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PLAY24 幻想の地での喧嘩祭り②

「はぐれ? 信じられないわ」


 そう言って、ずんずんっと歩みながら近付いて行くシェーラちゃん。


 シェーラちゃんを見てベガさんはすっと武器を構えずに立っているだけで、シェーラちゃんの行動を見ているだけで何もしなかった。


 シェーラちゃんはそれを見て更に苛立ってしまったのか、両手に腰に差している二本の剣を掴んで、すらっと引き抜いたのだ。


「おいっ!」

「シェーラ。聞いていなかったのか? この死霊族(ネクロマンサー)は」

「結局、悪いやつに変わりはないわ」


 そう言って、キョウヤさんとヘルナイトさんの言葉を遮ってシェーラちゃんは言う。


「この国は狂っているから、あんた達のようなネクロマンサーだって紛れててもおかしくない。そんな言葉に耳を傾ける程、私は甘くないから。さっきは敵意がないことに納得したけど、今思うとおかしいわ。私は何日か前からここに来ているけど……、あんたに会ったのは――これが最初っ!」


 そうシェーラちゃんが言った瞬間だった。


 しゅっと引き抜いた二本の細い剣を両手に持って、シェーラちゃんはダッとベガさんに向かって駆け出して刃を向けた。


「あ、シェーラちゃんっ!」

「きゅきゅっ!」


 私が叫ぶと同時に、ナヴィちゃんも鳴いて止めようとする。


 けどシェーラちゃんは止まらずに駆け出して、両手に持った剣をぐっと振り回すようにしならせた後、だんっとベガさんに向かって小さく跳躍して、その場で竜巻のように剣を振り回して切り刻もうとシェーラちゃんは攻撃を仕掛けたのだ。


「あ」


 私は「ダメ」と叫ぼうとした時、ダンッと駆け出す二つの影を見て、私はそれ以上の言葉を紡ぐことができなかった。


 ううん、しなかった。


 その二つの影を見て、ほっと安心してしまったから。


 一人はシェーラちゃんの胴体にその棒をすっと入れて、そのままシェーラちゃんを羽交い絞めにするようにそれごと持ち上げたのだ。その際シェーラちゃんは驚きながら「きゃぁっ!」と叫んだ。


 そしてその前でベガさんを守るように立って、大剣を構えようとした人。


 もうわかっていると思うけど、ヘルナイトさんが前に立って大剣を持とうとしたけど、キョウヤさんに止められたことによって、それを手にすることはなかった。


 私はそれを見てほっとしていると、アキにぃはそれを見ながらシェーラちゃんに「お前だって疑ってたじゃないか」と唇を尖らせながら拗ねた口調で言った。


 私はアキにぃを見て、困ったように控えめに微笑むと、私はシェーラちゃんに向かって――


「ヘルナイトさんが守ったんだから……、きっと敵意がないのは本当だよ?」


 信じて?


 そう私が言うと、シェーラちゃんは足をばたつかせながら羽交い絞めにしているキョウヤさんの拘束から逃れようとしていた。


 でもその話を聞いて、シェーラちゃんはむすっとした顔でヘルナイトさんを見て、そして小さい声で……。


「一つ……、聞いてもいいかしら? ネクロマンサー」


 と、ヘルナイトさんの後ろにいたベガさんに聞いた。


 ベガさんはすっと顔を出してから、流れるようにヘルナイトさんの前に出て「なんでしょう? 言っておきますが……わたくしの名前はベガですわ」と、礼儀正しく言う。


 シェーラちゃんは聞く。


「なんで、今日になってここに現れたの?」


 その言葉に、ベガさんはきょとんっとして黙っていたけど、すぐに口を開いた。


「それは簡単な返答しかできませんわ。この場所を狙っている方々を、日夜協力して追い出していただけ。それだけですわ」

「狙う? 協力?」


 その言葉に私は首を傾げて聞いていた。そう言えばあの時も、()()()()()って……。


 そう思って辺りを見回した時だった。


「おやおや?」


 巨木の後ろから声が聞こえた。


 その背後を見た私達は、再度驚かされることになる。


 そう。その巨木の背後から現れたのは――三人の男性。


 一人は白髪の髪を後ろにオールバックにして、少し顔の堀が深いけど、目つきが鋭い。黒いダウンコートを羽織っているだけで、黒いズボンとブーツ。両手には包帯がぐるぐる巻きにまかれている。半裸の男性。


