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(仮)芸能事務所の社長からクビを宣告されたので、大人しく田舎のBarで働くことにします。  作者: 空白さん


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第17話 悪魔の来訪者

 どうも諸君。お久しぶり。

 こちら現在、ボロアパートの玄関で固まっている斎藤大介です。


 ってそんな自己紹介はどうでも良いか。うん。

 今、この状況でそんな事を言っている場合じゃないしな。


 まずは現状報告をすると、最近、仕事で目が疲れている影響か、視界がちょっとグラつくときがあるんだよな。うん。


 せっかくの休日を過ごす最高の一日を誰にも邪魔されないように、朝からしっかりと布団の中でゴロゴロするのが日課のはず。


 それが、なぜか玄関の外がやけに騒がしいものだから、ドアノブを開けてみたらなんと綺麗な女性がいるではないか。


 見知らぬ人……否。

 知ってはいるが絶対に近づいてはいけない人物TOP3には入っている。


 早朝からピンポンピンポンとうるさく鳴った時から誰かの悪戯かと思ったのだが……。

 いや、これは悪戯か。うん。

 絶対にそうだろうな。


 だって、俺の目の前でニッコリ笑ってるんだもん。彼女。


 そりゃ、誰だって怖いよな。いくら男でも。

 というか固まるも同然だろ……これ。


「もーッ、出るのが遅すぎますよぉー。せぇんぱいっ?」


 うん。きっと誰かさんの家と間違えたのだろう。


 こんな綺麗な子が朝早くから現れるなんて、きっとコイツの彼氏か何かの家と間違えただけだろうしな。

 そうに違いない。


 だからこそ、一向にも早くドアを閉めたいのが、なぜか中々ドアが閉まってくれない。


 なぜだろう。あれ、おかしいな。

 結構強めに手で引き戻しているはずなんだが……。


 あ、彼女が足で隙間に挟めているせいか。うん。


 これ、俺詰んだかもしれん。

 というか、彼女の話が済むまで一向にこの状況を打破できない気がする。


 し、仕方ない。ここは適当に別人アピールでもして軽くあしらうとしよう。

 それで帰ってくれる可能性も……い、1パーセントぐらいはあるかもしれないからな。うん。


「お、お嬢さんや。多分これ、人違いなんじゃないか?」


「え? ふふ、嫌だなー。私が先輩のことを見間違えるわけがないじゃないですかー」


「いやいや。俺はお前のことなんて知らんし。うん。だからここでお引き取り願えると助かるんだが――」


「絶対に嫌でーすっ」


 そう言って、"そういう茶番は良いから、はよ中に入れろや”と表情で圧をかけてくる彼女。


 対して、俺はどうすることも出来ないまま、額に冷や汗を浮かべながらこの状況を頭の中で整理する。


 まずは、なぜ彼女が俺の現住所を知っているのか。

 そして、どうしてこんな朝早くから自分に会いに来たのか。


 心当たりが無いといえば嘘になるが、おそらく先日に金田君が貰ったという()()()()()()に関連しているのだろう。


 結局、あの後帰った時に何も考えなかった自分も悪いといえば悪いのだが……く、どうしてだ。

 なぜバレたんだ。俺の聖域が。


「んー。入れてもらえないならー、奥の手を使っちゃおっかなー?」


「奥の手って何だよ」


「えー、そんなの決まってるじゃないですかー。彩夏先輩にぜーんぶ話しちゃうってことですよ」


「誰の事を言っているのかさっぱり分からないな」


「えー? あの超有名な女優のマネージャーだった人がここでトボけるなんて無理があると思いますけど?」


 可愛らしい顔で口元に人差し指をトントン、と当てる小悪魔美少女。


 それを見た俺は、この状況でコイツに勝てるわけが無いのだと改めて認識する。


 というか、前回よりもなんか悪魔っぷりが増しているような気がするのだが……。


 く、ダメだダメだ。

 ここは腹を括って覚悟を決めるしかないな。


 もう俺のこともバレてるっぽいし。うん。

 きっとご先祖様もここは踏ん張り時なのだと感じていることだろう。


 諦めるしかない。


「……まじでお前、性格悪い所は変わらないんだな。()()


「ふふっ。やっと私の事を呼んでくれた。やっぱりあの人の名前を出すと反応しちゃうんですね、大介先輩。なーんか嫉妬しちゃうなー」


「いや、まあ……今アイツにバラされるのはちょっとな。というかそんなことより、なんで俺の居場所が分かったんだ?」


「えー。せっかく久しぶりに会えたって言うのに、最初からそんな面白くない事聞いちゃいますー?」


「あ、当たり前だろ。というかまあ、大体こうなった経緯はある程度予想はつくが……お前の差し金だな?」


「ふふ、それはどうでしょうね。先輩の家に入れてくれたら、ちょっとぐらいは教えてあげても良いですけどー」


「はあ……。分かったよ。今少しだけ部屋の中片付けるから、少しだけ外で待っててくれないか?」


「あ、もしかしてエッチな本とかで散らかってますー? ふふ、それなら待たずにもう入っちゃおっかなー? 先輩の性癖を知る良い機会だしっ」


「いや、そんないかがわしいもんは置いてねえわ!」


「えー、なんかつまんなーい。ま、いっか」


 くそ。まじで俺の休日が。


 第一、こんなボロアパートにこんな朝早くから俺に何の用があるというのだ。

 人間は朝に弱いというのはもう科学的に証明されているというのに。


 というかまじで何なんだよコイツ。

 もう俺も芸能の世界から去ってるわけだし、そもそも彼女とは事務所も異なっている。


 まあ、当時は水瀬のマネージャーとして付き添っていたため、ある程度の人との付き合いはあるものの、厄介な相手はたくさんいることは確かなのだが。


 く、とにかく今日は今日で乗り越えなきゃいけないミッションがあるというわけか。



 だ、誰か。

 俺の休日を返してくれ……。



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― 新着の感想 ―
〉彼女が足で隙間に挟めているせいか。うん。 うわぁ、コレ安全靴とか履いてガチ準備してるパターンかも…。
[一言] 更新楽しみにしてました!!
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