95話 設置作業?
「しかし、本当にデカい魔法石だな。 これもキサマの母上殿が拵えたのだろう?」
「ですね。 流石母さんですっ!!」
「このよう様な魔法石を拵えるドラゴンが居るとはな。 もし、これだけの力を振るえるドラゴンが勇者だの魔王だの言っていた時代に存在していたら、勇者なんて必要なかったかもしれんな」
「居ましたよ」
「何っ?」
あ、そっか何でそんなに驚くのと思ったらウルズさんは母さんと勇者様の関係を知らなかったんだっけ。
「居たとはどう言う事だ?」
「んーっと。 信じてくれるとは思っていませんが、よく聞くお話の中では勇者様は光の神様から力を授けられたとか言われているじゃないですか」
「うむ」
「あれ、間違いなんですよ」
「ぬ?」
「勇者様に力を授けたのは、母さんとめーゆーさんって方だそうですよ。 母さんから教えて貰いました」
「……ぬ? めーゆー? 盟友の事か?」
「よく知りませんが、めーゆーさんはめーゆーさんです」
あぁ、背中に感じるウルズさんから飛んで来る何言っているんだこの小娘はオーラが強くなってくる。そりゃ僕だって、最初は半信半疑でしたけどね証拠を見ちゃったんですよ。
「小娘、キサマが母上殿を慕っているのはよく解る。 確かに、実力も貫禄も吾輩が今まで対峙した中で群を抜いて上だが。 何でもかんでも妄信するのはどうかと思うぞ?」
「ウルズさん。 勇者様の家系って今もまだ続いているって知ってます?」
「急にどうした? 今そんな話をしていないぞ。 確か、ガルシュとか言う国だったか?」
「ええ、ガルシュ王国ですね。 今もその国で貴族をやってます」
もしかしたら、貴族ではなく王族にとって代わるかもしれないですが……もしそうなった時には……
「ん? どうした、何かドス黒いのが出始めたぞ?」
「あっ! いえ、ちょっと嫌な事を思い出しちゃいました。 で、その勇者様の血を引いている者だけが使える魔法と言うか技があるんですよ」
「ほう」
「勇者の家系だけが使える聖なる光の魔法を武器に流し込んで使う技なんですけど、それをですね……」
「……なるほど、母上殿も使えると?」
「ご名答」
まぁ、母さんの場合は魔法剣ならぬ魔法爪でしたけどね。
「とても狭い世界しか知りませんが、僕が今まで見て来た人の中であの技を使えるのは勇者様の血を引いている存在か母さんだけです。 確かにウルズさんを納得させるだけの力はないかもしれませんが、僕にとってはそれだけで十分なんですよ」
あの時は混乱の中で使っていたから実感はあまりなかったけど、僕がどんなに渇望しても使えなかった力をいとも簡単に使っていたんだ。だから母さんの言っている事は間違いない。
「まぁ、そんな訳でちょっと話が逸れちゃいましたけど母さんはあの時代にも居たはずなんです」
「そうか。 流石に全十で信じる事は出来ん。 が、普段常に気の弱そうなキサマがそこまで強気で言い張るのなら多少は信じてやろう」
「それはどうも。 さて、この魔法石って動かすのちょっと大変なのでお喋りはいったん中断して集中しますね」
「そうか、すまんな。 無駄話をして」
「いえ、母さんの凄さを自慢できたので大満足です」
魔法石をロッドの先でツンツンする事数分、予想通りに動いてくれずイラっとする事もあったけどやっとこさ石柱の真ん中まで移動させる事が出来た。
「あとは、鎖を巻き付けるだけだけど。 どうやれば良いのやら」
「どうやらその心配は、無駄に終わりそうだな」
「それはどう言う?」
「それはだな……まぁ、説明するよりも見た方が早いな。 小娘よ、そこらに転がっている砕けた鎖の破片を見ろ」
ウルズさんの指を指したところへ目を向けると、言われた通りな鎖の欠片が落ちている。 よく見たら、フルフルと震えている様な?
「あ、浮き上がった」
辺りを見回すと水で流されあちこちに散らばっている破片も少しづつ浮き上がってきているのが分かる。これはひょっとすると、ひょっとして思いっきり手間が省ける状況なのでは?
「もしかしてここに集まって勝手に直ってくれるのかな?」
「確証は持てんが、そう言う事だろうな。 だが、現状を復旧する魔法と言うのは融通が利かん物が多い、特に周りに居る奴の事など考えていないのが殆どだ」
「あの、言っている意味がサッパリなのですが。 急に何故そんな事を?」
「悪い事は言わん、伏せて丸くでもなっていろ。 『秘儀・分解!!』」
「え? 丸くってどう言う?」
急にバラバラと音を立て、そこらに転がって居そうな成れの果ての様に崩れたウルズさんを見下ろしながら質問を投げかけた途端。
ヒュッ
っと、風切り音を立て目の前を小石……じゃない、鎖の欠片が恐ろしい勢いで通過していく。
「え? えぇ?! これって、えぇぇぇぇ」
「やはりかっ! しゃがめ、小娘っ! 普通の人間なら簡単に頭蓋が砕け散る速さだ、当たれば幾らキサマが頑丈だとは言えそれ相応な衝撃になるぞっ」
現在、広場の真ん中。飛び散り流れ散った鎖の破片は広場中にある。幸いと言って良いか知らないけど、イエーガーさん達は階段近くで待機中のおかげで、欠片の射線上には居ない。居るのは僕達だけと思いきや、横に居た骸骨は一目散に被害の少ない形態に変形済み。つまるところ、これから始まるであろう迫り来る欠片の礫の嵐に巻き込まれるのどうやら僕だけの様だ。
「お、おぉ……ふぉおおおおおぉぉおぉぉぉぉぉお!」
理解し考えが纏まる前に二つ目、三つ目の欠片が飛んで来たと思ったら、そこからは我先にと一斉に襲い掛かって来る破片、破片、破片。
「のおおおおぉぉお、ひっ、ふぃ! のぉん!」
「おいっ! しゃがめと言っているだろう! いい加減吾輩の話を聞けっ!」
「そう言われてもっ! ひっ! しゃがむって言ってもぉ! タイミングがぁ! あ痛っ!!」
今持てる全力で避けてたけど、ウルズさんの返事に意識を集中しちゃったせいかお尻に一つ当たった。
「無駄な動きが多いくせにそこまで避けているんだ、ちょっとした隙に倒れ込めば良いだけだろうがっ!」
「で、でもぉっ」
「ええい、ぬんっ!」
ウルズさんの気合一閃のあと、飛び交う鎖の破片の隙間から一本の骨が飛んで来る。躰を捻りクネリしっかりと重心が掛かった右足に向かって、間違いなくタイミングを合わせた絶対に避けれないそこしかないと言う様なタイミングでそこいらを飛んでいる破片よりも速く的確に、この骨の所有者の意地の悪さを具現化したような勢いで右脛に飛んで来る。
「あだっ! ぴっ!」
脛に当たった骨に足を掬われそのままおでこから地面に飛び込む。
「そのまま伏せているろっ!」
「い、痛ひ……」
お尻に当たった破片より、骨の当たった脛とその勢いで叩きつけたおでこの方が痛いです。本当は何か反論とかしたかったけど今は言われた通りに丸くなっていよう、それが一番安全かな。




