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PLAY18 アストラと言うチーム③

 呆然とするエレン達に向かって走ってきた黒いドレスや手袋にヒール。どんなところも黒一色のそれだが、どことなく可愛さもあるそれを見たエレンは黒いドレスの少女の右手首を見て……。


「君は……、まさか……」


 と、驚きの声を上げて見た。


 そんなエレンの顔を見て、少女はすっと右手首を上げながら……。


「そ。あたしもプレイヤーだよ」


 と言って、少女は自分に手を当てて、つんっとした顔でこう言った。


「あたしはシャイナ。リッパーのソロだよ。で――」


 少女――シャイナは上にいる異様な牧師を見上げて、そのまま彼の自己紹介もする。


「こいつは『無慈悲な(サディスト・)牧師様(ミニスター)』だよ。ハイテンションだけどいい奴だから」

『ナイストゥーミートゥーッ! デェス!』


 それを見て、エレンは「あ、ああ……」と驚きが抜け落ちてない状態で彼は頷く。


 モナはそれを見て、シャイナの強さを見て……、ぐっと負の感情を押し潰しながら彼女は立ち、手を差し出す。


 それを見たシャイナは眉を顰めてその手を見て……、「これは?」と首を傾げながら聞くと、モナは言った。


「これ? 助けてくれてありがとうっていう、感謝の表れ」とにこっと微笑んで言った。


 エレンはその笑顔を見て、目を見開いて驚く。シャイナはそれを見て一言……、モナを見て言った。


 真剣で、それでいて冷たくはない。そんな表情で。


()()()()()()()()じゃないと思うから、今は安静にすることを優先にした方がいいと思う」


 そう言ったシャイナはふっと背後で倒れて泡を吹いているララティラを見て……、小さく言った。


「……あの人、大丈夫なの……?」


 それを聞いたモナは張り付けた笑顔のまま、固まってしまった。


 エレンははっとして「あぁ! ティラカムバック! 大丈夫か!? ダン手伝ってく……」と言いながら彼女に駆け寄って抱き抱えて起こし上げる。


 エレンはそんな彼女を抱えながらダンに何かを言っているが、ダン自身落ちたドロップ素材を見ながら……、まるでお預けを食らった子供のように指を咥えて小さく……。


「戦い足りねぇ……」と言っていた。


「そんなことする暇はないだろうがっ! もうクエスト終わったから! 魔導液晶(ヴィジョレット)光ってるから! 今は早くエストゥガに戻るぞっ!」


「え?」


 え?


 そう言ったのは――シャイナだった。


 モナははっとしてシャイナを見ると、彼女は驚いた顔をしてエレンを見て、聞いた。


「あの、もしかして……、エストゥガに向かうの……?」


 その言葉に、エレンはダンに対して苛立っていたので、ぐるんっとシャイナの方を向いて――


「そうだけど……、何か?」


 と聞くと、シャイナはぐっと顎を引いて……。


「なら、あたしもそこに行きたいんだよね。いいかな? 着いて行っても」

「「「?」」」


 シャイナの言葉に、モナとエレン。そして復活したダンは頭に疑問符を浮かべながらシャイナを見た。シャイナはすっと自分の背後を見て、そしてその背後に手を差し入れるようにして、こう言った。


「ほら――この人達は大丈夫だから」


 さっきまでのつんつんした声色とは違う。優しい音色。


 それを聞いてか、シャイナの後ろにいたのか、ひょこりと現れた小柄な少女。


 こげ茶色のゆるっとしたミディアムヘアー。服装は紫を基準とした金属がついているワンピースに、黒いローブを纏っている。肩から大きな皮のバックを背負って、手と足はまるで……、猫のような大きな足と手、そして肉球。少女の頭にはぴんっと立った猫耳がある。尻尾も生やした幼い少女だった。


