PLAY27 世界(アズール)の動き②
「おぅ……」
「お、花魁……?」
男性であるアキにぃとキョウヤさんはお魚の人――ウェーブラさんを見て目を点にしていた。
その人はまるで宙に浮いているかのようにふわふわと浮きながら私達をじっと見て、すっと妖艶な香りを出しながら受付の人を見た。
メグちゃんと同様に宙に浮きながら……、だけどね。
受付の人はウェーブラさんを視認した瞬間、ぎくりと肩を震わせる。
ウェーブラさんはすぃーっと浮きながらその人に近寄って、トンッと机に体を預けるように、体をくねらせながら話を始めた。
「ねぇ。なにしていたの?」
「え? あ、あの……ギルド長……、どうしてここに?」
「お忘れ物を。取りに来たの。あれがないと。始まらないというか。というか。わたしのおとぼけさん。よね」
「えっと……あっと……」
「ねぇ。坊や……。さっき。誰かの声がしたの。床から。しかも。バトなんとかって」
その言葉に周りがざわつき、冒険者の人もその声を聞いて振り向いた。
冒険者の人達に至っては……、なんだろう? どうしたんだろうという興味本位のそれだった。
その他の人達は、顔を恐怖と焦りで歪ませていた。私はそれを見て、あまりの対極のそれを見て……。
おかしい。そう確信してしまった。
おかしいと思ったのは……、冒険者以外の人、アクアロイアの人達。
さっきのバトラヴィア兵の時も変だった。変、というか……。あの眼は異常だ。
最長老様が言っていた、アクアロイアは腐っているのと関係があるのかな……? そう思っていると、受付の人は引き攣った笑みで「あ、あ、あはは……」と、青ざめながら笑って、こう言う。
弁解……。の方がいいのかな……?
「い、いえ……、そのアクアロイアに侵入していた人を捕まえた人がいて、その人達にその……謝礼金を」
「でも。そのことについて。わたしに言えば。済む話でしょ?」
「う」
でも、ウェーブラさんは柔らかい音色で詰め寄る。それはまるで、尋問されているような雰囲気で、あ。ウェーブラさんの尻尾、なんだかフリフリとして床に『ぺちん』と叩きつけている。
あれって、キョウヤさんと同じように、怒っている合図なのかな……?
そう思ってシェーラちゃんを見るけど、シェーラちゃんは私が言いたいことを察してか、首を横に振るだけだった……。
そんな私達のことを見ずに、ウェーブラさんは話を続ける。
「わたし。今から王都に行くんだから。そのことも踏まえて。ちゃんと言わないと。ね?」
「う、う……」
受付の人は唸り始める。
というか……、今王都って……、もしかして……。
「理事長が言っていた……、あの『王都ラ・リジューシュ』の事かな……?」
「確か、そこを中心にアズールができたっていう設定のはず……」
アキにぃとキョウヤさんが離しているのを聞いて、私は思い出す。
王都ラ・リジューシュ。
このアズールの中心国で、王都。きっと、そこにはきっと……『八神』が……。と思ったところで。
「あ」
私はふと思い出す。
アクアロイアに着く前に、この状況を使って魔導液晶の更新データを見ようと、白い魔導液晶を取り出して画面を見る。
すると――
「?」
首を傾げてしまった。
それを見てか、アキにぃは私に「ハンナ?」と聞いて、私が見ていた魔導液晶を見た。
アキにぃはそれを見て、私と同じように首を傾げた。キョウヤさんもその間から覗くようにして見て……、「んん?」と変な声を上げてキョウヤさんも首を傾げていた。
シェーラちゃんは何も見なかったけど、私達三人は、魔導液晶が壊れたのかと思い、最近訪れた亜人の郷をトンッと押すと、その場所の詳細がブワリと出てきた。
壊れていないようだ。
だったら……、これはいったい……、どういうことなのだろう……。
そう思いながら、再度その詳細を目にした。
通知報告。
『八神』が一体――リヴァイアサンの情報更新。
情報不足により提供が困難な状況です。尚、ガーディアンが潜伏していると推測する『砂の大地』では、魔導液晶と魔導液晶地図の機動ができません。大変なご迷惑をおかけします。
その内容を見るに、本当にそのリヴァイアサンがいる場所が特定できない。
前まではちゃんとその情報は更新されていたはず……、なのにその内容でさえも更新されていない。且つ砂の方では地図も使えない。
一体どうしたんだろう……。何かあったのかな……? と思っている私だけど、すぐにはっと気付いてしまったのだ。地図のことについて……。
今まで魔導液晶地図を使って陸路を通っていた私達にとって、大きな痛手だ。
地図片手に歩んでいたそれが、砂の国ではできない……。
どうしたらいいのだろう……。
そんな突拍子もなく着た不安に駆られてしまった私。アキにぃとキョウヤさんは唸りながらどうするか模索していた。シェーラちゃんは、今まで通りのツンっとした顔で受付の方を見ている。
そう言えば……、受付の方は?
