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PLAY18 アストラと言うチーム②

 場所は変わって『緑の園』の前……。


『竜の墓石』前の草原……。


 魔物が出る場所はダンジョンに限らない。道中にだって魔物は巣食っている。それはRPGにおいて定石のそれだ。常識だ。


 そんな岩の地層が芸術的なところの前に、色んな動物や魔物が歩き、捕食を行い、捕食されると言う、まさに食物連鎖のドラマが生まれているところに異様なものが存在していた。


 それは赤ガリムバチと言う……、全長七十センチの赤い体をしている蜂が腐りかけた動物や魔物の肉片をもりもりと昆虫種特有の口と牙で食べていたのだ。


 群がってそれを食べていたのだ。


 見るに……百――四百はいる。


 それは腐敗した肉に群がり、無我夢中で食べている光景は流石に想像を絶するだろう……。


 否、見たくないという感情は込み上げてくるであろう。


 それを遠くから、じっとエストゥガで購入した望遠鏡でその光景を見ていたモナは……、青ざめながら望遠鏡から目を離した……。


「りある……」


 もはやカタカナにする気力がない。


 青ざめ、気力と気色悪さが限界になりそうな時、モナはすっと後ろを見て、はぁっと溜息を吐いた……。


 その溜息は、納得、というそれである……。


「あ、あれが虫っ? アカンアカンアカンッ! うち無理やっ! 大きすぎる! そして肉食って無理あるわっ! 虫嫌いには到底出来ん所業やでっ!」

「俺ならぶん殴れるな! 蠅叩き掃除開始だ!」

「蠅じゃなくて蜂やっ! 大きすぎるしぶんぶんゆーて怖いしうち虫系嫌いやのに……っ!」


 ララティラはその光景を望遠鏡越しに見てしまって己を抱きながら震えていると、ダンがぐっと拳を高く上げて意気込んでいる。なぜだろう……、目がキラキラしている。


 それを見てララティラは必死に止めに入る。


 モナはそれを見てララティラの言葉に対して同文と思ったのだろう……。


 女にとって、虫は天敵の一つなのだ。


 モナはもう一度、肉眼でそれを見る。


 ごそごそしているそれを見て、ウゴウゴしているそれを見て……。


「うぅ」


 口元を押さえて、這い上がってくる何かを押さえるようにして青ざめながら目を逸らした。


 ――これは……、無理があった……っ!

 モナは内心後悔した。


 リスクが低い緑を推せばよかったと思ったからだ。


 まぁ、どの女性も目の前にメガトン級の蜂がいたら、誰だって大絶叫だろう……。


 ――うぅ、虫は嫌いだなぁ……、Gはもっと無理、カメムシならもっともっと……。

 そう思った時だった。



 ――しっかりしてくださいな。茂菜(もな)さま――



「!」


 唐突に聞こえた声。


 その声はモナの周りを暗くするように、響いて、反響し合って……、モナに向かってダイレクトに伝えた。モナはそっと前を見る。


 そこには、蜂の群れなどいなかった。


 そこにいたのは……、着物を着た眼鏡をかけている長身の男。


 男は顔の堀が深い男だったが、若い顔立ちをしている。モナを見下して、彼は冷たい目で見た。そして口を開いて……。


 ――お立ちくださいな。茂菜さま。茂菜さまは、まさかこんなところで心折れる弱いお方だったのですか?――


 男は、言う……。


 ぶるぶると、手が震える感覚に陥る。モナはそれを見て、震える口で何かを言おうとしたが、できなかった……。そんなモナを見て、男は呆れながら言った。


 ――茂菜さま、なぜあなたは男ではなく女として生まれ、母君を殺してまで生まれたのでしょうか? あなた様はこの家を守るという責務。否……、運命と言う職務があるのに、まだ甘えているところがあったのでしょうかね……?――