 もう一人は腰にシェーラちゃんと同じ剣を帯刀して、服装は赤をイメージした装備。鎧のように見えるけど服にも見える固そうな服装だ。手には銀色の鎧手袋に足も鎧の靴を履いている頭を包帯で巻いた長身の人。髪の毛は僅かに見える白銀の毛だったので、長さまではわからなかった。


 最後の一人は、よくアプリである目的を指すマークの仮面をつけている、ポロシャツと短パンにしたジーパンに裸足の三人より大きくて、ヘルナイトさんくらいの大柄だけど手足が異常に細い人が私達を見てベガさんを見ていた。


 三人共――瞳孔が黒い……。


 つまり……。


「ベガ隊長……、そのお方達は?」


 赤い服を着た白銀の髪の人が私達を見てから、ベガさんを見て聞いた。仲間でもあるベガさんに聞いて……。



 □     □



「それではご挨拶を。私は死霊族――『雷を(ジオマスター)使う(・ネクロユード)』特攻隊のギルディです。以後、よろしくお見知りおきを」


 最初に言ったのは礼儀正しく、優雅に会釈をした白銀の人――ギルディさん。


 その人の紹介を聞いて、私達は頷く。


 次に――


「俺様は死霊族――『爆破しまくって(ボマーボマー・)倒す(ネクロユード)』特攻隊のマズガ様だ。よろしくな……っ!」


 そう言いながら、私達を見て睨みつけている白髪の人――マズガさんはまるで、不良のような立ち振る舞いで自己紹介をした。


 私達は……特に近くにいたアキにぃは睨み返していたので、隣のキョウヤさんに「止めれ止めれっ!」と言われながら止められていた。


「……あのエルフ……、すごく面倒くさい」

「ごめんね……、本当は優しいお兄ちゃんなの」

「ふぅん……、え?」

「え?」


 シェーラちゃんにアキにぃのことを言った瞬間、シェーラちゃんはぎょっと目を点にして、私を見た。私はそれを見て、首を傾げながらシェーラちゃんを見ると、シェーラちゃんは――


「あれ……、あんたの兄なの?」

「? うん……」


 その言葉にこくりと頷いた。


 キョウヤさんはそれを見て聞いていたのか……。


「あれ扱いはないだろう」と冷静に突っ込みを入れていた。


 そして……。


「んが」


 そう言ったのは、仮面をつけた大男の人。その人は私達を見て、ただ「んがんか」と自分を指さしながら何かを言っていた。


 でも私達には理解ができなくて……、ただただひきつった笑みで首を傾げることしかできなかった。


 それを見て、ヘルナイトさんは少し甲冑の顎に手を添えながら……。


「……喋れないのか?」


 とベガさんに聞くと、ベガさんははっとして「あぁ。申し訳ございません」と頭を下げながらその人を手で指さすようにして礼儀正しくこう言った。


「この子はオイゴ。死霊族『溜めて溜めて(ポケットインポケット)溜めまくる(・ネクロユード)』特攻隊のナンバー015ですので……、わたくし達はオイゴと名付けておりますの。ね?」