 少女はおっかなびっくりに、モナ達を見上げて、すぐにシャイナの背後に隠れてしまう。


 シャイナは優しい声と笑みで、少女の頭を撫でながら言った。


「大丈夫だって。この人達は怖い人じゃないから」


 そう言い聞かせる姿を見たモナは、少女を見て、そしてしゃがんで、にこっと微笑んだ。


 シャイナはそれを見てむっとしたが、猫の耳を生やした少女はぎくっと、シャイナの後ろにか隠れてしまう。モナはそれでも、笑みを浮かべて言った。


「ねぇ君――名前、教えてくれない?」


 そっとシャイナの背後から顔を出す少女。それを見て、モナは既視感を感じた。


 自分と似ている、その姿を見て……。モナは自分を指さして言った。


「私はモナ。あなたは?」


 その言葉に、少女は恥ずかしがりながらも、小さい声で、言った……。


「むぃ……。むぃ、です」



 ◆     ◆



 シャイナ曰く……、むぃはプレイヤーで、エストゥガに隠れて過ごそうとしていたシャーマーらしい。そう思ったのには理由……、否、若いゆえの苦悩があった。


 むぃはまだ十一歳ではある。ゆえにこの状況に対して順応するという柔軟さがなかった。


 帰りたいという思いが人一倍あった。なぜMCOをしているのか、シャイナにも話してくれなかったが、MCOをしたことによって、この状況に巻き込まれたのだ。


 誰かのパーティーに入ればいい。しかしシャーマーであり、誰もパーティーに入れてくれない。


『竜の墓石』のギルドにいた彼女だが、その近くの『腐敗樹』で死亡者=ログアウト者が出たことにより、ここも安全じゃないと思ったのだろう。


 今では囮要因の扱いがひどくなって、しまいにはそのログアウトになる前に丸腰にして魔物の陣地に捨て置き、自分達はその装備を換金して過ごすという非道なことをする人も増えている。


 ハンナ達の時には見えていなかった現状が、今浮き彫りになってきている。


 むぃは幼いながら危惧したのだろう……。


 ゆえに自分は安全なところで隠れ住むことを選んだ。


 その護衛として、シャイナにこのことを頼んで、少ない報酬でエストゥガに向かっていたところで、魔物を倒しているモナ達に出会ったということだ。


 しかし――これは全部むぃが言ったことで、シャイナは一言も会話に入っていない。


 それを見ながら、モナは警戒でもしているのかと思い、歩きながらシャイナに聞こうとしたが……、一向に会話に参加しようとしない。


 それを見て、引きつった笑みになりながら、モナは内心溜息を吐きながら……。


 ――私、もしかして十九に見えないのかな……?

 ――というか私が古臭く見えるだけ?

