PLAY26 アキⅡ(決意)⑤
――一気に五人! しかもあの最強ENPCのヘルナイトまでいるっ!?
突然の不運……。否、この場合は着てしまった援軍もとい増援と言った方がいいだろう。
ジンジがあまりにアキに対して執拗に攻撃したのが悪かったのか、または夜というこの状況を考慮せず、ただでさえ奇声がひどく大きい『狂喜の樞人形』と『壊滅殺人兵器』を出したのが悪かったのか……、それぞれどちらが悪かったのかと聞かれれば後者だろう。
ハンナ達がたとえ郷にいたとしても、あの奇声はきっと郷の仲間で聞こえる声量だったのだ。
だからここまで来てしまった。
それがジンジが予測した答え。
「………っそがぁ!」
ジンジは歯を食いしばりながら焦りが含まれた怒りの目でアキ達――ハンナ達を見た。
ハンナはアキを見て心配そうに「大丈夫……?」と声をかけると、アキはそれを聞いて力なく笑いながら「平気だよ」と言った。
それを聞いていたキョウヤはアキの方を振り向き一瞥した後すぐに前を向き、シェーラに聞く。
「シェーラ、あいつは誰だ?」
その言葉の真意は簡単なもので、シェーラにあの男は『ネルセス・シュローサ』の誰なのかと言うことを聞いたのだ。
シェーラは『ネルセス・シュローサ』の情報を一部だが知っている。
ユースティスやムサシの時もそうだったのだ。
キョウヤはそれにかけて、なんとか作戦を立てようとした時……、シェーラははっきりとした音色で――
「知らない」と言った。
それを聞いたヘルナイトと最長老は頭に疑問符を浮かべていたが、キョウヤはそれを聞いて目をひん剥くような顔でシェーラに怒鳴りながらこう言った。
「うぉいっ! はっきりと言うなお前はぁ! 少しは情報をくれって! お前『ネルセス・シュローサ』のこと知ってんだろうっ!?」
「私が知っているのは一部。そしてあいつは『ネルセス・シュローサ』に入っていないわ。さらに言うと、私はあなたのお母さんじゃないわ。なんでも知っているAIでもないんだから、少しは自分で調べるとかしなさいよ」
「正論だったわ……っ! なんかごめん……っ!」
そう言ってぐっと歯を食いしばって謝るキョウヤ。
シェーラの目から読み取ったその感情は、とてもじゃないが射殺さんばかりの氷のような冷たさを持った目でキョウヤはそれを見てシェーラの本気の怒りを垣間見てしまったのだろう……。
素直に謝る選択肢をしたのだ。
それを聞いて、ハンナはシェーラにおずおずと聞いた。
「それって……、その人はプ……。ううんっ。えっと、冒険者で、『ネルセス・シュローサ』の人じゃないってこと?」
それを聞いたシェーラは頷いてじっとジンジを見る。
かちゃっと剣を握る力を入れて……、ハンナの上ずる声を聞いて、不意に可愛いと思ってしまったが、それを心にしまって彼女は言った。
「私が知っている限り……、『ネルセス・シュローサ』の構成員のアバターは……、一部例外だけど魔獣族で形成されているの。理由はゲテ物好きだからと私は推測している。『ネルセス・シュローサ』の幹部全員魔獣族だけど、途中から入った人達は亜人や魔人だけど……、人間とエルフは入れないように徹底しているわ。ネルセスの趣味に反するのか……、もしかしたら別の理由でそうなのかもしれないけど……、ここまではわからないわ。だから……」
シェーラはじっとジンジを睨む目つきで見て (彼女は睨んでいない。見ているだけだである) 、彼女ははっきりとした音色で、冷静な面持ちでこう言う。
「この男は人間族。あんたに問うわ。あんたは一体……どこから来たの?」
それを聞き、ジンジは「ククッ」と悪役が笑うその言葉で、喉で笑いながら顔に手を当てて震える声色でこう言った。
「あぁ……っ。そうか……、そうなのか……っ! 君はソロのシェーラちゃんだね?」
「っ。だから……?」
シェーラは眉を顰めながら聞く。それを聞いて、ジンジはにやりと、手で隠れている口元を歪ませ、けらけら笑いながら彼はこう言った。
「聞いてるよ……っ! あの人から! ボクはあの人から君のことを聞いているっ! アクアロイアでちょろまかしている雌鼠がいるって……っ! まさかこんなに可愛い雌の鼠だったとは……っ!」
「………………可愛い少女の方がよかったわね」
引き攣った笑みで彼女は言う。
噴き出た脂汗が彼女の頬を伝い、顎を伝い、たらりと重力に従って落ちる。
それを見たヘルナイトはジンジに向かって、凛とした音色でこう言った。
「女に向かってその言葉は心外だ。失礼と思わないのか? 今はシェーラの質問に答えろ」
