表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/97

84


バシッ。

私はガルディア皇帝の手を叩き落とした。

「・・・・・・へえ?」

酷薄な目をしたガルディア皇帝を私は睨みつけた。

「そんなことしちゃうんだ?」

「うるさくてよ!!」

やけくそになって、ゴウエンが持っていた剣を持ち上げる。

そしてその切っ先をガルディア皇帝に向けた。

(こいつの手を取れば、自分の力の使い方や戦争が回避されるかもしれないの。でも、それは全て「かもしれない」こと。信用できない人に着いて行くなんて馬鹿のすることだわ。今、私が捨てるべきものはない! しいて言うなら、今迷っているこの心!)

本当に迷うけど、本当にこれでよいのか不安だけど、私はこっちを選ぶ。間違っていたら、その時はその時になったら考える。

「戦争になるかもよ? お優しいお姫様は耐えられるの?」

「そうね。でも、あなたに付いて行って戦争にならない保証がどこにあるの。今までの自分を振り返ってみなさいよ。倫理も何もない非道な行い。あなたに付いて行けるだけの信頼もクソもないわ!! 自分の存在や力に違和感を覚えても、どれだけ不安になっても、私は、あなたの手だけは取らない!」

そう言った瞬間、ガルディア皇帝は一瞬顔を歪めた。何かを失った、そんな表情だった。

(なんでそんな顔するのよ・・・・・・)

「ガルディア皇帝。何かを守るには確かに、何かを捨てなきゃだめかもしれないわ。でも、私はまだ、何も捨てずに、すべてを守れて幸せになる方法をあきらめたくない。あがいてみせる!」

「・・・・・・やっぱり、君は変わっているよ。なら、何も守れず、幸せになれないって選択もいれておきなよ。ラルム、お前、お姫様を殺さない程度に痛めつけろ」

ラルムの体がびくっとはねた。

(こいつ・・・・・・)

「大層なことを言ったのはいいけど、結局、状況は何も変わってない。力を操れない君のその小さな体では何も守れやしない。ちょっと痛い目を見たらいいよ。大丈夫、殺しはしない。ちゃんと手当てをしてあげる。ラルム、立て」

ラルムはいやだと泣きそうな顔で首を振った。

「姫、様」

「ラルム」

ラルムは顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた。「ゴウエンが心配」と言っていたあの言葉も思いもきっと嘘じゃない。自分がスパイだと認識しても彼は・・・・・・。

「ラルム、大丈夫よ」

「え?」

「私はあなたを許すわ。あなたがどんな思いで、今日、ここまで生きてきたのか。今、どんなにつらいのか、ちゃんとわかっているわ。だから、そんな顔しなくていいの。どうか、泣かないで」

ラルムの瞳から、さらに涙が出てくる。苦しいのがよくわかる。

「私はあなたを恨まないわ。大丈夫。一緒にお家に帰りましょう。また、元通りだわ」

「姫様・・・・・・」

(そう、元通りにできる。今ならまだ・・・・・・)

「ラルム、あなたはどうしたいの?」

「俺は・・・・・・」

「こちらに来たいなら、今すぐ私のもとに来なさい!!」

(こちら側に付いて!!)

「本当にムカつくなあ」

「ごほっ!」

ガルディア皇帝は、忌々しいとばかりにラルムを足で蹴り飛ばした。

「やっぱり、僕がやる」

ガルディア皇帝が残酷な笑みを浮かべ、私に向かって手を伸ばしてくる。

「やるならやればよいわ! あなたなんかに負けない!」

(負けてたまるか!)

私はガルディア皇帝を睨みつけた。

ガシッ。

ラルムがガルディア皇帝の手を掴んだ。

「放しなよ。君の主人だよ?」

「違う! お前は違う! ・・・・・・今、決めた。俺の主人は、お前じゃない! 俺の主人は姫様だ!」

ラルムはそう言うと、ガルディア皇帝に向かって剣を振りぬいた。

しかし、それはあっさりと避けられた。

「やれやれ・・・・・・まいったね」

そう言う割に、全くまいったという顔をしていない。

「姫様、俺は・・・・・・」

「言い訳は後よ!」

今はそれどころではない。何とかして逃げなくてはならない。

「なら、二人まとめてにするよ」

「とにかく逃げるのよ!!」

ガルディア皇帝はそう言うと、手のひらに作り出した氷の刃をこちらに向けて放った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