第38話 俺のムスコ(閲覧注意)
俺――井上秀太は今、絶頂期を迎えている。
人生において、これ程までに幸福な瞬間を味わったのはいつぶりだろうか。
振り返って見れば、この芸能界に入ってからは親父のお陰でスムーズに事が進んでいるようにも思える。
『ダイヤモンド・プレッツェル』という日本最大の大手芸能事務所。
史上最高の権力を持ち合わせていながら、好き勝手に周囲へ圧力をかけ、恐怖を滲ませる。
日本政府とも密接な繋がりがあり、政治にも影響を及ぼす程の巨大な組織。
そんな会社の社長の息子である俺は、自分の欲しいものは何でも手に入れてきた。
その中でも、特に一番を挙げるとするならば――女だ。
自分は今までに何百人もの女を抱いてきた。
女優、アイドル、モデル、ミスコン王者等。
顔と容姿が好みであると判断したら、片っ端からヤることが日常茶飯事だった。
一日に最高十二回戦まで行ったこともある。
ベッド上で、自分が腰を振っただけで喘ぐその様は見てて気持ちが良かった。
『あっ……ん。ちょ、ちょっと秀太君。これ以上は――ダメだってばッ///』
『ん? 何だ何だ? よく聞こえなかったからもう一度言ってみな? クルメちゃん』
スパン、スパンと鳴り響く。
いつも聞いている音。
性行為は何回やっても飽きない。
自身の性欲が常に満たされ、毎日の衣食住よりも大切なモノだ。
ちなみに、初体験は小学校高学年の時。
クラスメイトで一番可愛かった彼女と、自分の部屋でシた時のことは今でも鮮明に覚えている。
今でもたまに、その時に撮った写真で射精することもあるぐらい可愛い子だった。
名前はもう忘れたが、俺の初めてを捧げた女として十分であったことは間違いない。
しかしながら……。
自分の身体が。心が。
その子で完全に満たされたかどうかは、残念ながら微妙だった。
井上秀太が性欲に目覚めたきっかけは、あの日。
まだ自分が九歳ぐらいの時期だった。
たまたまテレビに映っていたその子が、衝撃的だった。
その人物の名は――水瀬彩夏。
今では国民的芸能人として活躍。
朝ドラやCMでも多数出演しており、日本に居れば誰もが知っている女優でもある。
そんな彼女を初めて見た俺は、人生で自身のムスコが初勃起したことに気づかなかった。
なぜ、自分はこんなにも興奮しているのか。
その感情のメカニズムを調べるのに、当時は苦労した思い出がある。
親父に聞いても、『お前にはまだ早い』と一蹴されたことも記憶に残っているぐらいだ。
だからこそ、俺はアイツの全てを知りたいと思った。
親の権力を利用しながらも、生まれ育ちからのデータを全て収集し、頭の中でアップデートした。
また、自身も子役として活躍し始めてから、常に最新の情報を取り入れるようになり、彼女の性格や好きな物、趣味等を知るようになった。
そうして、幾日も月日が流れて行き――。
『初めまして……水瀬彩夏です。実績のある方々ばかりで少し緊張していますが、最初はお手柔らかにお願いします』
朗らかな笑みを浮かべながら挨拶をし、丁寧にお辞儀をする高校時代の彼女。
その誰もが見惚れる程の整った顔立ちと。
美しさと可愛さを全て兼ね備えた姿を見た時。
不思議と心拍数が高まる現象が起こった。
ドクン、ドクンと。
今までで感じたことのないような胸の高鳴りを覚えたのだ。
俺の目の前に現れたことが、まず嬉しかった。
そして、これはもう運命以外の何物でもないと確信した。
その時の彩夏はもう既に大人びていた。
子役の時から、我慢して見守ってきた甲斐があった。
早く、自分のモノにしたいという欲が強くなった。
だが、何度アプローチしても中々手に入れることは出来なかった。
邪魔者が居たせいで、彼女の傍に近づけなかったことが原因だ。
今思えば、腹立つことは間違いない。
この俺、井上秀太よりも。
あんな普通の男を選ぶだなんて絶対に許されるはずが無いのだ。
時が大きく経過し。
あのゴミが彩夏のマネージャーになってから四年目の頃。
丁度、ドラマの打ち上げとして開催された高級ホテルにて。
周りには関係者しか居ないロビーで、あいつらの会話を盗み聞きした俺は――。