「――ちゃん」


 ――だから嫌だったんですよ。だから女なんていらないんですよ――


「――ナちゃん」


 ――あなた様は生まれてこなければよかった。あなたなどいなくとも……、あなたが存在しなくとも……――


「――モナちゃん」



 ――敷浪家は、天童會(てんどうかい)は生き残るのです――



「――モナちゃんっ! 大丈夫か?」


「!」


 どろどろとした空間にいた感覚から、一気に現実に引き戻されるモナ。


 目の前で、彼女の肩を掴んで揺すり、心配そうに顔を覗きこんでいるララティラは、モナを見てもう一度「大丈夫か?」と聞いた。その背後にはエレンとダンがモナの顔を見ていた。


 三人の顔を見てモナは辺りを見回す。


 ――あ、いない。


 安心してモナはもう一度エレン達を見た。それを見てエレンはうーんっと腕を組んで考えながら……。


「やっぱり無理しているのか? 期限はまだ余裕があるから」

「いやいやっ!」


 モナはぶんぶんっと首を振って、無理に笑ってぐっと握り拳を胸のところで作って、声を張り上げながら言った。


「そんなことありませんって! 私大丈夫ですから! クエスト受けましょう! ねっ!」


 それを聞いていたエレンは、モナの顔を見る。


 無理している笑顔打倒うことはわかった。それは初めての顔だが、それはよくわかった。


 雰囲気が、そう言っていたから……。エレンはここでやめておこうかと思ったが、やめると言っても、きっとモナは無理にやろうというだろう。


 そう思ったエレンは、三手目を読みながら……、腕の組を解いて……。


「――ティラ。一緒にいてやってくれ。クエスト続行だ」と言った。


 それを聞いてダンは場違いにも「いよっしっ!」とぐっと拳を作って喜んでいたが……。ララティラは違う。


「何言ーてるのっ! ここは一旦引き返すことが大事やで! それにこれは女の子には無理がある。女の子でもできるクエストにした方が」

「お前――自分も含んでそう言っているのか?」


 そんなダンの言葉に、ララティラは杖を構えてスキルを撃とうとしているが、それをなぜか受け止める体制になって踏ん張っているダン。


 エレンはそれを見て呆れながら「やめてやめて。仲直りしろ」と注意する。


 そんな中、エレンはモナに歩み寄って、しゃがんで彼女の頭に手を置いてから、心配な顔をして彼は言った。モナはそれを、静かに聞く。


「本当ならここで返るっていう選択肢もあるけど……、本人の意思を尊重して残る。でもこれだけは約束。あんまり無茶はしないこと。あと、やばくなったらララティラか俺に言うこと、いいな?」


「………は、はい」と、モナは『ぽけんっ』としながら頷いた。


 エレンの言葉に驚いたのもあるが、正直ここまで心配してくれたことなんてなかった。


 いつも、友達といる時も、自分が先導していたようなものだったので、誰かに心配されることなどなかった。だから、新鮮だった。と言った方がいいだろう。


 そう思ったモナは、すっととある方向を見て、エレンに聞いた。


「えっと……、ダンさんには言わなくていいんですか?」

「あれは駄目です。戦闘狂には、絶対に言わないこと」

「おぅっ!?」


 モナは、初めてエレンの冷たい目を見て、汗をタラリと流しながら……。これは、まじだ。と確信し、それ以上は聞かなかった。


 それを聞いていたダンは、なぜと言わんばかりに、驚いていた……。



 ◆     ◆



 そして……、今まさにモナ達は、エレンが立てた作戦を行おうとしていた。


 陣形として――少し遠くから見ているモナを筆頭に、後ろにエレンとダン。互いに丁度いいところで離れて武器を構え、その間には、さらに遠くで待機しているララティラ。上から見れば長めの点で結んだひし形の形である。


「まず、モナちゃんはエストゥガで購入した道具を使って、群がっているあの赤ガリムバチをこっちに引き寄せる。使う道具は、昆虫系の魔物が毛嫌いする『薄荷球(はっかだま)』を群がっているところに、なるべく近いところに投げる。そして『引き寄せ花火』に火を点ける。その後モナちゃんは『盾』スキルで自分を守ること」


