PLAY22 PvsP&PvsDEAH!①
ぎゃぁ! ぎゃぁ!
がぁ! がぁ!
満月が出ている夜空を飛び交う鳥……、否、中央にいる鳥のような姿……鳥人族の男がふんっと鼻でシイナ達を笑いながら嘲笑うようにして言う。
ばさぁっと、手の翼を広げて彼は言ったのだ。
「くく。初めましてだね。人間族の女に犬人の子犬ちゃん。僕は元鳥人族のランディ。今は死霊族として行動している」
ぎゃぁぎゃぁ! と飛び交う、目が少し飛び出ている怪鳥『ガーゴバード』の見ながら彼――ランディは言う。
シイナ達を見降ろして彼は言った。
肩に乗った一羽のガーゴバードの顎を翼が生えた指で撫でつつ彼は言う。
「まぁ、僕は種族の方を優先にするオスでね。そう言った種族を超えたセンチメンタルなんて……、欠伸が出るくらいアホクサって思って、思わず登場しちゃったんだよ。僕」
二人はそんなランディを見て、ただ口を閉ざしたまま黙ってしまう。
ランディの言い方に対して苛立っていたわけではない。二人は聞いたことがない言葉を聞き、それに対してなんだと思っていたのだ。
死霊族。ネクロマンサー。
(ネクロマンサーって……、あの、死体を操る呪術師だろう?)
(なんでこんなところに、いや、その前に……、飛び交っている魔物は生きている……)
(いったいどうなっているんだ……? 滅茶苦茶だろう……)
(前のMCOにはいなかった魔物。いや、種族? ネクロマンサーって……一体……)
「いぬっころ! ロフィーゼ!」
「「!」」
背後から聞こえる声。その声を聞いて二人は素早く振り返る。するとロフィーゼは目を疑ってその二人を見て叫んだ。
「コーフィンにブラドくぅんっ!?」
そう、散弾銃を構えたコーフィンと、大剣を持ってきたブラドだった。
ブラドは二人に向かって手を振りながら、二人は走ってきたのだ。
それを見て驚くロフィーゼとシイナ。シイナに至っては、(なんでここに?)と思ってしまうだろう。
しかしロフィーゼは二人に「何でここにぃ?」と聞くと……。
「オ前タチガ心配ダトブラドガ」
「えっ!?」
コーフィンは親指で指をさしながら後ろに他ブラドを指さした。
それを聞いた二人はブラドを見て、ブラドはぎょっとしながら明後日の方向を向いて、口笛を吹きながらもにょもにょと……。
「い、いや……、それはえっと、その……、俺はただえっと、その、そう! 少し頭をふやかそうと!」
「冷ヤソウト?」
「っだああああっっ! そんな揚げ足取るなや鳥男!」
「鳥デハアリマセン。俺ハ人間デスガ。ナニカ?」
「腹立つっ!」
ブラドは怒りながらコーフィンに掴みかかったが、コーフィンは何のダメージも受けていないようで、マスク越しですまし顔をしている。
それを想像してしまったブラドは、更に掴みかかって揺すろうとしている。
ロフィーゼはそんな二人を見ながら呆れて溜息を吐いて……。
「ほらほらぁ。喧嘩はやめてよぉ」
と言って仲裁に入ろうとする。
(……なんだか、心が穏やかになった……。ありがとう、ブラドさん)
シイナはブラドに感謝の意を内心で言って、ほっと胸を撫で下ろして和む。
ランディはそんなシイナ達――特にロフィーゼとコーフィンををじとっと見て、懐から出した赤い瘴輝石を取り出して……。
「マナ・エクリション――『火の乱射』」
そう言って、ぐっと握った瞬間、手の隙間から零れだす赤い光。それに気付いたシイナが、上を見上げて、ぞっと顔を歪ませた時……。
「逃げて、くださいっ!」
「「「?」」」
シイナは声を荒げた。それを聞いて、ロフィーゼ達は頭に疑問符を浮かべて、上を見上げた瞬間……。
夜空から降り注ぐ星……。ではなく、大きな火の玉。小石に纏われた炎が、雨のように降り注いできたのだ。それを見て――
「あらぁ……っ!?」
「うそぉっ!?」
「ッ!」