『ねえ大介。私から一つお願いがあるんだけど』
『ん? 何だよ水瀬』
『この前、一人で山登って最高の景色が見れたとかっていう話を偶然聞いたから。今度、私もそこに連れてってくれない?』
『えぇ……何でその話をお前が知って……。ていうか、俺、ぼっち旅が一番好きだから、他の人と一緒に行くのは疲れるし――ヒィィィッ!? わ、分かりました分かりました! か、必ず連れて行きますのでどうかそれだけはお許しを水瀬様ッ!』
『ふんっ。分かれば良いのよ……。ほんと、貴方って人は常日頃から私に隠し事ばっかりなんだから』
そう唇を尖らせ、文句を言いながらも……一瞬。
ほんの一瞬だけ、普段とは違う――彼にしか見せない特別な表情を浮かべている彼女を自分は見逃さなかった。
この時の俺は既に。
頭の中が沸騰しそうになっていた。
ああ……。
これが本当の心の内から来る殺意なのだと感じた。
彼女にではない。
あの隣で纏わりついているゴミ野郎に対しての感情だった。
どうして、アイツなんかが。
なんで俺じゃなくて、あんな平凡な屑が選ばれるのだ。
どう考えても違うだろ。
この俺が頂点で、アイツは底辺で。
生きている世界は全く異なるはずなのに。
住んでいる領域は天と地ほどの差があるというのに。
『これからは、必ず私の目が届く場所に居ないと駄目なんだから。そこの所、ちゃんと解ってる?』
『ハイ。オオセノママニ、ミナセサマ』
『ちょ、ちょっと。何よその棒読みの返事は!』
なんで……なんで……なんで……どうして。
アア……殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したいコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイコロシタイ。
あの野郎の心臓をナイフで貫くか、それとも銃殺で一気にケリをつけるか。
殺す方法はいくらでもあったが、アイツがこの世から消え去ってくれれば何でも良かった。
だが――。
残念なことに、特別な訓練を受けていた奴には、それら全てが通用しなかった。
アイツを殺そうと何度も試みたが、全く手も足も出せず、歯が立たなかった。
悔しかった。
自身の力で葬り去ることが出来なかったことが人生において最大の汚点だった。
だから、仕方なく。
この事務所の最大の権力を使用して、奴をクビにすることにした。
あんな化け物染みた実力者を、これ以上彩夏の隣に居させるわけにはいかないと。
そう思って、親父に協力を要請したのはこの俺だった。
『ひ、ヒヒ……。これで彩夏はオレのモノに……。ヒヒヒ』
強制的にあのゴミを排除することに成功してからは、正直笑いが止まらなかった。
ああ。これだ。
俺が求めていたのは悪者をやっつける達成感と幸福感だったのだ。
今まで散々、彩夏の近くで甘い蜜を吸い続けた罰。
六年という長い期間、俺はずっと我慢してきたが……。
その呪縛から解放された自分は、もう敵は居ないのだと確信した。
しかし――。
この次にはまた新たな問題が発生し。
『しゅ、秀太君……? だ、大丈夫……?』
『ああ? なんだよ……これ。なんなんだよ、マジで』
本物じゃなかったからだろうか。
相手が水瀬じゃなかったからだろうか。
他の女と何回もヤッていく内に、興奮が生まれなくなったのだ。
おそらく、この俺の性欲が尽きたなんてことはあり得ない話ではあるが……。
一時期、全くムスコが反応しない期間があったことは事実だった。
原因は不明。
すぐさま医療機関に受診し、ドクターに診察を受けても、何も分からないと言われる始末。
これじゃあ、彩夏とセックスする時。
もし勃起しなかったら……どうするんだよ。くそが。
それもこれも、全部俺の計画を遅らせやがった、あのゴミの責任だ。
クビにするだけじゃなく、やはり殺すべきだった。
だが、アイツの居場所はもう行方不明で、居場所はどこも分からない。
この無念を晴らす場所は、どこを探しても見当たらない。
それが何よりの苦痛で、自身へのやるせなさを感じた瞬間でもあった。
