6話 新居探し
母さんと姉さんと僕の三人(匹?)でお出かけ。
僕が独り立ちした時に住み着く巣探し。
事の始まりは昨日、夜ご飯が終わってあとは水浴びでもして寝ようかと思った頃。
「まだ独り立ちは先の話だが、そろそろ巣の準備を始めよう」
「巣、ですか」
「母がいくつか候補を見つけて来た。 明日から見て回るぞ」
母さんが僕の教育を姉さんに任せて度々いなくなっていたのは候補地探しをしていたとの事。
朝食を食べ終え、早速一つ目の場所に向かって飛ぶ母さんに付いていく。
少し遠い場所だというので、母さんの尻尾に噛み付いて引いて行って貰う。
自分ではとても出す事の出来ない速度で飛んでいる事に感動しながら横を見ると、姉さんが普通に付いて来ている。
やっぱり僕と姉さんの差はまだまだ縮まらないな。
最初に連れてきてもらった場所は、母さんの巣から僕だけで飛んだら丸々一日は掛かるであろう絶海の孤島。
「最初はここだ」
「無人島ですか?」
「ああ、人と距離を置いて生活するには丁度良い場所だな」
島の真ん中に丁度良さそうな高い山がそびえている。
何か、とても寂しそうとしか感想が出て来ない。
「ここだと、主食がお魚になりそうね!」
「確かに、島にはあまり腹を満たせそうなのが居ないからな、さて次の候補地に行くぞ」
母さんに引かれて海の上を飛んでいると再び島が見え、その上を旋回して確認。
今度はさっきの無人島より大きく、周りに港と漁村が点在している。
やはり真ん中に高い山。
「ここは人が住んでますね。」
「先ほどの島と違って嫌でも人と関わる事になる。 実際に住んでみないと、どうなるかは分からんがな」
「どうなるとは?」
母さんの説明によると、周りとあまり交流の無い島に住んでいる人間は独自の風習を持つ者が多い。
竜を隣人として見てくれるか、外敵として見られるかは実際に住んでみないと分からないそうだ。
しかも大体は顔見知りなので、竜人族として紛れる事も出来ないらしい。
「面倒なら力で支配しちゃえばいいのよ」
「姉さん、物騒です」
三か所目は僕の方向感覚が狂っていなければ、母さんの巣がある場所とは対岸になる陸地。
それをかなり奥まで進んだところにある山。
麓はうっそうと生い茂る森林、かなり離れたところに小さな村がいくつか見える。
「ここなら意図的にこちらから出向かない限り、人と関わる事は無いだろう」
「そうですね、一番近い村からでもかなりの距離がありますし」
ここなら人恋しくなった時に旅の竜人族で通せそうな気がする。
けど、僕の小さい体では迷子と思われそうだね。
「見て見て! ここならご飯に困りそうにないわ! お肉がイッパイよ!」
姉さんの言葉につられて千里眼の魔法を使って麓の森林を確認すると、そこら中に食料になるモンスターが見える。
人がここまで入ってこない証拠なんだろう。
その後、何ヶ所か見て回って最後の一か所。
母さんの巣と同じ大陸で、千里眼の魔法を使わなくても母さんの巣が見える場所。
麓の北側には街道が重なっている為に大きな街があり街道を北に登っていくと城と城壁が見える。
南側はそこそこ大きな森、その先は海。
「ここは見ての通り今までの中で一番人と近く、一番多くかかわる事になるかもしれない場所だ。 母の近くではあるが最も危険がある」
「はい……」
「固くなるな、ここに住んでいる奴らは我ら竜を信仰の対象とみている。 一部の冒険者にだけ気を付けていれば問題ない」
魔王と言う存在が居ない今、力で身を起こそうとする者はどうしても魔獣や竜の様な強い生き物を討伐して力を示そうとするバカが居るとの事。
実際に討伐されることは、僕程度の力でもまずありえないけど怪我はしてしまうから注意が必要らしい。
「今決める必要はないが、住みたい場所はあったか?」
「はい、ここにします」
「ほう、随分と早く決めたな」
危険があるかもしれないし、姉さんに甘えん坊ってからかわれてしまうかもしれないけど、母さんの近くが良い。
いつでも母さんに会いに行ける場所に住みたい。
「そうか、なら準備をしよう」
「ママから離れるわよ。 私に付いて来て!」
姉さんが急に慌てたけどどうしたんだろう。
とにかく付いて行けばいいのかな?
そうか、これから頂上を吹き飛ばして住みやすくしなくちゃいけないんだっけ。
てっきり僕がやらなくちゃいけないと思ってけど、母さんがやってくれるのか。
「ママのブレスはシャレにならないわ、私の後ろから絶対出てはだめよ!」
「えっはい?」
「吹き飛ばした山頂の破片が下に落ちないように、全てを蒸発させる威力なの」
姉さんが展開した防壁魔法の裏から母さんを見て息を呑む。
山頂に向け広げた口に光が収束していき、収束が収まった瞬間……母さんの口から横に向かって光の柱が出て水平線へ消えて行きその後に凄い衝撃波が襲ってきた。
間違いなく姉さんの後ろに居なかったら吹き飛ばされる強さ。
あれっブレスって口から出たらブワッて広がるはず、何で広がらないであんな見えなくなるまで飛んでいくの?
「ふー、耐えれたわね。 大丈夫?」
「はい。 そっそれよりも、今の母さんのブレスって……」
「気にしちゃだめよ、ママが特別なだけだから。 さっママの所に戻りましょ」
母さんってこんな凄い事が出来たのね。
僕もいつかあんな事が出来る様になるのかな?