ロフィーゼとブラドはぎょっとして驚いて、コーフィンはマントの中から、ずっと長い筒の銃を取り出した。それは散弾銃――『アダルター』であった。
「あんた今どこから出したっ!?」
ブラドがぎょっと驚いて突っ込んだが、それどころではない。
コーフィンは銃を構え、じっと降り注ぐ火の玉の雨に向けて、銃口を合わせた。
「あ、に、逃げ……っ!」
シイナが手を伸ばして逃げるように勧めるが、コーフィンはそんなことをしない。むしろ逃げずにそのまま銃をとある火の玉に目掛けて……。
「『ストロングショット』ッ!」
バゥッと放たれる銃弾。
それは火の玉に当たるように、その中にある小石に当たるように、どんどん加速して向かって行く。
ランディはそれを見て、目を細め、コーフィンはマスク越しでにやっと微笑んだ。
散弾銃の弾が火の玉の小石に当たる前に、火に当たった瞬間……。
バァンッと、そこで散弾銃の弾が爆ぜた。
こうなることは予測していなかったが、コーフィンは銃を下ろしてそれを見た。
まるで花火のように飛び散った散弾銃の弾は、降り注ごうとした火の玉の石にも当たり、どれもこれも外側に軌道を逸らしながら落ちていく。
地面に落ちていくそれを見ながら、シイナはコーフィンを見た。
コーフィンは近くにどんっと落ちた焼石を見降ろし……。
「……計算ガ狂ッタガ、マァ、銃弾節約ニナッタカラヨシトシヨウ」
どことなく腑に落ちない結果に満足していないかのように彼は散弾銃を戻し、次に二つの拳銃――『KILLER』と『ブルーファング』を取り出した。
それを怪鳥の中に紛れながら飛んでいるランディを捉え、銃口を向ける。
「シイナ」
「!」
コーフィンはシイナを呼ぶ。
シイナはそれにぎょっと驚きはしたが、前のように無言で返事をするのではなく……、「あ、はい」と返事をした。
それを聞いたロフィーゼは、どこか安心したような顔をして、殴鐘を両手に持って構えていたことなど、シイナは知らない。
ブラドはそれを見ていたので、青ざめていたが……。
コーフィンは聞いた。
「状態異常ハドコマデ使エル?」
「あ、えっと……、あ、か、『呪』ま、で」
「スゲェッ! 相当レベルたけーぞそれっ!」
シイナの言葉に、ブラドは驚きながら近付く。シイナはそれを聞いておどおどしながら「あ、は、い」とブラドに対しても返事を返す。
それを聞いたコーフィンは、「十分スギル」とだけ言って、ペストマスク越しにランディを睨んだ。ランディは苛立った顔で四人を見降ろし、ぎちっと嘴を強く噛み合わせる。
「怪鳥ノ群レハ、俺トシイナデヤル。ロフィーゼトブラドハアノ鳥人ヲ!」
「わ、わか、り、まし、た!」
「ええ」
「ほっ!? お、おぅ……っ」
コーフィンが言うと同時に、シイナも杖を構えて返事をする。
ロフィーゼも妖艶に微笑みながら言うと、それを聞いていたブラドは、一瞬引きつった表情になって、戸惑いの顔を見せたが、目を閉じてすぅっと深呼吸をしてから……、大剣を構えた。
その握る手が、震えていることに、シイナ達は気付かなかった。
そんな四人を見降ろし……、ランディは苛立った音色でこう言った。
「これだから……、人間族は嫌いなんだ。ちょっと実力をつけただけで偉そうにする……っ! 僕ら獣族を見下す……っ! あぁ! イラつく! 僕はねぇ、僕はねぇ……、人間が……」
ぶるぶると嘴を震わせながら、ランディは、ばさっと手の翼を広げて、そのまま……、風を起こすように――振り降ろす!
「――っっ大っ嫌いなんだよぉおおおおっっ!」
その言葉と振り降ろしたと同時に、飛び交っていた怪鳥達が一斉にシイナ達に向かって飛んできた。
バササササササササササササッッ!
そんな羽ばたく音を響かせながらも臆するようなことをしなかったコーフィン達。
コーフィンとシイナは前に出て、コーフィンはロフィーゼに対してこう言った。
「任セルゾ」
「はいはぁい」
そう言ったと同時に、怪鳥の群れは、シイナ達を襲う!