不覚にも、シェーラは『六芒星』の女性達が思っていた言葉と同じことを思って、内心驚きながら平静を保っていた……。
それを聞いて、ジンジはぐっと片手だったそれを、今度は両手にして顔を覆い隠し、そのままエビ反りになるように体をひねりながら、彼は「そうだね……、そうだよね……っ!」と呟きながら、突然その行動を止めて、彼はぐあんっと前のめりになるようにアキ達に顔を向けた。
アキ達からは距離があるが、それでもジンジは顔を少しでも近づけて、指の間から見える血走った瞳孔で、彼は言う。フィルターがかかっているような声で、彼は言った。
「改めて自己紹介をするよ……っ! ボクはジンジ。エクリスターで今はとあるパーティーと徒党を組んでいるんだ。忘れないで聞いてよ……」
すぅっと、彼は息を吸って――顔を隠していた手を顔の肉を指に食い込ませながら、ズズズッと下に降ろして言って、彼はそんな半分伸びたような顔で狂気に微笑みながら、彼は言う。
「『BLACK COMPANY』――シェーラちゃん。君の質問には答えた。君なら……、この名前を聞けば、なんなのか分かるだろう……?」
それを聞いて、ハンナやアキ、キョウヤは首を傾げていた。ヘルナイトと最長老は、そんなジンジから目を離さず、武器と爪を構えながら警戒していたが……、シェーラは。
言葉を失い、あろうことか呆然とした表情で、たらっと再び出た脂汗を地面に落とした。
「シェーラちゃん……?」
ハンナはそんな彼女を見て、心配そうに聞くと、彼女はハンナの言葉を聞いて、意識を取り戻してから、ガクリと頭を垂れながら……、小さく……。
「最悪」と言った。
それを聞いたアキは首を傾げたが、キョウヤはいち早く動いた。
「今はそれどころじゃねェっ! 動けるなら動けっ!」
キョウヤはアキに向けて、継あるものが入った袋を手渡した。それを見たアキは手に取り、その袋の口をすっと開く。
それを見たアキは――言葉を失い、そしてそれに魅入られてしまっていた。
悪い意味ではない。いい意味で魅入られ、彼は心の底から――キョウヤやみんなに、感謝したのだ。
ハンナはそれを見て、内心よかったね。と思い、控えめに微笑みながら、帽子の中にいるナヴィに向かって「今は出ないでね。危ないから」と優しく念を押す。
それを聞いたナヴィは、帽子の中で一回跳び跳ねて「きゅきゃ!」と、元気よく返事をした。
ナヴィの返事を聞いてよしと思いながら、ハンナはすっと手をかざしながら、きゅっと顎を引く。
ヘルナイトも大剣を構えてシェーラを見ないで、シェーラに「動けるか?」と聞く。
それを聞いたシェーラは首を横に振って、両手に剣を構えながら彼女はそれを掻き消すように大きな声で――「全っ然余裕じゃないわねっ! でも心配ありがとう!」と言った。
それを見て、ジンジはばちんっと顔を引っ張っていた手を離して――狂気の笑みで彼は叫んだ。
「最悪と思っていたけど、ボクは幸運だよぉっ! 何せ……、怨敵に加えて、要注意人物をここで生捕ることができるからさぁっ!」
そう言った瞬間、ぐあっと襲ってくる『狂喜の樞人形』。武器は壊れてしまったが、それでも十指……、否、この場合は二十指なのだろう。
四本の指を引っ掻くような手つきにして、『狂喜の樞人形』はアキ達に向かって襲い掛かってくる――
『キャハハハハハッ! 『戯れ指遊び』っ!』
けらけら笑いながら襲い掛かっている『狂喜の樞人形』。それを見て、シェーラとヘルナイトは横に薙ぐように、自身の方に剣を向けて抑え込むように構える。
が――
その二人の前に出たのは……。
「ここで止めとく。その隙を突け」
手の指を鳴らしながら前に出るキョウヤ。それを見て、ハンナは「キョウヤさん……っ!?」と、彼女は心配な音色と顔で言った。それを見て、キョウヤは彼女の顔を、皆の顔を見ずに、左手を出してひらひらと振りながら――
「ちょっと……、試したいことがあってな」と言った。
それを聞いていた最長老は、ぐるるるっと唸りながら、彼はキョウヤを見て言う。怒りの眼で、彼は――
「何を試すというのだっ! 貴様の力は常人並みであろうに。うぬぼれるな若造めっ!」
だが、キョウヤは尻尾に絡めていた槍を、地面に深く突き刺し、その槍を尻尾で絡めたまま、彼はぐっと、腰を下げる。それはまるで……関取が踏ん張る時の体制であった。
それをしながらキョウヤは言う。
「今回は、オレが止め役だ」
「とかかっこいいこと言うなってぇっ! 惚れそうになっちゃうよぉっ!?」
ジンジが叫んだと同時に、『狂喜の樞人形』も昂揚し、気持ちを高ぶらせながら、二十指の爪を立てて、キョウヤに襲い掛かる!