そう思って前を向いた瞬間……。
「あなた達。ね」
「ひゃっ!」
突然だった。突然女の人が目の前に写った。女の子である私でさえも、その至近距離に驚いて後ろに下がろうとしたとき、がつんっと靴底が何かに当たる。そしてそのまま後ろに倒れそうになった時……。
「ほぃっと」
キョウヤさんの声が聞こえて、しゅるりと私を支えるように巻き付いた。
それを見て、私はぽかんっと一瞬呆けてしまったけど、キョウヤさんを見上げて、私は驚きながらキョウヤさんに「あ、ありがとう……ございます」と、お礼を述べる。
それを聞いてキョウヤさんは、心なしか顔を赤くして「いいっていいって。あれは誰だって驚く」と言った。
それを見て、私の前に来ていたウェーブラさんは言う。「あらぁん」と、独特な妖艶な音色で、腕でその胸を支えながら首を傾げて、申し訳なさそうに……。
「ごめんなさいね。お魚の体って。驚くでしょう? 冒険者の世界では。人魚はあまりいない。のよね?」
と聞くと、私は立ち上がりながら「いいえ。大丈夫です」と言う。
頭の片隅で、一体何に当たったのだろうと思いながら……。するとウェーブラさんは「うふぅ」と微笑みながら、くすりと妖艶に微笑み……。
「なら。よかったわ」
と、手に持っていた収納の瘴輝石を、あ。よく漫画で見る胸の谷間に……、むにっと挟めるようにして入れた……っ。
私と、そしてシェーラちゃんは、互いの女としての象徴を見比べ、ウェーブラさんのそれを見る。私はララティラさんのそれを見ているので……、この思いをするのは二度目……。
そう。シェーラちゃんも思っていたのかもしれない。ぐっと握り拳を作って、少しむっとして、悔しそうに……、小さい声で――恨めしく……。
発育の暴力。
と言った。
私もそれを思ったのは……、二度目です。うん。
「てか、今何を……?」
そうアキにぃが聞くと、ウェーブラさんはするんっと浮かびながらアキにぃに近付いて、そのまま……。
「うひゃぉうっ!?」
アキにぃはその感触に驚きながら、顔を真っ赤にしてしまう。
それもそうだろう……、なにせ、ウェーブラさんはアキにぃに抱き着いて、すごい密着具合でアキにぃの耳元で小さく……何かを囁いていた。
それを見てキョウヤさんはぎょっとして驚いていたけど、冒険者の人達はそれを見て……。あれ? アキにぃと同じように『ぐぎぎぎぎぎぎっ!』って唸っている……っ!
ど、どうしたんだろう……。そう思っていると、するりと、ウェーブラさんはアキにぃから離れる。アキにぃはへにゃんっと尻餅をついてしまい、キョウヤさんはアキにぃの肩を叩いて「よく耐えたっ」と称賛していた。
すると、ウェーブラさんはふわりと飛んでいき、私達を見ながら、じっと、妖艶で、吸い込まれそうな雰囲気の顔で、私の顔を見て……、一言……。
「ほんと。似ているわね」
「え?」
その言葉に対し、私は一体何のことなのかと聞こうとした時、ウェーブラさんはにこりと微笑んで、私達から顔を離して……。
「なんでも。ないわ。そして。ありがとう。ね」と、ひらひらと手を振りながらお礼を述べた。
私はそれを聞いて、「あ、あの……その」と言うとその人は私の唇に、人差し指を近付けて、ふにっと触れる。
そのせいで、それ以上の言葉は紡がれなかったけど……、ウェーブラさんはくすりと妖艶に微笑み、それからこう言った。
「あなた――悩んでいる?」
「!」
その言葉に、私はどきりとした。それは気付かれてしまったという焦りのどきりである。それをきいた私は、なんとか言葉を紡ごうとしたけど、唇に当たる指のせいで開かない。
なんだか……お口チャックされているような……。
そう思っていると、ウェーブラさんはそんな私を見て妖艶に、そして愛おしそうに眺めながら小さく可愛いと言って、ウェーブラさんは私の耳元に、そのぷるんっとした唇を添えてきた。吐息が耳に来る。
それを感じて、私はどきんっと驚いてしまったけど……、ウェーブラさんは平然としながらこう言った。
「わたしね。占いやっているの。その占いで。こう出てきたの。『話した方が大吉』って。あなた……。最強さんと一緒にいるのよね? 魔力でわかっちゃった。そして……。まぶしいわね」
