41話 新装備
杖やダガーの具合を確かめろと言われ、目の前に作り出して貰った氷の塊を一心不乱に叩きつける。
その間に姉さんに仕立て直して……もとい、完全に作り変えられてしまった僕の装備を、若干元気の無くなった母さんが更に作り直してくれる事に。
そんな事をしてかれこれ十分程経過、どうやら作り直しが終わった様で母さんがこちらに歩いて来る。
「えいやっ」
「柄の握り心地や、重さはどうだ?」
「そうですね、杖の方は全力で叩きつけても飾りや宝玉に傷一つつかないですし、握り心地も完璧です。 でもダガーの方は握り具合も重さもちょうどいい感じですが……」
「どうした?」
「刃の切れ味が良過ぎて怖いです」
特に力を入れずとも、振り下ろすだけで簡単に刃が氷に入り込んでしまう。
きっと、ダガーを使う本職の冒険家の人達ならとても喜ぶのだろうけど、僕には宝の持ち腐れと言うか事故が怖い。
多分、無意識に振っただけでも触れた物を切り刻んでしまいそうだ。
「刃物なんて、切れ味が良いに越した事は無いだろう?」
「それは使い慣れていればそうなのでしょうけど、正直僕にはここまでの物は必要ないです」
「なら、切れ味を落とす魔法を掛けておくか。 それなら必要な時に魔法を解除していつでも本来の切れ味に戻せる事が出来る」
「是非、お願いします」
「ならば後で手を咥えよう。 それよりも、服を作り直した。 どうだ自信作だぞ?」
先程と打って変わって、いつも通りの母さんが目の前に広げてくれた装備を見る。
配色は白を基調として所々に青が混じっている、教会とかで着ていたら似合いそうなワンピースの丈の長いスカート。
姉さんの今風の装備と打って変わって、とても高級そうな装いに纏まっている。
纏まっているけど……なぜ母姉揃って冒険者っぽくない配色な上に、スカートなのだろう?
確かに、この前姉さんに街に連れて行って貰った時、入ったギルドでは派手だったり、スカートを履いている人もそれなりに居たけど、僕の方が常識が間違っているのだろうか。
出来ればズボンにして欲しいと我儘を言いたいところだけど、自信満々の表情を浮かべている母さんにそれを言うのも気が憚られる。
後で下に履く短パンを拵えよう。
「えっと、とても素敵だと思います。 でも、白は何と言いますか冒険者の服としては汚れが目立ちそうだと言うか洗濯は大変そうかなーって、やっぱり冒険者なら汚れの目立ちにくい茶色とかの方が……」
「ふっ安心しろ。 血を浴びようが飛び散った肉片を浴びて油染みが出来ようが全て水で洗い流せる」
「そっそうですか」
汚れ対策ばっちりかー、しかも例えが血と肉とか生々しい。
そこは泥とかにしてほしかったな、血や肉片を浴びた自分を想像してしまった。
せめて色は変えられるかな? なんて思ったけど、これでは難しい。
「サイズは多分合っているはずだが、一度身に付けて確認してくれ」
「……はい」
手渡された装備を改めてじっくり見つめる。
スカート……非常に抵抗が……ええい、覚悟を決めろ!
人になる事なんてそんなにないんだし、これ以上おかしな事をして折角機嫌が直った母さんを落ち込ませる訳にもいかないか。
「ど、どうです?」
「うむ、似合っているぞ。 サイズも問題なさそうだな」
「ええ……」
「よし、装備関連は問題なさそうだな。 さて、今日来た理由だが」
あ、そうだった
装備のせいで完全に頭から抜けてた。
「何か誇れるものが見つけたいと漠然な相談だったからな、母なりに何か良い物が無いかと色々考えてみたんだが、思いつく物が無い」
「そんなぁ」
「まぁまて落ち込むな。 無いなりに考えて一つ丁度良さそうなものを思い出した」
色々と知っている母さんが思いつく事が無くて、ふと思い出した修行って……
不安しかない、一体何をさせられるんだろう。
「折角だからな、勇者に関わる場所で鍛錬を積ませてやろう」
「へ? 勇者ですか?」
「うむ、どうだ少しやる気が戻って来たか?」
漠然とした相談をした僕も僕だけど、流石にその説明ではやる気が出るよりも混乱する方が先に来てしまう。
勇者に関わる場所? 見当がつかない。
まさか、魔王城とか?
「ここで説明するより、実際にその場で説明する方が早い。 そんな遠い場所では無いから今から行くぞ」
「え? あっちょっと待って下さい」
急に竜に戻った母さんが羽ばたき飛び上がる。
それに遅れまいと僕も竜に戻り、母さんに付いて行く。
そんな遠い場所ではないという事は魔王城の線は無いって事か、確かずっと北の寒い所にあったはず。
出来れば、暴力的な事はやりたくないなぁ。




