第60話 他種族合成
「うん。シュートがそこまで言うんだったら、合成してみるといいよ!」
ナビ子もユニコーンに興味が出てきたようで賛成してくれる。
あとはビッグラビットにも許可をもらわないと。
俺はビッグラビットを召喚する。
「……やっぱりデカいな」
「……おっきいね」
ワイルドホースの時と同じ反応をする俺とナビ子。
ビッグラビットは何度か召喚しているんだが、リビングで召喚したことはなかったからな。
リビングが随分と手狭に感じる。
というか、角が天井に当たりそうだ。
「ねぇシュート。この子とワイルドホースが合成しちゃったら、とんでもなく大きくなるなんてことはない?」
……その発想はなかったな。
「今からでもホーンラビットに変更する……か?」
でもそれだと角に不安が残る。
角の短いユニコーンになったら……うん、やっぱりコイツでいこう。
「どうだ? ワイルドホースと合成してくれるか? そうなればお前はもうウサギじゃなくなる。だから無理して合成させるつもりはない。どうだ?」
このままコイツがこのままウサギ生を全うしたいなら、断ったほうがいい。
今ここでワイルドホースと合成しなかったら、コイツは後々ヒュージラビットになるだろうからな。
今ユニコーンに出来なくても、ワイルドホースの魔石が手に入れば、そのうち合成でユニコーンだって作れるだろう。
ビッグラビットは……ラビットAのように鳴くことはなく、かといって右側に移動できる広さはなかったが、笑顔で頷いた。
どうやら快く快諾してくれたようだ。
ビッグラビットが許してくれたので、ビッグラビットを戻して合成を始める。
ワイルドホースを手前に、ビッグラビットを奥に重ねる。
「合成」
早速合成されたモンスターを確認してみる。
――――
ユニコーン
レア度:☆☆☆
固有スキル:光の覚醒、浄化、加速
個別スキル:危険察知、逃走加速
馬系の上級モンスター。
一角獣の白馬。
その角は浄化や癒やしの力があるとされている。
知能が高く警戒心が強いため、めったに見かけることはない。
唯一心を許すのは清らかな乙女のみと言われている。
――――
「おお……本当にユニコーンが生まれたよ」
やはりメインとサブは間違いなさそうだ。
そして他種族でもちゃんと合成ができるのが分かったのも大きい。
モンスター達に希望があれば今後は多種族の合成も積極的に行っていこう。
そして肝心のユニコーンの能力を確認する。
固有スキルは光の覚醒と浄化と加速。
……光の覚醒?
「ナビ子、光の覚醒ってなんだ?」
光の素質なら分かるんだが……
「光の素質の上位スキルだよ。魔法の威力とか諸々が強化されてるの」
「マジか。素質の上位スキルとかあるのか」
「うん。魔法を使えるようになるスキルは素養と素質。この2つは生まれながらと成長での違いしかないけど、それの上位で覚醒。さらにその上に極意って続くんだよ。素質じゃ唱えられないような大魔法も覚醒や極意なら唱えられるよ」
「えっ!? 素質じゃ魔法を全部唱えられないの?」
それは初耳なんだけど。
「中級の魔法までなら素質や素養でも唱えられるからね」
俺が今持っている星3までの魔法は全部中級以下。
モンスターだから少し違うかもしれないが、今回のユニコーンが星3で上級だから、魔法も星3で上級があるかもしれない。
まぁ基本的には上級は星4以上だと思うので、今のところ関係ないか。
残りの固有スキルは浄化と加速。
浄化は毒素を取り除くスキル。
スキルレベル次第では、毒の水を清らかな水へと変化させることが出来るらしい。
もしかしたら水道水を上質な水へ変化させたり出来るかもしれない。
加速は一時的に走る速度が上がるスキル。
ラビットAが先日使ったフェザータップの魔法のような効果があるのかな?
ちなみに個別スキルの逃走加速は逃げる時限定で加速するので、加速を持っている時点で完全下位スキル……死にスキルとなっている。
あとは……説明文にもあるように、心を許すのは清らかな乙女だけということ。
カードモンスターだから大丈夫だと思うが、少し怖いな。
もし懐いてくれなかったら、最悪更に合成して別のモンスターにする必要がある。
「ねぇシュート。流石に外に出て呼び出さない?」
「……そうだな」
ワイルドホーンとビッグラビットでギリギリだったんだから、その2体の合成でできたユニコーンをリビングで呼び出す勇気はない。
****
俺は外に誰もいないことを確認してユニコーンを召喚する。
「……やっぱりデカかったな」
「……おっきいね」
まぁ大きいと言ってもワイルドホースよりも少し大きいくらいだが。
だけどリビングで呼び出していたら、きっと角が引っかかっていただろうな。
「……触っても平気かな?」
とりあえず近づいてもユニコーンに暴れる気配はない。
俺は恐る恐る触ってみる。
「……大丈夫そうだな」
俺はそのままユニコーンの正面に回ると、ユニコーンが俺に顔を擦り寄らせる。
「おお……俺が男でも大丈夫なのか?」
うなずくユニコーン。
……やっぱり喋らないか。
「声が出ないわけじゃないんだよな?」
うなずくユニコーン。
声は出るらしい。
「戦闘とかで雄叫びと威嚇は出来る?」
うなずくユニコーン。
戦闘時は声を発することが出来るらしい。
「今ここで鳴いてくれって言っても……」
首を振るユニコーン。
どうやら鳴けないらしい。
これだけ意思疎通できても鳴けないってのは何が原因なんだろうな。
「まぁいいや。これからよろしくな」
擦り寄るユニコーン。
うん、意外と人懐っこい奴じゃないか。
俺はレッドボアに礼を言って荷車を外す。
今回レッドボアには世話になったな。
きっと今後もお世話になると思う。
その時はまた頑張ってもらおう。
そして荷車をユニコーンへと付ける。
うん、ようやく本当の馬車になったな。
荷車はボロっちいのに馬は立派でアンバランスだけど。
そのうち荷車の方も、ユニコーンにあった豪華な作りにしたいな。