 と、内心泣きそうになりながら思っていると……。


 ――茂菜さま――


「っ!」


 また声が聞こえた。モナはそれを聞いてびくっと肩を震わせてしまう。


「? どうしたモナちゃん?」

「おぅ?」

「?」

「何? どうしたの? 顔色、悪いけど……」


 そう聞くエレン達。エレンはララティラを背負いながら聞いているので、少し苦しそうな声だったが。みんなが急に立ち止まってしまったモナを見て、聞く。


 しかしモナは、引き攣った笑みで笑いながら……。


「ヘーキですって。さ! いきましょうっ!」


 脂汗が出ているにも関わらず、彼女は先に行くことを促す。


 それを聞いていたエレンは、首を傾げながら心配そうに……。


「そう、か……? もし気分が悪かったら………………、俺が担ぐからダン。ティラを頼む」

「おう! 任せておけ!」

「くれぐれも、走って振り落すなよ!」

「わかったぁ!」

「とか何とかいいながらクラウチングスタートはやめなさいっ!」


 エレンはいったん考えて、担いでいたララティラをダンに手渡して万が一に備える。


 しかしその前にダンはララティラを担ぎながら、燃焼しきれなかった感情を爆発させたいのか、屈んで走る体制になっていた。


 それを見たエレンは冷静に突っ込みを入れて「やめなさい」と促す。


 それを見ていたモナは……、うまくいかないなー。と思いながら自分の手を見た。


 ――拳を使う武具を着けているのに……、これじゃあ……。


 ――宝の持ち腐れだ。


 そう思ってすっと苦しそうに目を細める。


 それを見ていたシャイナは、何も言わずに前を向いて、エストゥガに向けて足を勧めた。



 ◆     ◆



 それから……。エストゥガに着いて……。


「なんでまた女が来たのぉおおおおっ!?」


 巨漢の男グレグルに隠れて、ぶるぶる震えては絶叫する蜥蜴の男ブラド。


 シャイナはそれを見て、むすっとしながら「あたしは蜥蜴とか好きじゃないから」と言うと、ブラドはそのことに対してカチンっと頭に来たのか……。


「俺は南米の食べれる蜥蜴じゃねえから! てかそれってスタミナ料理じゃねえか! 俺は美味しくねえぞ!」

「なにつっこんんでんだよ。そんなに突っかかるな。血圧上がる」

「グレグルは冷静すぎるんだよ! なんでこんな女二人を連れてきたのエレンさんヨォ!」


 グレグルはそんなブラドを見て、呆れながら突っ込むと、ブラドは怒りながら指をシュビビビッとシャイナに向かって指差すと、今度はエレンに火種を向けて怒りを露にした。


 エレンはそれを聞いて、受付の人に魔導液晶(ヴィジョレット)と素材を手渡しながらぎょっと驚いてブラド達を見ると……。


「いや、エストゥガに用があるって言っていたし……」

「ちびはいいよ! ちびは何とかいける! 気がする」

「気がするのかよ」

「でもそこの黒髪女は無理だ! だああああっ! どうしようっ! どないしようだよこれぇ! やっとララティラに対して小指ちょんって出来たってのに、これ!? 俺は女難がやばい地縛霊でも憑いてんのかっ!?」

「世の中の女運悪い男に謝れ。それはない。努力すれば何とかなる」

「――いや。あたしはこのまま出るよ」


 ブラドとグレグルの漫才を呆れながら見ていると、シャイナはすっと立ち上がって言った。


 それを聞いて、モナ達は驚きながら『え?』という顔をする。


 シャイナはその顔を見て「何でそんな顔するの?」と首を傾げながら言った。


「だってあたしはクエストでここに着ただけだし、ここに住むってわけでもないから」と言いながらその場を後にしようとした時……。


 くいっとドレスを掴む感触。


 それを感じて足を止めて下を見るシャイナ。


 そこにいたのは……、ドレスを引っ張っているむぃで、むぃは寂しそうな顔をして見上げながら……。


「も、もう少しだけ、ここにいてください……」と言って、俯きながらこう言った。


「えっと、まだ慣れていないのもあるんですけど、シャイナさんがいてくれたら、皆さんとももっとおしゃべり出来ると思うんです……。なのでもう少しだけ……」


 その言葉を聞い、シャイナはすっとエレン達を見る。


 エレン達は少し驚きながらシャイナを見ているが、不快な顔はして……いるのは一人いる。しかし他は不快な顔をしていない。


 それを見て、シャイナはふぅっと溜息を吐いて……。


 困ったように笑みを作って――


「なら……、少し話して、自分から話せるようになるまで一緒にいてあげる。報酬はそれから」

「あ」


 むぃはその言葉を表情を見て、わっと頬を染めて明るいが、その中に恥ずかしさもあるその笑顔で……、頭を下げながら「あ、ありがとうございますっ!」とお礼を述べた。きっと、一人では話しかけづらいと思ったから、シャイナに一緒にいてもらおうとしたのだろう……。


 そう思ったシャイナは、内心むぃのその感情に可愛いと思いながら、少しだけと思い、その場に居座った。


 ――こうして、むぃのための座談会が、幕を開けた……。


 のだが……。


「なぁ! お前なんであそこでぶった切るんだよ! 斬らないで戦ってくれよ!」

「はぁ? 何でこのおっさんはあたしにばっかり……、てか暑苦しい」

「なぁなぁ! 俺だって戦いたかったのによぉ! つれねえぜ! なんでそんなことをしちまうんだよ!」

「うるさい……」


 今現在、ダンが魔物を倒してしまったせいで不完全燃焼のまま帰ってしまったことにより、空想上の弾丸がシャイナに向けられて、彼女と彼だけの会話となってしまっている。それも、何回か会話がループしているようにも聞こえる。