◆ ◆
その頃……。
「あっっっっ!」
ショーマは突然来て攻撃してきたヴェルゴラを見て、右手首を指さして驚きの声を上げた。
それを聞いた三人はぎょっとして驚き、ショーマを見た。
ヴェルゴラは甲冑でわからないが、無表情でショーマを見ていた。
ショーマはヴェルゴラの右手首を指さしながらこう聞いた。
「それ! バングル! ってことは、プレイヤーっすかっ!?」
「「はぁっ!?」」
「ほ?」
何ともまぁ、ぶっ飛んだことを聞くな。と誰もが思うだろう。今絶賛命の危機に瀕しているにも関わらず、ショーマは力が抜けそうな笑顔でヴェルゴラに近付きながら彼はこう言った。
苛立った顔をしているツグミとコウガの……。
――こいつ何聞いてんだよっ! 馬鹿かよこいつっ! という心境など、彼にわかるはずもなく……。
「いやー。こうもプレイヤーが出会えるなんて今日はなんだかよき日っすねー。あ。俺はショーマっていうんす! あなたヴェルゴラさんっていうんすね? まぁ同じ境遇者同士、仲良くやりましょうよ」
「うぉいこの野郎っ!」
ツグミは声を荒げて、言葉も汚くして彼はショーマに向かって怒鳴った。その衝撃のせいで、ショーマはずてんっと転びながらツグミを見て――
「いやなんでっ!? 俺何も変なこと」
「今絶賛実践中だったじゃん! 馬鹿かこの大馬鹿! グレグルさんを攻撃した奴と、なに仲良くしようとしてんの!? そいつはPKだ! プレイヤーキラーだっ!」
「え、そうなんすか?」
ショーマは転んだ状態でヴェルゴラを見上げて聞く。それを見てコウガは……。
――なんでお前敵に聞いちゃってんだっ!?
内心驚きながら突っ込んだ。むぃはコウガの後ろに隠れてぶるぶると震えていた。それを見て、コウガはそのむぃの頭に手をやり、ぐりっと撫でる。乱暴に撫でる。
それを感じたむぃはなんとかコウガを見上げると、コウガはむぃを見ないで撫でながらヴェルゴラをじっと、畏怖を見る目で見ていた。
むぃはそれを見て、ぎゅっとコウガの服を掴む。
すると――ショーマの問いに、ヴェルゴラは……。
「いいや」と、平淡に答えた。
それを聞いたショーマは、無様な格好でツグミを見ながら――
「ほれー。違うって言ってるじゃんかー」
「こいつ……、あとで鼻の穴に芋虫を突っ込んだろ……、マジで」
「ちょちょちょっっっ!?」
ツグミは苛立った顔でショーマを見てから、彼が最も嫌いそうな行為の一つを話にあげた。それを聞いたショーマはぞっと顔を青くしてびくびくしてツグミを宥めようと言葉を選んでいた時……。
「まぁ――いかれたやつを三人殺したがな」
……その言葉に三人は言葉を失い、思考を停止してヴェルゴラを見た。
淡々と、淡泊に、平然と人をログアウト……。
=
殺したことを宣言したヴェルゴラを見て、四人は停止していたそれを、すぐに絶句や驚き、そして畏怖の目で、ヴェルゴラを見た。
「ま、マジ、で?」
「ああ。マジだ」
ショーマの言葉に、またも淡々と答えたヴェルゴラ。
彼は槍を持っていない手で、指折りで数えながら、彼は言った。
まるで自分の融資を教えるように、彼は声色に僅かな喜びを乗せて……、彼は言った。
「最初は身内だった。と言っても、婚約者の弟でな。そいつは俺のやり方が間違っていると邪魔したから、頭をトンカチで殴って、バングルを破壊して殺した。次は槍を持った破壊主義の男だった。そいつは抑制された鬱憤を発散しようと、住人に手を上げようとしたところを、俺が四肢を壊して、反省するまで壊しまくった。だが反省しないから、今度は顔の中を壊した。それでも反省しないから、俺はとうとうバングルを壊した。それで二人目だったな……」
「……………………………っ!」
「っ」
破壊とオブラートに包んでいるが、きっとその二人はもうこの世界には……。
そう思って、コウガは首を横に振った。そしてむぃを自分の背中に隠した。
むぃは怖がりながらコウガを見上げたが、コウガに見降ろすそんな余裕などない。
今目の前にいる男は……危険だと、自分の勘が警報を鳴らしているのだ。
誰だってそうだろう。
なにせ自分の目の前にいる男は、ゲーム内と言っても人を殺している。
ゆえに……、殺人鬼と同じ。
そんな殺人鬼が、自分達を殺そうとしているのだ。
怖くないわけがない。むしろ怖い一択。
コウガはむぃを背中に隠して、どうするかと模索していると……。
「あぁ」と、ヴェルゴラは思い出すような仕草をして夜が更けた空を見上げる。
さも平然と、言葉にしていたことを普通に終わったことにして、凄惨なことを過去のことにして思い出したことを優先にした口調で彼は言ったのだ。