「………………………?」
「それ。叶うといいわね。最強さんと。仲良くね。」
そう言って、私からすぐに離れたウェーブラさん。それを聞いて、私はそんなウェーブラさんを見上げながら呆然としていると、ウェーブラさんは受付の人に向かってこう言った。
「今から。わたし。王都に行くから。くれぐれも粗相がないように」
『はいっ!』
そう受付の人達は急に立ち上がり、そしてびしっと敬礼をするように返事をする。それを聞いて、私達は呆然としていると、ウェーブラさんは付け加えて……、「それと。何かがあっても。あれは駄目。ね」と、念を押すように、少し低く言いながら微笑んだ気がした……。
それを聞いて、受付の人達は再度元気よく返事をして、若干だけど、震えながら頷いていた。
ウェーブラさんはそれを聞いて、うんうんっと頷いて、それからすぐにすぃっと浮かびながら外に出ようとする。それを見て、私は慌てて聞いた。
「あの……、王都で、何が……?」
すると……、ウェーブラさんは振り向いて、扉に手を付けて、開けながらウィンクをして――妖艶にこう言った。
「国王会議」
□ □
国王会議。
それを言って、外に行ってしまったウェーブラさん。
アキにぃはがくりと肩を落としながら、憔悴しきった顔で「疲れた……」と零す。それを聞いて、キョウヤさんも頷きながら「だよな」と頷いていた。
今現在、私達は足湯を堪能していた。
その理由はたった一つ。ウェーブラさんの過激だけど悪気がないスキンシップに疲れてしまったから。
シェーラちゃんがそんな私達を見て何かを思いついたのか、ギルドの足湯を指さして――なんだかウキウキしている笑顔でこう言った。
「疲れているのなら――温泉に浸かりましょうっ! 絶対に疲れとれるから!」
と言うことで、今私達は靴を抜いて、足湯を堪能していた。
日本にも温泉街はある。そして足湯もあるけど……、ここはゲームの世界。VRなのに、すごく熱くて、気持ちいい。私は「ほぉ」と溜息を吐いて肩の力を抜く。
足から伝わってくる熱。そしてどんどん体温が高くなって、体中がポカポカと湯気を出しそうになる。
すごく気持ちいい。今までこんな風にゆっくりと浸かることなんてなかったから……。
「しっかし。いい湯だな」
と、キョウヤさんはズボンを捲りながら尻尾をフリフリと動かして、腕を組みながらまったりとして言うと、同じように足を捲っていたアキにぃも「うん」と、膝に腕を乗せながら――
「まさかゲームの世界でこんな風にお風呂に浸かれるとは……、というかゲームの世界でお風呂と言えばあれだけしか思いつかないしね」と、溜息交じりに言う。
それを聞いてキョウヤさんは、少し青ざめながら目を点にして……。
「あれを女の子の前で言うのは……、ちょっとな」
と、明後日の方向を見てしまったキョウヤさん。アキにぃははっとして私達の方をグリンッと顔をこっちに向けて、焦りの表情でわたわたと弁解していた。
内容はアキにぃが早口で、そして何を言っているのかわからないようなもにょもにょだったので、内容までははっきりとわからなかった。私はアキにぃに「大丈夫だよ」と首を傾げながら控えめに微笑んだ。
シェーラちゃんは、なんだか足に浸かりながらむすっとしていたけど……。
あれとは、なんなのだろう……。
そう思っていると、キョウヤさんはちらりと、受付の人を見て、私達にしか聞こえない音色でこう耳打ちをする。
「さっき、バトラヴィアのことを話したら、空気が変わったよな……?」
「……そうね」
その言葉に、シェーラちゃんは温泉に浸けていた左足を『ちゃぷん』と上げる。その温泉の水がついた足を見ながら、シェーラちゃんは小さく、凛々しい声でこう言った。
「アクアロイアは散々バトラヴィアにこき使われたから……、鬱憤と言うか、その怒りをぶつけないと気が済まないのよ」
「………………………なんで」
「「「?」」」
私は、三人の疑問の顔を見ないで、自分の膝を見降ろしながら、小さく……言った。
「…………なんで、傷つけあうんだろう……。そんなことをしたら……、どっちも苦しいのに……」
そう言う私の肩を叩くアキにぃ。