が――
キョウヤは右手をゆっくりと、ジンジ達に気付かれないように、首に巻かれているチョーカーに、指先だけで触れた。
刹那。ちかりと、嵌め込まれている石が光ったと同時に――
「マナ・エクリション――『肉体強化』」
キョウヤが言ったと同時に、体中の筋線維が膨張した気がしたキョウヤ。そして、みしみしと筋肉が悲鳴を上げる。重ねてそして――
力が漲る。そうキョウヤは思った。
よくよく聞く王道のセリフだが……、それでもキョウヤはこれで行けると確信し、迫り、攻撃を仕掛ける『狂喜の樞人形』のその四本の手を……。
ちゃんと目で捉えて、一本の手で二本の手首を掴みあげて――その勢いを、押し出す力で相殺する。
ズンッとくる前からの衝撃。そして槍にかかる重み。支えとなっている槍に絡みつきながらキョウヤはそれを抑え込む。尻尾にめずらしく、青筋が立つ。
だが、キョウヤはそれを抑え込む。拮抗を保つように、彼は抑え込む!
それを見たジンジは、狂気の笑みのまま固まり、焦りをじんわりと出しながら……、彼は歪ませる。
ハンナ達はそれを見て、言葉を失ったと同時に、シェーラ、最長老、ヘルナイト以外の二人はそれを見て辻褄が合った。
キョウヤが触った個所は首――チョーカー。
そのチョーカーに嵌められていた石は……、サラマンダーからもらった『肉体強化』の瘴輝石だった。
ハンナはそれを見て、ほっと胸を撫で下ろしたと同時に――
「――今だっ!」
キョウヤが叫んだ。
それを合図に、ついさっきまで固まっていたシェーラもすぐに気持ちを切り替え、さっきまで構えていた姿で、ダンッと駆け出し、ヘルナイトも駆け出す。さらには最長老までも――
シェーラとヘルナイト。二人は一糸乱れない動作で、息が合っている動きを繰り出し、『狂喜の樞人形』の両手に剣を向けて……、キョウヤが離して、バランスを崩した隙に――キョウヤの脇をすり抜けるように。
ザシュッと二人の剣が腕に食い込み……、そのまま二人は駆け出す!
肉が切れる音。吹き出さない血液だが、それでも痛覚はある。
手首が切れ、両脇から深く剣が食い込んで裂かれる。
とてつもない痛みだろう。それを物語るように……、ザシュンッと、二人が『狂喜の樞人形』にその脇を切り裂き終えて、地面を滑りながら止まると……。
『キィヤアアアアアアッッッ!!』
奇声、叫びが――激痛、電流、鈍痛、疼痛が『狂喜の樞人形』の体の状況を知らせる。
ぐわりと体を起こし、その状態で『狂喜の樞人形』は抑えるそれを失った腕で押さえようとしたが、叶わなかった。
血は死霊族のように出ないが、それでもうねうねと、斬られたところから黒い触手のようなものが出ている。それを見て、ジンジはすぐに手をかざしてスキルを発動させようと口を開いた。
が――
目の前に広がるそれを見て体が硬直し、言葉を発する筋肉も固まってしまった。
目の前に広がる世界は――大きな口。
獣の――狼の口腔内!