「んがっ!」


 ベガさんに言われたその人――オイゴさんは両手を上げて元気よく返事をする。


 でも……。


「ナンバー……015?」


 その言葉に、キョウヤさんは腕を組んでオイゴさんを見ると、キョウヤさんは独り言のように考える仕草をしてから……。


「なんだか、そう言われると言いイメージがないんだけどな……」

「まぁ、そうですわね……」


 キョウヤさんの言葉に、ベガさんはすっと視線を下にして言った。その時、私は感じた。鮮度がある青いもしゃもしゃを。


「!」


 私はそれを見て、ベガさんにそのことについて聞こうとしたとき……、ずいっと私の目の前に現れたマズガ……さん。


「うひゃ」


 私は驚いて後ろに後退してしまったけど、ナヴィちゃんが帽子の中から出てきて、私の肩に乗って「フーッ!」と威嚇しながらふわふわの毛を逆立たせていた。


 それを見てか、じろっと私を見るマズガさん。そして凄んだ音色でこう言った。


「おいおい、さっきの話聞いていたぜ……?『結局、悪いやつに変わりはないわ』だぁ?」


 シェーラちゃんの方をじろっと睨んだマズガ……さん。


 それを見てシェーラちゃんはぎくっと顔を強張らせて固まってしまったけど、それに負けじと睨み返す。


「オイオイオイやめろってっ」

「マズガ……、あなたって人は……」


 キョウヤさんはそれを見て慌てて止めようと手を伸ばし、ギルディさんはそれを見ながら頭を抱えて溜息を吐く。


 呆れているようにも見えた。


 アキにぃはそれを見て銃を構えていたけど、それを見てキョウヤさんはアキにぃに向かって「シスコンお座りっ!」と叫んでいた。


 それを見ても手助けをしない場面を視界の端で捉えていた私は、目の前にいたマズガさんを見て、両手で顔をガードしながらその凄んだ言葉を聞いていた。


「お前らそこら辺にいる死霊族に会ったのか……? あぁ? それでどうした? はっきりと答えろや。感想も言えこら」

「あ、ひぅ……はい……。えっと……」


 とうとう怖くなってしまった私は、手でガードをしているのに……、ついつい顔を逸らしてしまう。ナヴィちゃんも「フシャーッ!」と逆立っていた毛を更に逆立たせながら威嚇する。


 すると――


 視界が暗く……、影ができる。


 それを見て私は前を向くと……、その前にいたのは……。


 ヘルナイトさんと、そして私の隣に来ていたシェーラちゃんだった。ヘルナイトさんはマズガさんに向かってこう言った。凛とした声でこう言ったのだ。


「その辺にしてくれ。怖がっている」

「あぁ? 怖がっているだぁ?」


 でも、その言葉を聞いても、マズガさんは引かない。シェーラちゃんはそれを見て冷めた音色で……。


「そんな風にメンチ切る人初めて見たわ。ジャパンであった確か……『フリョー』って人と同じね。そうやってきゃんきゃん吼えればいいと思っている。それに、さっきの言葉は私が言ったことでしょうが。言うなら私にしなさい」


 そう言って、ぐっと私をかばうように横から抱きしめるシェーラちゃん。


 それを聞いて、感じた私は、シェーラちゃんの不器用さを感じた。そして……、その中にある優しさも。


 ナヴィちゃんも「きゃっ!」と鳴いてぴょんっと私の肩の上で跳ぶ。


 でもマズガさんはそれでも引かないで、私達を睨んでいるのか、ヘルナイトさんに近付きながら、凄んだ声で、喧嘩腰にしてこう言ったのだ。


「なにが『私だけに』だぁ? 女はな、そう言った言葉は口にしねえんだよ……っ! いいか、俺様の質問に答えろ……っ! どこでどんな死霊族に会ったんだ? あぁっ!?」

「っ!」


 私はぐっと目を閉じてしまった。


 マズガさんの言葉に、無意識に恐怖を感じてしまって目を閉じて、頭を抱えてしまった。本当に無意識で、それを聞くと、怖いと感じて……。身が竦む感じがした。


 それを聞いたシェーラちゃんやヘルナイトさんが身構えた瞬間……。



「そいつのことを言ったら、俺様がぶん殴ってやるから早く教えろってんだこらぁっっっ!!」



「「…………………………………え?」」

「む、ん?」

「きゃ~……」


 凄んで怖い顔をしているのに、一瞬、幻聴のような言葉が見にに飛び込んだ。


 それはよくある、怖そうな人が実は優しいような、そんな言葉。


「あ、あの……」


 私は先まであった恐怖が抜け落ちたように、普通にマズガさんに聞いた。


 マズガさんは「あぁ?」と板だったような音色で私を睨んだけど……。よくよく見ると、目線を同じにしている。私は聞いた。


「もしかして……、心配して聞いているんですか?」


 その言葉に、マズガさんは「ああそうだよっ!」と腰に手を当てて、怒っているように見える表情でこう言ったのだ。


「俺様達は死霊族の中でも変人だがな――だがあいつらのやっていることはむかつくんだよっ! だからお前らのような女で餓鬼のお前らが怖がらねーように、きっちりみっちりしごくんだよ! 悪いかこら!」