それを感じて、私は顔を上げて控えめに微笑みながら「ありがとう」とお礼を言う。アキにぃはそんな私を見てにこっと微笑んでいたけど……、すぐに真剣な目になって――
「でも、何となくだけど……、その気持ち、わからなくもないんだ」と言った。
「ほう。なんでだよ」
キョウヤさんがアキにぃの顔を覗くように、前のめりになってアキにぃを見ると、アキにぃは腕を組みながら思い出すように「えっと」と言って――
「ほら、亜人の郷でジンジって人と出くわして、その人はその……俺の親に相当な怨みを持ってて、たとえ復讐を果たしたとしても、生前散々こき使われたらしくて……、家庭も、すべてが失ってしまったって言って、俺に対して、あろうことか、橘一家全員を恨んでいるみたいだった」
「相当憎んでいたのね」
「てか、その人の怨み半端じゃねえな……。コウガもその分類だったけど……、それ以上だな」
シェーラちゃんは驚きながらまた足を温泉に浸ける。キョウヤさんは天井を見上げてコウガさんのことを思い出しながら言うと、それを聞いて、アキにぃは頷いて、そして口を開く。
「でもさ……怨みって言葉で言うと、すごく恨んでいたんだねって言える。でも、受けた人にとってすれば、そんな軽いものではない。言葉では表せない。膨張した憤りが爆発したようなとか言えないし、静かなそれでもない。何より……その人が抱えている憎しみとか怨みは――簡単に口にしてわかるようなものではない。と、俺は思うんだ」
その頃場を聞いて、私はぎゅっと膝の上で握り拳を作る。
アキにぃの言葉を聞いて、確かにと思ってしまった。
人の恨みや憎しみは自分にしかわからない。
他人に言ったとしても、分かり合えないところもある。
見解の違い。なのかな……。
私は怨みとかは……、無いと思う。
でも、それは自分しか知らないのだ。
自分の心のことは……自分しか知らない。
当たり前な話だけど、それがが普通なのだ。自分の心の炭は、自分にしかわからない。
炭が多ければ多いほど、怨みも拡大して、抑えきれなくなる。そして暴走してしまい、感情の思うが儘……、その人に復讐するだろう……。
アキにぃが言っていたその人のもしゃもしゃを見て、私は思った。
どろどろとなってしまった黒すぎるもしゃもしゃ。それはもう汚れとなって消えないそれと化していた……。きっと感情の思うが儘行動して、壊れてしまった悲しい人だったんだ……。
アキにぃは続ける。
「シェーラ。アクアロイアの人達は、バトラヴィアの支配下に置かれている。だからアクアロイアの王様は『六芒星』に加担して、バトラヴィア帝国を滅ぼそうとしているって」
「ええ」
「それって――一種の復讐だ。そして、その復讐の火種が、国民やギルドの人達に伝播して、そして……、これは俺の憶測だけどさ……。もしかしたら、この下には地下があって、その場所でもしかしたら…………ごめん」
アキにぃは謝った。
アキにぃが言いたいことはわかった。こんな日和の私でもわかった。そして、最長老様が言っていた『腐っている』その言葉の真意もわかった。
合点した。
簡単に言うと、アクアロイアの人達はバトラヴィア兵にひどいことをしている。
それは、言葉では言い表せないような……、自分達がされたことと同じ……、痛いこと、苦しいこと、いやなこと、悲しいことなどなど。
目には目を。歯には歯を。
バビロニアの復讐方法になぞらえた方法で、復讐をしているんだ。
歪んでしまっているのは、バトラヴィアでもあり、アクアロイアでもあり……。この国――アクアロイアが……、歪んでしまっていたのだ。
最初の出来事が、それを頷け、『六芒星』は根城を設けてもらっている代わりに、アクアロイアの復讐の手助けをしているんだ。
自分達もそうされたんだ。だからお前達にもしてもいいだろう。だって――苦しいって言っても、やめなかったんだ。
死ぬまで――やめない。その意志を持って――
「…………………でも」
シェーラちゃんは口を開いた。私達はシェーラちゃんを見る。シェーラちゃんは腕を組みながら、複雑な顔をして、私達を見てこう言った。凛々しくて、それでいて苦しいような音色で……。
「やっていることは外道の行為よ。他人にされたから自分たちもそうする? 子供じゃないのよ。意趣返しとでも言いたいの? 力をつけたとたんに殴り返して、同じことで殺し合う? ふざけているわ」