「は。はい」


 すでに薄緑色の草木が球体になっているそれを手にして、投げる体制で構えていた。


 モナのことを考えて、モナには最初の失敗してもいいことをしてもらった。


 彼女への配慮でこうなり、モナは申し訳なさそうに頷いた。


 そしてエレンはララティラとダンを見て言う。


「そして俺とダンは襲い掛かってきた虫を大方撃退。最後にシメを飾るのは……」


 後ろを振り向いて、エレンは少し不安げに、彼女を見た。


 彼女――それはララティラで、ララティラは青ざめながら、足や手をぶるぶると震わせながら、小さい声で、情けなく……。


「本当にやるんかぁ~……?」と、今にも泣きそうに……、否、涙を溜めながら言った……。


 それを見ていたエレンは、内心心を痛めたが、ぐっと心を鬼にして……。


「やる……っ! 昆虫系は属性攻撃が最も苦手なんだ……、特に火! 大方の虫を、火で焼き殺せばいいんだっ! 『豪焔(フィアガ)』で燃やし尽くせばそれでオーケーなんだって……っ!」

「うぅ……」


 エレンの言葉を聞いて、ララティラは震えながら言った。


 本当に、虫だけは苦手なのだ……。蜘蛛の時も、内心震えながら大人の意地を見せて戦っていたのだ。今回だって戦える。そうララティラは思っていたが……。



「――無理やったらごめんねっ!」



「うん、無理っていう想定で泣かないでっ! 俺も頑張るから、みんな頑張るからティラも頑張ってっ!」

「大火力でなー!」

「頑張ってー!」

「三人共なんであんな昆虫平気なんやぁ~っ!?」


 ララティラの魂の叫びを聞きながら、モナは内心申し訳なく……。


 ――私も大丈夫じゃないんです。と心で謝りながら思った。


 そんな話をしながら、エレンはふっと上を見上げる。空の太陽が、真上に差しかかろうとした。


「――俺の合図で」

「はいっ!」


 そうエレンが言うと、モナはぐっと、手に持っていた『薄荷球』を、野球選手のように投げる体制になって、じっと待つ。


 じっと、じっと……、耐えながら待つ。


 エレンはその日の光が、自分の真上に差し掛かる瞬間を見続け……。


 ダンがにっと豪快な笑みを浮かべながら手を叩いて構え。


 ララティラは震えながら杖を突きつけて……、その時を待つ。


 太陽が丁度、エレンの真上に来た瞬間、目に来る光に負けて、眩しさに目を閉じた瞬間――


「今っ!」と叫ぶ!


 モナはそれを聞いて、右手に持っていた『薄荷球』を、力一杯振りかぶって、投げる。


 ぶぅんっと言う音が聞こえるくらい、斜め上に向けて、その球は綺麗な放物線を描きながら赤ガリムバチがいるところに向かって落ちていき、どんっと腐敗した肉の近くに落ちて、ぶすんっと緑色の煙が噴き出した。


 それを見て、モナはすぐに『引き寄せ花火』に火を点けた。


『薄荷球』は、よく戦闘で使うアイテムとして使われる。


 主な使い道として、昆虫系の魔物と出くわしたら、それを投げてダメージを食らわす。それだけだ。


 ダメージはかなりのものだ。薄荷のにおいも相まって、昆虫系の魔物においてそのアイテムと、火による攻撃が天敵なのだ。


『薄荷球』から出る煙が一定の量出た瞬間……。


 ぼふぅんっと赤ガリムバチが隠れる……否、それ以上の緑色の煙が辺りを包んだ。


 それを見て、モナは『引き寄せ花火』を自分の後ろにおいて、手をかざしてスキルを発動させる。


「『強固盾(シェルガ)』」


 ばしゅんっと、自分を守るように出た盾。


 モナはその中に入るように、手をかざしたままじっとしていた。じっと、その光景を見ていた。


 モナが『強固盾(シェルガ)』を張った瞬間……。


 ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! 