 それを聞きながら、モナは内心呆れながら思った……。


 ――ほとんどがダンさんと彼女の痴話喧嘩みたいなループ漫才を聞いているだけのそれだ……。


「これこれ、ダンやめなさい。今ティラ寝込んで俺しか止める人いないから、頼む、やめて?」


 疲れた表情のエレンが出て止めるが……。結局……。


「何であそこでぶった切るんだ!? 斬らないで戦ってくれよ!」

「それ、もう二十五回目だけど?」


 ダンのループ尋問に、シャイナは冷静に答えながら言う。


 それを聞いていたグレグルは数えていたのか。と思いながら心で突っ込んだ。


「なんかこれ見ているだけで気が滅入りそうだ……」

「たしかにな」


 ブラドとグレグルはその光景を見ながら言う。


 むぃはそれをテーブルに顎を乗せてみているだけで、顔はつまらなそうだ。


 それを見て、モナは何か話の話題になることあるかな? と辺りを見回していると……、とあるところに目をつけて、はっとする。


 これだ! と思い、モナはシャイナに向かって聞いた。


「あ、ねぇ!」

「?」


 シャイナはふっとモナを見る。


 ダンは「モナ! これは男の言い争いだ! 邪魔すんなっ!」と、珍しく抗議すると、エレンはそれを見て首を振りながらダンの肩にトンッと触れて……。


「それ、こっちのセリフ」と言って、彼の首根っこを掴んでどこかへと連れて行ってしまう。


「ん? お? おぉ? おぅ?」


 ダンはズルズルと引きずられながら辺りを見回してエレンと一緒にギルドの外へと行ってしまう。しかしすぐにエレンだけ帰ってきて、手を上げて「お待たせ」と言って戻ってきた。


「ダンは?」

「ああ、あっちでギルド長と手合せでもしていろって言ってきた……」


 誰もがこの時、エレンを見てこう思っただろう……。


 扱い慣れてやがると……。


 モナはそんなエレンに内心――心から感謝してシャイナに聞いた。


「ねぇシャイナちゃん!」

「シャイナでいいけど……」

「あー、えっと……私、ちゃん付けしないと性に合わない女で」


 と言いながら頬を指で掻くモナ。しかしそれでもめげずに彼女は言った。


「その服って、どこで売っているの?」と聞いた。


 シャイナはそれを聞いて、目を見開く。


 対照的にそれを聞いたむぃは顔を上げて――


「それ、むぃも気になりました……。なんだか可愛いなーって思ってて」

「でしょ?」


 ――いよっし! 会話弾んだ! と、モナは心でガッツポーズを作って喜ぶ。


 それに便乗するかのように、グレグル達もその話に入ってきた。


「たしかに、俺は服にはあんまり頓着ねーけど……。女物でそんな服、MCOにはなかったな」

「俺は女の服には興味ねーけど、それってどこで売っているんだ? 初めて見たなーって思っていたけど……」

「服のレパートリーというか、防具となる服にはそれぞれシリーズってものがあって、一式揃えると追加効果が出るものもある。アキ君のは『潜伏』に特化されたファッションで、俺のは『隠密』に特化された『フェーズダーク』シリーズ。ティラのだって『ウィザードルーダー』っていうファッションだし。結局みんなRCで作られたファッションを着ているけど……」


 と言って、エレンはちらりとシャイナを見て言う。


「シャイナちゃ……、うぅん! シャイナのは違う気がするような……」

「も、もしかして……っ! レアアイテムなんですかっ!?」


 むぃはそれを聞いてぱぁっと明るく聞くが、それを聞いていたシャイナはぐっと唇を噤み……、吐き捨てるように、苛立った音色で言った。


「――駄作だよ」


 その言葉に全員が驚いたように黙り、聞いてしまってはいけないことだったかと思い、言葉を伏せた。


 しかし――


()()()()()()()()なんて……、誰も着ないから着ている」


「「「「「うそぉっっ!?」」」」」


「っ!?」


 モナ達はテーブルに前のめりになるようにシャイナを凝視して、そして驚きながらその声と表情で詰め寄った。


 シャイナはそれを聞いて、周りを見ながら驚いていた……。


「それ自分でデザインしたってことっ!? すごいね!」


 モナの言葉に、むぃはコクコクと興奮しながら頷いて――


「デザインしたこともすごいですけど、こんな服があったらむぃも着たいですっ! おしゃれしたいです!」

「というかこれ自分で作ったのか!? 素材とかいろいろコストかかる……って、あー、RCに申請すれば作れるか……。となるとそれってデザインしたってことか? すごくねぇか?」

