてきたからか、視界が少しずつ明瞭になってきた。


 それと共に、人らしきものが二人ほど伺える。


 あれは……誰だろう。


 一人は女性の方で、衣装が乱れてるし。

 もう一人の男は、その人の上に跨っている?


 やっば。

 もしかしてお取り込み中だった?


 こ、これは流石に……。


 つまり、()()()()()()なのだろう。

 こ、これは俺が悪いな。うん。


 ここは軽く謝罪でもして、そーっと退出しよう。


 そして、俺は何も見なかったことにして逃げるだけだ。


 まだ、二人が誰なのかははっきり分からないけど。


 今の内に退出すれば、きっと大丈夫だろう。

 自分が出来ることとしては、本当にそれぐらいしかないからな。うん。


 よし。

 そうと決まれば退散退散っと――。


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