 と――背後で弾け飛ぶ花火。


 それを聞いてモナはぐっと目を閉じた。しかしそれは一瞬。


 すぐに目の前からくる。


 そう思って、目を開けた。


 緑の煙は赤ガリムバチがいたところを包んでいた。


 仄かに来る薄荷(ハッカ)のにおいを嗅いで、エレンは弓を構え、ダンは拳を構え……、ララティラは泣きそうになりながら溜息を吐いて杖を構えていた……。


 モナはそれを見て、見て……。


 ゆらりと揺れる黒緑の影を視認した瞬間――


「――来るっ!」


 叫んだ瞬間、その煙を掻い潜ってくる赤い大きな蜂の大群!


 緑の煙から『ボボボボボボッ!』ッと出てくるさまは、意外にも迫力があるものだ。そのせいで、薄荷のにおいがする緑の煙がかき消され、大きな音を立てながら音を立てている花火を頼りに来たのだろう。


 それを見て、モナは身構える。


 身構えて――



 ――茂菜さま。戦った方がよろしいのでは?――



「――っ!」


 ――また!


 そう思って、モナは自分の手を見て、目を疑った。


 震えていた。


 あの虫の大群を見て震えているのではない……。ただ、あの声が、怖いのだ。


 ――戦わないのですか? 茂菜さま。それではいけません。茂菜さまはあのお方の形見でもあるんです。あなた様はどのような時も、そのお命は天童會のものです。あなたのものではなく組のものです。組のためにそのお命を落とすことは至極当然であり、幸せでもあるんです――




 ――も な さ ま た た か っ て く だ さ い な ! !




「~~~~~っっ!」


 ぐっと目を閉じて、耳を塞ごうとした時だった。


 パシュッと放たれた空気を切る音。


 ごしゃりと何かを潰すような音。


 それを聞いて、モナはそっと目を開けた……。


 目の前に広がるのは……緑の液体が、『強固盾(シェルガ)』にこびり付いているそれだった。


 モナはそれを見て気持ち悪いと思ってしまったが、一体なぜこうなっているのか。そう思って背後を見た瞬間納得した。否――作戦通りだと驚いて見た。


 エレンは弓と矢を使って、一匹一匹的確に頭を狙って撃ち落としている。それはアーチャーの特権と言っても過言ではない。


 ダンは「がはははははっっ!」と笑いながら襲い掛かってくる赤ガリムバチを拳で殴りながら蠅叩きのように地面にたたきつけている。


 エレンは的確に、ダンは大雑把に見えて……、二人は的確に、魔物を倒している。


 着々と、確実に一匹一匹。倒している。


 倒された虫達は、緑の液体を吹き出しながら黒く変色していき、ぼふぅんっと黒い煙と塵を出し、体の一部である素材をぼとぼと落とす。


 しかしすべてをはたくことはできない。


 ドロップした素材が数百個に達して、撃ち洩らした……倒し洩らした赤ガリムバチは、まっすぐララティラに向かって飛んでいく。それを見て、エレンは後ろを振り返って――


「いいぞ!」と声を張り上げて叫んだ。


 ララティラはそれを見て、泣きそうになりながらも、胸に手を当ててすぅっと息を吸い、そして襲い掛かってくる赤ガリムバチをギッと睨んで……、杖を突きつける。


 杖の先に広がる大きな火の玉。


 それを見ても、赤ガリムバチは止まらない。


 ララティラも止まらないどころか……。止まるなんてことは考えない。


 今は、早く倒して帰りたいっ! そう心に願って……。



「『豪焔(フィアガ)』ッッ!!」



 ありったけのMPを乗せて、ありったけの怒りと共に、彼女は炎系のスキルを放った。


 ボッとくる大きな大きな炎の球体。それは赤ガリムバチも狼狽するほどの威力と迫力。


 それを見た瞬間、じりっと足元が焼ける。と同時に……。


 赤ガリムバチは、その球体の中に入ってしまい、叫ぶことすらできないままじゅうっと燃え、そのまま轟々と燃える頬の中で、黒くなってぼふぅんっと消滅していく……。それはいくつも、すでに百以上は聞こえている……。まさに……、蹂躙……、大虐殺。否……、大殺虫なのかもしれない……。