そんな俺は、一ヶ月ほど、悶々とした日々を送っていたのだが――。
『秀太先輩じゃないですかぁー。私の事、知ってますー?』
そんな時。
救世主が現れた。
彩夏とは異なる――もう一人の女優が目についた時。
俺の下半身はすぐに完全復活した。
その子の名は――影山蜜柑。
身長はそんなに高い方ではなく、胸も大きくは無い。
だから、最初に名前と情報を仲間から聞いた時には、てっきり対象外だと思っていた。
でも、実際に対面で会ってみると――。
水瀬彩夏の時と同じくらい、いつの間にか。
俺のムスコは反応していたのだ。
ああ。そうだ。
まずは、水瀬彩夏とヤるよりも、この子の方が先なのだと確信した。
普段から、ツンデレで生意気で……俺の性感帯をウズウズさせてくれる。
そんな存在を俺は欲しがっていたのだ。
その相手が、たまたま目の前に現れてくれたことで。
ある日を境に、また『井上秀太の性欲』が爆発したことは言うまでもない。
そして、時は今に戻り――。
「この時を……俺はずっと待ち望んでたぜ? 蜜柑……ヒヒ!」
だからだろうか。
今、自分の下で絶望の表情を浮かべている蜜柑を見て、俺は人生最大の興奮を感じている。
本当であれば、このショーが終わった後に計画していたのだが……。
突如の思考判断で、こうして切り替えることが出来たのも己の頭の良さのおかげなのかもしれない。
管理人からマスターキーを盗み取り、蜜柑が戻る前から物陰に張り込むことで、ようやく二人きりの状況が生まれたのだ。
ハッキリ言って、この後の劇なんざどうでも良かった。
今回の目的は、俺の濃密な精子を蜜柑の子宮の中にぶち込んで――赤ちゃんを作るだけ。
一発だけじゃない。
過去最高の一二回戦を超える……歴代記録を更新するためには様々な工夫をしなければならない。
もちろん、これまでの俺はゴムをしっかりと付けて色んな女とヤッてはきたが……。
今回は、幸いなことに生確定だ。
俺と蜜柑の間に、そんな道具は必要ないし。
何より、そんな物は邪魔以外の何物でもないからな。
「今まで焦らすだけ焦らしやがって……。くく。もう逃げられないからなぁ?」
「さ、最低ッ……! ほんと最低ですよ先輩! こんなことして……何が楽しいんですか――キャッ!?」
先程まで怯えていた蜜柑が、徐々に俺の元で暴れ出す。
抵抗しているせいか、中々下着まで辿り着かない。
アア……うぜえよ。
後三分後には、どーせ俺のムスコで喘ぐんだから。
ちょっとは大人しくしてろ。ツンデレめ。
そう心の中で思いながら、力強く蜜柑の身体を床に押し付け、自身の全体重を乗せる。
彼女は、もう身動きが取れない。
ただ、人形のように抵抗するだけして、体力を奪っていくだけ。
その様子を、過程を見るのも一つの醍醐味なのかもしれない。
「嫌……イヤだッ。お、お願いですからこれ以上は勘弁して――んッ!?」
「うほっ。パンツの上から触っただけでこんなに敏感とは……い、頂けない。頂けないなぁ……蜜柑」
目に涙が滲み、こちらを噛み殺すかのように睨みつける彼女。
そんな蜜柑を見て、俺はもう我慢することが出来なくなった。
自身のパンツを即座に脱ぎ捨て、下半身が露出する。
ギンギンにでたその突起物を、後はこの女のアソコに押し込むだけ。
最初はゆっくり。じっくりと。
そして、挿入したら、後は腰を徐々に動かして――。
アアア……たまらねえ。
たまらねえぞこれは。
まだ入れてもいないのに、想像しただけで精子が溢れ出てる。
く、くく。
今までで、こんな現象は起こることは無かったって言うのに。
流石は蜜柑……他の女とは一味も二味も違うぜ。
それに……コイツ。
いつもいつもいつも。
俺の事をおちょくりやがってた表情とは違う。
ああ。その顔。
その今にも終わったかのような表情を、俺は見たかったんだ。
だがな。蜜柑……これは今までに調子に乗った罰だ。
ここで許してといくら願ったって、現実はそう上手く行きやしないんだよ。
今、その表情を今度は喘ぎ顔にしてあげるからな。ヒヒヒ。
アア……蜜柑の身体が、ついに俺のモノになるぞ。
俺の貴重な精子。
ちゃんと受け止めろよ……蜜柑。ククク。