「ぐるがあああああああああああっっっ!」
最長老はジンジの頭を掴み、彼の首元……、人間でいる頸動脈に向けて、鋭い牙が生えた口でその箇所に――
がぶり! と。
ぶつり! と――
噛みついた。
「いぎゃあああああああああっっ!?」
ジンジは叫び、咬まれたところから急かしなく出る赤い液体を見て、彼はぐらりと後ろにバランスを崩し、そのまま仰向けに倒れてしまった。
最長老はがぶがぶと――獣の本能のまま目の前にいる獲物を殺す勢いで、捕食する勢いで、老体とは思えないその勢いと貪りつきで……彼は噛みつきながら唸りながら叫んだ。
がぶがぶと言う表現は可愛らしいが、現実はあまりにも悍ましい光景で、その可愛らしい表現とは裏腹のそれであるが……。
「郷を脅かす異国の者よぐるうううううっっ! はぐっ! ぐるぅ! この場で長であるこの儂が裁きを下そうぞぐるううううがああああっっ!」
「う、う、う、う、う、う、う、うう、ううううううう…………」
ジンジは咬まれながら、どんどん血の気が亡くなるのを感じ、段々と、自身が死に向かって歩みを進めていることが読み取れた。だがジンジも諦めたりはしない。驚いてみることしかできないシェーラ達。シェーラやキョウヤは、最長老の獰猛さを見て、呆気にとられいるのだが、それでもよかったのだ。
ジンジは最後の力を振り絞り、ここで奥の手を三つ――出し惜しみなく出す!
「ううううううあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!」
あらん限り叫んで、彼は懐から出した四本の注射器を出した。叫びながら出して、一瞬気を緩めてしまったせいで、シェーラ達は一歩動きが遅かった。ヘルナイトはそれを見て、大剣を持って駆け出そうとした。
ジンジはそのまま、自身を貪ることしか頭にない最長老の項に向けて、それを突き刺そうとした。
が。
――ばぁんっ!
「――へあ?」
手が熱くなった。否――
ジンジは注射器を持っていた手を見た。すると……、ちょうど注射器を持っていた手に、その手のひらの真ん中に……、ぽっかりと小さな小さな穴が開いていた。
それを見て、己の武器の注射器も、指を巻き込むような攻撃。
否――銃弾。
ジンジは震える瞳孔で、それが放たれた方向を見た。すると、皆がその背後を見て、最長老も口を離して、その背後を見て、言葉を失いながら驚いて――その方向を見ていた。
その方向にいたのは――
「アキにぃ……」
ハンナが小さく、心配そうに、しかし安心しながらアキを見た。アキはそれを手に持ちながら、銃口をジンジの手元に焦点を定めながら、彼はこう言った。
「――やっぱ俺は、これじゃないといけないな」
彼の手に持っていたものは――アサルトライフル銃ではない。『グレンヘレーナ』……に似た、新しいライフル銃だった。
フォルムは『グレンヘレーナ』と酷似している。
しかしその装飾だけは前よりも綺麗になっている。
銀色の本体に混ざるように含まれる黒いアゲート。それがキラキラと光っており、前の銃よりも綺麗になった、新しく生まれ変わったライフル銃をアキは持っていた。
「サンキュキョウヤ。それにしても、生まれ変わってよかったよ。これ」
「いんや――それならガーディのおっさんにお礼言っとけよ。きっと郷で眠りこくってると思うけど」
アキはキョウヤに向かって感謝を述べる。それを聞いて、キョウヤは自分ではなくガーディに礼を言えと促す。それを聞いて、ハンナはくすりと、控えめに微笑んだ。
――よかった。いつものアキにぃだ。と安心しながら……。
ジンジはそれを見て、ぐぅっと唸り声を上げたが……、すぐににやりと口元を歪ませた。
その刹那。
ぐりんっと、『狂喜の樞人形』は首を百八十度回転した後真後ろを向き、彼女は『ウウウウウウウッ』と唸りながら……、ガコンっと顔を展開し――
『キシャアアアアアアアアアアッッ!』
口を大きく開けて、そのままミキサーをするように、背後の正面にいた最長老目掛けて突進する『狂喜の樞人形』こと『壊滅殺人兵器』。