その二人をログアウトにして、その後何を感じたのか。その二人のことに関して、自分はこんなことを感じた。と言うことを口にせず、いいや……、それこそが普通と言わんばかりの雰囲気で、ヴェルゴラは思い出したことを異常者を見るような目で見ているツグミ達に向けて言った。
「だが、魔女のような服装の女だけは、殺したかはわからないが、ここ何日か現れないし、あの出血だ。生きてはいないだろう。天族の少女なんて、使えないし、いなくなって助かった」
それを言った瞬間……。
ショーマとツグミの目が、キュウウウウッと瞳孔が小さくなった。
それは絶句のそれであり、先に動いたのは……。
ダンッと体制を変えて駆け出し、走った先に置いてあった刀を手に持って、それを抜刀して右手に刀。左手に逆手に持った鞘を持った状態でヴェルゴラの首元に鞘を――
ばがんっと殴りつけた。
それを見たコウガとむぃは、開いた口が塞がらないとはこのことのような顔で、驚いたまま固まっていた。
ヴェルゴラはそれにも意ともしないで、ショーマを見た。
「なんだ?」
淡々とした口調。
それを聞いたショーマは、怒りの音色を乗せながら、彼はヴェルゴラに聞いた。
「そいつ……、何て名前だ?」
「なに?」
ぴくっと動いたヴェルゴラ。
しかし、ショーマは怒りの表情で、ヴェルゴラを睨みつけて、彼は声を荒げた。
「そいつは何て名前だったって聞いてんだっ!!」
その言葉に、コウガは一体何なんだと思いながら見ていると……、ヴェルゴラは「あぁ」と思い出すように、淡々とした口調で、こう言った。
「そうだな……、変てこな名前だったから、よく覚えている。そうだ、あいつは――」
みゅん。
と言った瞬間だった。
ショーマはそのまま刀を持っていた右手を、ぐんっと振るい、たんっと一歩引いたと同時に――ヴェルゴラの胴体に……鎧に横一文字の切り傷を付けた。
刀と鎧が削り合う音が、空間中に響いた。
ヴェルゴラはそれを見て、甲冑越しで驚き、コウガはそれを見て「マジかよ……」とひきつった表情で見て、ツグミは杖を構えたまま黙って見ていた。
ショーマはとんっと後ろに一歩引いて、彼はその刀の先をヴェルゴラに向けて、彼は俯いた状態で、こう言った。
「そいつは……、俺の友達だ……」
苛立った音色を聞いても、ヴェルゴラはただ……。
「そうか」と答え……。
「お前もあの金のクズと同じ、異常な存在だったか」
「あいつは異常じゃねえ……」
「あ?」
初めて、ヴェルゴラは苛立った音色で言った。それを聞いても、ショーマは顔を上げずに、彼は続けた。
「あいつは、俺達のことを一番に考えている……、はなっぺとは違うけど、かーちゃんのような存在だったんだ……っ! そのことを言ったら、あいつは怒ったけど……、でも、でもっ! お前、なんであいつに手を出したんだっ!」
「あいつは住良木の家の奴らだからだ」
「たったそれだけでかよ!?」
「頭が異常な奴らだから殺した。それだけだ」
「あいつは異常じゃねえっ!」
「異常だ。血を引いているからこそ、絶やさないといけない」
噛み合わない会話を聞いて、ツグミはぐっと杖を握る手に力を入れて、彼は言った。
「もういいよ」
ツグミの呆れと怒り、そして投げやりめいた言葉を聞いて、ショーマはツグミを見て「なんだよそれ!」と反論しようとした時、ツグミはヴェルゴラを睨み、静かな怒りを乗せてこう言った。
「結局、この人の頭は腐ってるんだ」と言って、彼はショーマを見て言った。
「痛い目を見ないと、わからない。ショーマ、今は全力でぶっ倒せ」
「お、お、おぅ!」
ツグミの怒りの言葉と顔を見て、ショーマはぎょっと驚いたが、それを聞いて、ショーマは刀と鞘を持って構えた。
それを見て、コウガはふぅっと息を吐いて、むぃを見降ろし……。
「おい――お前はここで何とかしてろ。邪魔にはなるな。いいな?」
「ほ? あ、はいっ!」
と言いながらむぃは手を上げて元気よく返事をした。それを見てコウガはとある人物と重ね合わせ、彼はむぃの頭を乱暴に撫でてから前に出た。
そんな背中を見るむぃ。その表情は安心している笑顔だった。
「おいおい餓鬼ども」
「「!」」
コウガは二人の間に入るように、忍刀を構えながらこう言った。
「お前ら。そこにいるサイコパス野郎をやるんだろう? なら俺が隙を作るから、あとはテメーらで何とかしろ」
そう言って、コウガは忍刀に黒い雲を纏わせながら構えて言う。
それを聞いて、二人は顔を見合わせて頷き合い――
「「――はいっ!」」と、元気に、怒りを含んだそれで返事をした。
それを見て、ヴェルゴラは静かに一言こう言った。
静かな音色の中に潜む……、殺意と狂気を音色に乗せて……。
「――断罪だ。お前達も、断罪だ」