 その圧巻な光景を見て、風圧を受けて腕で顔を隠しているエレンは小さく……。


「決めた……。俺は決めた。ダンには絶対にクエストを選ばせない。ティラといるときは昆虫系のクエストを絶対に受けないことにする……っ!」


 と、硬く心に誓った……。


 モナはそれを見て……。すごいと思って、情けないと、自分を罵った。


 ――結局、私は人の助けがないと、何もできない。

 ――悔しいな。自分のことを非力って言っていた、あの子だって……。

 そう思いながら俯いて自分を罵っていると……。


 ぶぶぶっと、一際大きい音。虫の羽根の音。


 その音を聞いてモナは上を見上げると、エレンはぎょっと目を見開いて驚き、ダンは「おおおおおっ!」と喜んで、ララティラは……。


「ぎぃやああああああああああああああああああああああああっっっ!!」


 泣きながら叫んで、ふっと意識を失ったかのように、コミカルな白目をむいて、後ろからずたんっと倒れてしまった。


 限界突破して、気絶してしまったのだ。


「あ、ティラーッッ!」と、エレンはこんな時に! と思いながら驚いてララティラに向かって叫ぶ。


 モナはそれを見て、絶句した。


 そこにいたのは……赤ガリムバチなのだが……、大きさが異常で、太陽が隠れるくらい大きなそれが、モナ達を見降ろしながら緑色の虫の瞳孔で見ていた。


 全長はきっと……、五メートルはある。


 否、それ以上かもしれない。


 それでも、その姿を見て、誰もが終わったと思うだろう……。


 一人だけ例外がいるが……。


 目の前にいたのは――ガリムバチの生みの親。その名も『ゴリムバチ』。通称『親ガリムバチ』と呼ばれている昆虫型の魔物であり……、ゴリムバチは、『ブブブブウッ』と唸りながら、ぐんっと上に一回飛んで、助走をつける。


 そして一気に――モナ達目がけて……。


 ぎゅんっと――急降下した。


 その速さは凄まじく、エレンが矢を装填しようとしても間に合わないだろう。


 ダンの拳でも、きっと受け止められない。


 モナはそれを悟って、ハンナのように、みんなを守るように手をかざした瞬間だった。



「『円剣(カット・ギロチン)』ッ!」



 ――ザシュッ!


 その言葉と切れる音が聞こえたと同時に、ゴリムバチの胴体と、首がぱっくりと離れてしまった。


 否……、斬れてしまったのだ。


 ゴリムバチの頭は、エレン達から少し離れたところに、勢いよく落ちて緑色の液体を吹き出し。


 胴体だけとなったそれは頭があったところから緑色の液体をぴゅーぴゅーっと吹き出し、ふらふらと酔っているかのようにふらつきながら飛び回る。


 それを呆然と見ていたエレンとモナ。ダンに至っては頭を垂れてしょんぼりしてしまった。


「すいませーん!」と、どこからか声が聞こえた。


 その声を聞いて、モナ達は声がした方向を見た。


 モナはその子を見て思った。


 ――なんだろう……、この子は強い。と……。


 黒い装束に身を包んだ黒髪で、背後には牧師のような影を出していた……鎌を構えた少女――リッパーのシャイナは大声で申し訳なさそうに言った。


「すごくうるさくて、もしかして狙っていたモンスターでしたら……、ごめんなさーい!」

『アイムソーリィー! デェスッ!』


 ……これが。


『アストラ』とシャイナの初めての邂逅で、運命の転機でもあった。


 シャイナにとって、エレン達にとって……、そして……。


 モナにとっても、大きな転機であった。

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