「言っていることはなんだか自分をディスっているようにも聞こえるけど……、めちゃくちゃいい人だな……っ! アキアキストップストップッ!」

「うぎぎぎぎぎぎぎぎっ!」


 そのことを聞いて、キョウヤさんは暴れるアキにぃを羽交い絞めにしながら、苦しそうに突っ込んだ。シェーラちゃんもそれを聞いて「分かりづらいわ」と溜息を吐きながら言うと、それに対してベガさんは冷静にこう言った。


「彼――その人間の体の影響なのか、女の子や子供をいじめる人が大嫌いになったんですの。その口調もその人間の体の影響でそうなりましたわ」

「だあああああああああああっっ! 隊長言うなって!」


 そう言って、ガッと怒鳴ったマズガさん。そして私の方をグリンッと見て、私達を見てこう言った。


「小さくて女なのにここまで来たんだぞ!? どこかで怖い思いとかしてんじゃねえかと思って聞いただけだコラァッ!」

「……紳士だな」


 ヘルナイトさんが珍しく突っ込みを入れた気がしたけど……、それを見ていたギルディさんは私達に近付きながら――私達に向かって膝を付いてこう言った。


「彼は確かに口は悪いです。しかしその思いは本物です。私もこの体の影響なのか……、女性には優しくするように記憶しているようで、御嬢さん方。お怪我は?」

「おい二人とも離れろっ! そいつは女たらしだーっ!」


 私達の手を取りながら、ギルディさんは紳士的な笑みで私達の顔を見る。


 それを見て私は驚きながら目を点にして、シェーラちゃんは苛立った顔をして引き攣っていた。それを見てキョウヤさんが叫んでいた気がした。


 ヘルナイトさんはそれを聞いてなのか……私達の肩を掴んで、一歩後ろに下がらせる。


「おっと」

「! すまない」


 シェーラちゃんが驚きながらバランスを崩したので、声を上げて何とかバランスを取り戻そうとしたとき、ヘルナイトさんはシェーラちゃんに謝った。


 そして、驚くギルディさん達に向かってこう言った。


「ふざけも大概にしてほしい」


 その音色には、困ったような、それでいて私情が含まれているような、そんな音色だった。それを聞いて、私はヘルナイトさんを見上げていると……、シェーラちゃんはそっぽを向いて小さく何かを言っていたけど、私には聞こえなかった。


 それを聞いてか、ギルディさんはくすっと微笑みながら肩を竦めて――


「おやおや、案外大切にしているようで……。すみません」と言った。それを聞いて、ベガさんがギルディさん達の前に出て、すっと頭を下げて――


「わたくしの部下が、大変なご無礼を」と言った。


 それを聞いて、私は首を振って……。


「い、いえ……、なんだかんだ言っても、何となくですけど……、私達のことを思って言っていることはわかりました……」


 それに、と私は思って、マズガさん達を見て思った。


 この人達からは黒や赤と言ったもしゃもしゃを感じない。かといって悲しい色も感じない。私達に示しているのは……、ただの心配のもしゃもしゃだけだった。


 ?


 なんだか視界の端に赤いもしゃもしゃが……。


 そう思った私は、ふっと私から見て左の方を見た時……、言葉を失ったというか、「あ」と言う声が出て頭が真っ白になってそれを見てしまった。


 ヘルナイトさんとシェーラちゃんもその方向を見て、同じように言葉を失いながらそれを見て、ベガさん達もそれを見て、驚きの顔をしていた。


 その場所にいたのは……。


「そ、それなら……、いいんだけど……っ! 頼む……っ! ハンナッ! アキの……、鎮め方を教えて……っ?」


 ………………なぜなのか、鬼の形相のアキにぃを羽交い絞めにしているキョウヤさんは震える音色で私に助けを求めていた……。


 それを見て、オイゴさんは「んが……」ときょろきょろと周りを回りながらキョウヤさんのことを心配して見ていた……。

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