「いやー。よくデザインしたな。女受けできそうな服だな。カワイイ系に飽きた女が着そうっていうか……」

「グレグル……、お前は審査員か……」


 ブラドは慌てていたが冷静に考えて再度シャイナの凄さを認識したが、グレグルのまるでどこぞの審査員のような口調に驚きながら、若干引き気味に突っ込む。


 するとエレンは、何かを思い出したかのように、「そうか」と言って、シャイナを見て聞いた。


「それって――前にRC主催でやっていた『ファッションコンテスト』の受賞作品か?」


 それをきいたシャイナは、肩を震わす。そして膝に乗せていた拳に力を入れて……、ぐぐっと握りながら歯をもくいしばっていた。


 エレンはそれに気付かないで言う。


「『ファッションコンテスト』は応募者から抽選で選ばれた一名の服のデザインを、RCがその服のデザインを基に制作するっていう企画で、確かその時選ばれたのが……、そうだ。シャイナが今着ている」




 ――だぁんっっ!!




「「「「「っ!?」」」」」


 机を叩く音。それを聞いてモナ達はびくっと体を震わせた。


 その音を発生させたのは――、ぶるぶる肩を震わせているシャイナだった。


 シャイナは震えながらぐっと唇を噤み、そこから少量の血が零れているにも関わらず……、彼女はぎっとモナ達を見て、モナ達はそれを見て……、絶句した。


 シャイナは――()()()()()


 怒りながら、泣いていた。


 シャイナはそんな顔で、こう言った。震える音色で、彼女は言った。



「……何も知らないくせに……、べらべらいうんじゃねえっっ!!」



 だっとその場から逃げるようにギルドのドアから出て行ってしまうシャイナ。それを見て、モナは慌てて「あ、待って!」と言いながら追ってしまった。


 そんな後姿を見ていたグレグル達は……、ぽかんっとしてそれを見ていると……。


「ったく、うぜぇ。なんだ今の騒ぎ」

「「「お」」」


 ギルドの奥から出てきたシノビの男――コウガは頭を掻きながら出てきた。目には濃くなっているクマ。それを見てブラドは「夜更かしかー。お前も執念深いな」と、少し小馬鹿にしたように目を細めて言った。それを聞いてコウガは、舌打ちをして――


「うぜぇ」と一言。


 その一言に怒りを露にして、突っかかろうとするブラドを止めるグレグル。


 エレンはそれを見て、大分参ってんな。と思いながら見ていた。


 コウガは欠伸をして「つーか、騒がしい奴らはどうしたん」と言いかけ、むぃを見た瞬間……。


「?」


 彼は黙ってしまった。


 むぃはそれを見てきょとんっとしていると……。


「ど、どうしました?」とおどおどしながら言うと、コウガはむぃを見て……、小さく、驚いた顔のまま、彼は言った。



「――(もみじ)?」



「へ?」


 そんな会話があった頃……。とあるところでは……。


「も。もうこんところ、おさらばしてやる……っ! けけ」


 とある男は言った。手に持っている滴り落ちる刃物を手にして……、彼は言った。


「俺は……、もう臆することはない……っ!」


「そうだよ」と、別の男は言った。


 紫のカットシャツに黒いズボンスーツ。腰には刀が帯刀されており、彼はその刀を手に取って、にやりと狂気の笑みを浮かべて彼は言った。


「みんな自分の思うが儘に動いているんだ。ボクだってそうしている。だから……、自分のおもう通りに、動いて、自分の力を、みんなに見せつけよう。ボクは、自分の美しさを見せつける……。醜い奴等なんて、消えちまえばいいんだ」

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