「そうだけど……、一応言うぜ?」
そうキョウヤさんは肩を竦め、不甲斐なさを感じている顔でこう言う。
「オレ達一端の冒険者に、何ができるってんだ?」
それを聞いて、私とアキにぃはぐっと言葉を詰まらせる。キョウヤさんの言うとおり、確かに何もできないのが現実だ。
この国が狂っているのはきっと他の冒険者だって知っているはず。でもしないのには理由がある。それは――同じ理由で……。
自分達には何もできない。
そう決めつけて、何もしない。
何も……できない。
「無力。とでも? そんなことで終わらせないわ」と言って、シェーラちゃんははっきりとした音色で、私達に対して怒りの眼で見つめて――こう言った。
「私は何が何でも、『ネルセス・シュローサ』を何とかする。そして、アクアロイアの王様に話をするの。こんなことをしても無駄だって。怨みで動いてはいけないって。もう一度考え直してって――話し合うの。それが……もっとも心に響く方法で、傷をつけずに解決できる、唯一の方法よ」
「これぞ――正義の御心だな」
違和感を覚えた。というか聞こえた。私達以外の声が。
それを聞いて私はアキにぃ達を見ると、アキにぃとキョウヤさんは首を横に振っていた。目を点にして、次にシェーラちゃんの方を向いた瞬間……。
ざぱっと、足湯から足を出して、びちゃびちゃの足で立ち上がって、シェーラちゃんの向こうにいた大きな人は、私達を見降ろしてこう言った。
その人は、ヘルナイトさんと同じ身長の人で、白銀だけど……、ヘルナイトさんが銀が勝っているけれど、この人は白が勝っている鎧を着ている長身の人で、赤いマントをはためかせながら、その人は私達を見降ろして腕を組み、胸を張りながらこう言った。
「その揺るがない意志……、まさしく正しき心を持っている者の象徴。素晴らしい心がけだ」
アキにぃ、シェーラちゃん、キョウヤさんが、よく漫画で見る目が点の状態でその人を見上げながら固まっていた。
私はその人を見上げてぽかーんっとしていると、鎧の人は私を見降ろし、つかつかと私達の前に立てるようなところまで歩みを進めながら……。
「そこの少女もだ。清らかに他者を思う。エルフの青年も、蜥蜴の亜人の青年も……、いい心構えをしている! 正義とはまさに、清き者が持つ象徴だ」
と言って、ざっと前に立ったその人。足湯を挟めて。その人は大きな声で「申し訳なかったっ!」と言って……、その人は鎧の甲冑の部分をそっと持ち上げた。
すると……、鎧の中から小さい桃色の子犬が顔を出した。
「わん」と、可愛らしく鳴いて。
それを聞いて、ナヴィちゃんが顔を出してなんだろうと思ったのだろう。そんな目で見ていると……、鎧の人はその子を肩に乗せて……、高らかにこう名乗った。
「私は正義の冒険者――SK! そしてこの忠犬は私の相棒――さくら丸っ! 悪が蔓延るこの世を撃ち滅ぼす者であり、正義のために、悪を討つ者――だっ!」
「わぉーんっ!」
所々のセリフの時、決めポーズをとりながら自己紹介をしていた鎧の人……、SKさん。
それを見て、私は目を点にして聞いていたけど……、アキにぃを筆頭に三人がばしゃりと足湯から上がって、アキにぃは私を、キョウヤさんはシェーラちゃんを抱えて……、靴をすぐに履いてそのまま……。
ダッと駆け出して、その人から逃げるように――というか全速力で逃げた。
「変人だわっ!」
「だね! 変人だね! すぐにこの場から離れようっ!」
「ヘルナイトォーッ! すぐにこの場所から離れるぞっ!」
「? あ、ああ」
ヘルナイトさんは今までギルドの外で待機していたから、理解ができない中アキにぃ達に従うように後を追って走った。
「え? あ、ちょっと待てっ! 私は怪しいものではない。私は正義の」
「「「それを言った時点で怪しいってっっっ!!」」」
そんなことを言い残して、その場から逃げるように私を抱えて逃げ出したみんなだった。
それ以降その人と接触を避けるように旅支度を早めに済ませて……、あっという間に夜になり、旅館に飛び込むように逃げた……。
◆ ◆
そんなひと悶着から時間を少し遡り……、場所を――王都に変える……。




