第23話 特殊個体
本日1話目の投稿です。
ラビットAが家出をするアクシデントがあったが、気にせずにモンスターの合成を続けることにする。
とりあえずキラーホーネットが星2だったため、もう一段階進化できると読んで、もう1匹キラーホーネットを作り、キラーホーネット同士で合成する予定だ。
キラービーは10匹以上いるため、あと何匹かキラーホーネットにしてもいい。
そう思い行動を開始したのだが……
「あれ?」
合成結果がキラーホーネットじゃなかった。
――――
サイレントビー
レア度:☆☆☆
固有スキル:マヒ攻撃、消音、隠密
キラービーの特殊個体。
通称暗殺蜂。
完全に気配を消して確実に獲物を仕留める。
キラービーよりも数倍強いマヒ毒であるため、全身マヒにより、そのまま死に至る獲物も少なくない。
完全に気配を消せるため、一度獲物と認識されれば上級モンスターでさえ、生き残るのは困難だろう。
――――
キラービーよりも小さい個体だが、書かれていることがヤバすぎる。
「なぁナビ子さん。なんかとんでもないモンスターが生まれたんだけど……これもランダムな結果なの?」
「ふふっ一緒に出たレシピカードを見てみてよ」
俺はレシピカードを確認する。
「……はぁ。なるほどな」
レシピを確認すると、サイレントビーの合成条件に消音と隠密があった。
消音は自分が発する音を周りに届かなくするスキル。
これがあれば羽音が聞こえなくなる。
隠密は気配を消すスキル。
完全に気配を消すことで、その場にいても相手に認識されないスキル。
姿が消えるわけではないが、相手には完全に見えなくなるらしい。
ただし物音などを立てると気づかれる恐れがある。
だから音を消す消音と組み合わせることで、相手に全く気づかれる要素が無くなり、完全なる暗殺蜂となる。
まぁサイレントビーのカードの所有者である俺や、サイレントビーが許可した仲間モンスターにはスキルを発動しても認識できる。
「そういえば、さっき合成したキラービーがその2つのスキルを持ってたな」
大量にキラービーが追加されたが、個別スキルはそれぞれ違う。
その中に消音のスキルを持ったキラービーと隠密を持ったキラービーがいた。
もちろん今回は何も考えずに合成していたが。
「なぁナビ子。今更なんだが、モンスターのスキルって合成したらどうなるんだ?」
俺がそう言うと呆れたようにナビ子が言う。
「本当に今更ね……合成元のモンスターが持っているスキルは一部、合成後にも引き継がれるわ」
「一部……全部じゃないのか」
「うん。でも……それでも大体所持スキルを7~8割は継承されるけどね。あとスキルを持っていたら継承0にはならないよ。今回は元々キラービーCが隠密、キラービーDが消音を持っていて、1個ずつ継承した形になるよ」
「……じゃあ、もしキラービーCが他にも……たとえば加速とか持ってたら、隠密じゃなくて加速が継承される可能性があったのか」
7~8割なら両方継承される可能性もあるが、片方しか継承されないこともあるんだろう。
「そういうことになるね。そして、もし加速だけ継承されちゃったら……その場合はサイレントビーじゃなくて、キラーホーネットに、もしくはさらに別の個体になってたかもね。ただ、サイレントビーのような特別な条件があれば、ランダムじゃなくて、そっちが優先されるよ」
つまり今回は条件が揃っていたからキラーホーネットには絶対にならなかったってことか。
しかし……こんな特殊な条件があるなら、迂闊にスキル持っている固体の合成ができなくなる。
「それから、合成することで全く新しい個別スキルを手に入れることがあるよ」
じゃあ今回は加速のスキルを持っていなかったが、合成した時に個別スキルで加速を手に入れた可能性もあるのか。
マジか……合成……奥深すぎだろ。
「まぁ条件なんて分かんないんだしさ、今は気にせずどんどん合成させて戦力を整えた方がいいよ!」
「……そうかな?」
勿体なくないか?
「そうだよ! そもそもどんな特殊固体がいるかも分かんないのに、取っておく意味ないよ」
確かに。
現時点でどんな条件でどんなモンスターが出来るか分からない。
今はゴブリンを倒さなくちゃいけないのに、勿体ぶってたらいつまで経っても倒すことが出来ない。
仮に今すぐ山を下りて、街の図書館やギルドに行けば、モンスターの情報は見つかるだろう。
そこからどんな条件で特殊個体が出来るか判断できそうだが……
山を下りるのは最低限ゴブリンを倒せるくらい強くならないと。
要するに今は調べることが出来ないから気にせずどんどん合成していけってことだ。
「それに特殊固体なんかはスキルカードが充実してから、狙って生み出すものだよ」
なるほど。
ここでセットが役に立つのか。
モンスターにスキルをセットしてから合成させる……と。
「なぁナビ子。たとえば今回隠密のスキルを持っていたキラービーCに、消音のスキルをセットさせたらどうなってたんだ?」
「どうなるって……普通に隠密と消音のスキルを持ったキラービーになるだけだよ」
鉄の剣のたとえのように、元に付与されるだけで別の物になる訳ではない。
「だけどそこから自力でサイレントビーに進化はしないのか?」
だけど鉄の剣と違ってモンスターなら条件が揃えば進化するんじゃ……
「前も言ったけど、この子たちは召喚獣みたいなものなの。キラービーとして強くなることはあるけど、進化や……年齢の成長はないんだよ」
仮に野生のキラービーがスキルを所持していたら、成長すれば進化できるらしい。
が、モンスターカードのモンスターは厳密には生きているわけではないから、成長することはない。
ただ戦闘経験は積めるから、強くなることはできる……と。
そういうことらしい。
「じゃあセットじゃなくて、キラービーCと消音の合成ならどうだ?」
合成ならセットと違い別の存在になるはずだ。
「それは……条件が合えば大丈夫だよ。サイレントビーのレシピにはキラービー個体が2匹とか条件がついてれば無理だし、1匹なら条件を満たしてるしね」
俺はもう一度レシピを確認する。
サイレントビーの合成素材は消音と隠密のスキル。
それからキラービーと1匹と蜂系モンスターと書いてある。
「これならキラービー1匹とキラービーを含む蜂系のモンスターの2匹が必要だから、スキルカードだけじゃ駄目だね」
「駄目だった場合は……まさか失敗?」
「いや、多分他の条件に合う進化先か、セットと同じ効果になるはずだよ。キラーホーネットは星2以下の下級蜂モンスター2匹だから、キラーホーネットも無理だし……今回はセットと同じ効果だったかもね」
なるほど……キラービー1匹だけで進化できる個体か、最悪でもセットと同じ効果か。
なら普段はなんにせよセットじゃなくて、合成の方がいいな。
「あっもちろん合成だと、モンスターじゃなくて、スキルカードになる可能性もあるからね。消音のスキルカードと隠密所持のキラービーで忍び足のスキルカードとかね」
……前言撤回。
モンスターカードにならないのはリスクが高い。
合成はセットの上位互換とは考えない方が良さそうだ。
とりあえず、このままキラーホーネットを3匹まで合成する。
そのままキラーホーネット同士を……は保留にした。
まだキラーホーネットの性能を確認してないしね。
なので先に別のモンスターを合成することにした。




