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カード化スキルで図鑑コンプリートの旅  作者: あすか
第2章 冒険者登録
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第82話 実技試験

本日2話目の投稿です。

「それで試験はどうすればいいんでしょうか?」


 多分ギルマスじゃない方が、本来のサマナーの試験官なんだろう。


「召喚師の試験は召喚獣同士の戦いです。私の召喚した相手と戦っていただきます」


 どうやらこの人もサマナーのようだ。


「じゃあ試験官さんのモンスターに勝てば合格ですか?」


「……もちろん勝てば合格ですが、私はこれでも元ベテランのサマナーでした。別に勝てなくても、召喚獣の強さを確認できれば合格とします」


 試験官は少し不愉快そうに答える。

 冒険者未満のサマナーが自分に勝てるなど、おこがましいとでも思っているのだろう。

 試験官は袋から魔石をひとつ取り出しその魔石を粉々に砕く。

 そしてそれを撒いてぶつぶつと呟く。


召喚(サモン)!」


 すると、粉々になった魔石の粒が光だし、一体のモンスターが現れる。

 へぇ、普通のサマナーはそうやって召喚するんだ。


 現れたのは試験官よりも高い身長。2メートルくらいか?

 二足歩行で緑色の皮膚――鱗に覆われ、尻尾がある。

 手には剣と盾を持っており、顔はまるでトカゲのような……


「……リザードマン?」


「その通り。コイツはリザードマン。強さとしては中堅冒険者レベルでしょうか」


 へぇリザードマンか。

 格好いいな。

 ウチの残念トカゲとは大違いだ。

 俺もほしいけど……まだ出会ったことないしなぁ。

 このリザードマンが野生なら是が非でも捕まえるのだが、あいにく目の前にいるのは野生でも、本物でもない。

 う~ん、せめてレシピや生息地だけでも分かればなぁ。


「さて、驚くのは分かりますが、そちらも早く召喚して頂けませんか? このリザードマンに勝つつもりなんでしょう?」


 ……なんかこの試験官は嫌味ったらしくてムカつくな。

 中堅冒険者程度なら楽勝だっての。


 俺はカードに念じてラビットAを召喚する。


「きゅきゅー!!」


 ラビットAはシャキーンと両前足を斜め上へ掲げたポーズで登場する。

 そしてチラリと俺を見る。

 カッコいいポーズが決まったでしょ! とドヤ顔をしているようだ。

 ……正直恥ずかしい。


「ラビットA。今後はポーズを決めての登場は禁止な」

「きゅぴえ!?」


 予想外といった感じで驚くラビットA。

 褒められるとでも思っていたのか?


「馬鹿な……召喚獣と会話だと? いや、その前に今どうやって召喚した?」


 試験官がさっきまでの嫌味さはどこへやら、驚きの表情を浮かべる。


「くっはははは! なんだそのウサギは!! サマナーの召喚でこんなのは見たことがないぞ!」


 一方、ギルマスがラビットAを見て爆笑している。


「きゅむむむ……」


 バカにされていると思っているのかラビットAが唸る。


「おい、アザレア。コイツ本気で面白いぞ」


「ですから、知っておりますと申したではありませんか。それに……面白くなるのはこれからでございます」


「なに?」


「気になるようでしたら、ギルド長の鑑定スキルで試してみたらどうです?」


「お前……分かってて言ってるだろ」


 ギルマスが悔しそうに言う。

 確かギルマスはこのギルドで唯一、鑑定スキルを持っているんだったな。

 だが、どうやらラビットAを見ることが出来なかったようだ。

 先日、ラビットAがあまりにも煩かったので、昨日スキル妨害を覚えさせた。

 どうせアザレアさんにスキル習得の方法を見せろと言われていたのでちょうどよかったしね。

 ついでに隠蔽スキルでラビットAのスキルはもちろんのこと、名前や魔法まで全部隠してやった。

 だからギルマスには鑑定スキルが防げようが防げまいが、どちらにせよ何も見えなかったはずだ。


「ふふっ分からないようでしたら、無駄口を叩かずに、大人しく見ていたらどうです?」


「ぐぅ……お前、性格変わりすぎだぞ」


 本当はこっちが素だろうけど、ギルマスの気持ちはよく分かる。

 さて、2人が大人しく観戦を始めたので、こっちも試験を始める。


「ふん、どれだけ変わった召喚だとしても、所詮はアルミラージ。リザードマンの敵ではありません。さあ行きなさいリザードマン」


 試験官の言葉でリザードマンがこちらに向かって襲いかかってくる。

 ただ……まっすぐにこっちに向かってくるだけ。

 目がうつろで迫力も何もない。

 肉体を再生して動けるようにしても、意識がないなら戦いも単調になるってことか。

 これならゴブリンの方がよっぽど怖かったぞ。

 多分これが普通のサマナーの限界か。


 うん、ラビットAの敵じゃない。

 というか、ラビットAをアルミラージだと思いこんでいる時点で勝ち目はない。

 よし、一気に片を付けるか。


「ラビットA、レア度2まで解禁。一瞬でケリをつけろ」

「きゅきゅ!」


 ラビットAは角強化のスキルを発動すると、強化した角でリザードマンの剣を容易に受け止める。


「きゅきゅきゅきゅっ!」


 ラビットAはそのまま角で剣を弾くと、体当たりでリザードマンを吹っ飛ばす。


「きゅぅぅ!」


 倒れたリザードマンを見て、ラビットAが角に魔力を溜め始める。

 手慣れたもので、あっという間に角がバチバチと光り輝く。


「きゅーきゅきゅ!」


 掛け声とともにラビットAからサンダーの魔法が発射、リザードマンに直撃する。

 リザードマンはバチバチと雷撃に包まれたかと思うと、身体が大きく仰け反ったかと思うと光の粒となって爆散した。

 砕けた魔石の粒に戻ったのだろう。


「きゅふっ」


 勝ったことでドヤ顔するラビットA。

 だがそれに反応するものはいなかった。


 対戦相手の試験官、それからギルマスとアザレアさんまで。

 全員が唖然としていた。

 そしてもちろん俺も……まさかここまで一方的だとは思わなかった。

 それにサンダーの魔法の威力も。

 レア度2まで解禁とか言わなければ……正直やり過ぎだったと後悔した。

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