それを見たシェーラははっとして「まずいっ!」と駆け出そうとした時……。
「わっ」
ハンナが叫ぶ。その背後を横目で見て、しまったと思ってしまった。
彼女の背後――ハンナの背後を狙うようにその人物はハンナに向けて、短剣を上から突き刺そうとしていた。その人物は――『六芒星』の、ハンナ達を襲ったリーダーだった。
「あいつっ!」
「まさか……っ! 手を組んで……っ!」
「貸し――作るの忘れてた」
そう最後に言ったのはシェーラ。きっと貸し云々は関係ないと思うが、現状は現状。
『六芒星』のリーダーはハンナにその短剣を突き付けて、両手でしっかり持った後、彼女を脳天から刺し殺そうとして、振り上げていた。
ハンナはそれをみ、ぎゅっと胸の辺りで指を絡めて願うように構えた。
『六芒星』のリーダーの男はぐあっとその短剣を、一気にハンナに向かって振り降ろそうとした。
前方では、『壊滅殺人兵器』が最長老を――
後方では、『六芒星』がハンナを――
まさに絶対絶命。
キョウヤは最長老を、シェーラがハンナを助けようと前に出た瞬間、ヘルナイトは、二人の肩を掴んで静止をかける。それを受けて、ヘルナイトを見上げる二人。そんな二人の焦りを尻目に、ヘルナイトは――
「――大丈夫だ」
凛とした音色で、はっきりと言った。
その理由は……。
アキにあった。
アキはライフル銃をおろし、下に置いてあったその二つを両手で手に取る。
そして――じゃきりと、『壊滅殺人兵器』に、『六芒星』の男に、それを向けた。
ハンナはそれを見て、そしてキョウヤ達も、驚きで目を点にしていた。
アキが持っていたその二つは――拳銃。
右手にはコーフィンが持っていたような『KILLER』と同じフォルム。左手にはアメリカで開発された『スプリングフィールドXD』をモデルにした半自動拳銃。
その二丁の拳銃も、ライフル銃と同じように黒いアゲートが含まれていた。
それを構えながら、アキはすぅっと息を吸い――そして……。
かちりと拳銃の引き金を引く瞬間――
彼は――言う。
「――『必中の狙撃』」
――バァン! バァンッ!
それぞれの銃口から、詠唱である弾丸が放たれる。
それを見て、ヘルナイトは二人を抱えて後ろに避る。
それぞれ、一直線に向かって――『壊滅殺人兵器』の後頭部に、『六芒星』のリーダーの肩に向かって……。
一直線に向かって直撃し、貫通する!
『キィヤアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!』
『壊滅殺人兵器』は、やっとと言うべきなのだろうが、満身創痍で襲い掛かったが、それが実らなかったかのような不完全燃焼のような顔で、黒く変色し、塵となって消えていく。
「ギャアアアアアアアアアアアアッ!?」
『六芒星』のリーダーも叫び、肩から吹き出す血を押さえながらゴロンっと転がってしまう。
それを見て、シェーラ達は言葉を失って、それを見ていた。ハンナもそれを見て、驚いて口に手を当てていた。アキは新たに手に入れ、『グレンヘレーナ』を元に作られたその二丁の拳銃を見て、彼は一言。
「――これも、しっくりくる。そして……、詠唱は銃につき一発ずつ。ってことか」
それを体感しながら彼は納得したような音色で言った。
最長老はそれを見て、血が付いた口を小さく開けて固まっていたがすぐにはっとして、押し倒したジンジを見た。
ジンジは絶句しながら呆然と……最長老を見上げていた。
成す術なし。もう彼に戦う意志はない。復讐も――ここで不完全燃焼として処理され、完遂も叶わないだろう。アキはハンナに支えられながらジンジに向かって歩みを進め見降ろし、ヘルナイト達もジンジを見降ろしながらただ黙っていた。
それを見て、彼は震える口で――一言……。
「ボ、ボクの……まけひゃ」
彼は突然出た涙や鼻水でぐちゃぐちゃになった表情で、歪な笑みを浮かべると……、負けを認めた。
アキはそれを聞いて、ふぅっと溜息を吐きながら……。
(プライドズタボロ……って、ところかな……?)と、哀れに見えるジンジを見て……、本当に哀れに思いながら首を横に振った。




