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いつも読んでくださりありがとうございます。

私はどこに来てしまったのだろうか。



私は今、真っ暗な空間の中に一人立っていた。周りには真っ黒な空間が広がっている。




明らかに現実世界ではない。が、夢ともどこか違う気がする。ほっぺをつねったら痛かったのだ。



私は陛下たちに助けられて、ルカに地下室から地上へと運ばれた。そのことは覚えている。あの古びた館の地下が、子供たちの監禁場所だったということだ。

「まさか後宮の中にいたとはね・・・・」

灯台下暗しとはこのことだなと思う。しかしあんなお膝元にいてなんでわからなかったんだろう。


「後宮には占術師の力も国王の風も届かないからな。仕方あるまいよ」

突然聞き覚えのある声が聞こえた。


「・・・・・・数時間ぶりですか?」


そこには髪の毛が輝きすぎな摩訶不思議な人間ではないと思われる彼が立っていた。


「違うな。現実ではもっと経っている」



「うそ」

まじか。思わずつぶやいた。


「われは嘘は言わない」

ああ、それはきっとルカが心配しているわね。あの無表情のルカが本当に泣きそうな顔をしていたのだから。

「そうですか・・・・。それで、先ほどの言葉はどういうことですか?」

「そのままの意味だ。後宮には多くの魔術師が結界をはっている。他国連中にのぞき見られないようにな。だからこの国の占術師とて内部はのぞけない、わからないようになっている。国王は完全に自分のお膝元だが原因とは思っていなかっただろうしな」

「・・・あの国王様にもそんなことってあるのですね」

「あの館が、と言うのも大きいだろうな」

「?」

「詳しいことは知らないが、あそこは何世代か前の王の妃が寵愛を取られて非業の死を遂げた場所とかいうものになっているんだろう?」

「そう聞きました」

「実際は、好きな男がいるにもかかわらず政略結婚をさせられたある国の王女を哀れに思った国王が、穏やかに暮らせればと思って建ててやった館だ」

「え、そうなの」

それはずいぶんと話が変わったものだ。

「そうだ。はずれに立てたのはいらぬ嫉妬を買わぬため。・・・・今回そなたが助かったのは彼女・・のおかげだ。後で礼を言っておけよ」

「はい・・・って、え?」

ちょっと待って、今とんでもないことを聞いた気がする。

「・・・・・・まさか幽霊が本当にいる・・・・わけ?」

そういえばあのヨシュアモドキがなんでか幽霊騒ぎになった・・・・・・・とか言っていたような。あの人形遣いのキースの女型の人形かと思っていたんだが・・・・・・。


「いるぞ」

「マジか!!!・・・え?つまり、幽霊の王女様がいるってことですよね!?」

思わず素で話してしまった。

「そうだ。成仏できずに浮遊霊になったらしいが・・・・」

「・・・・・・・・・」

浮遊霊・・・・・・・。

「別に悪さもしていないし好きなだけとどまればいいと思った現王があの館の周りに守りの結界をはったんだ。後宮は負の気がたまりやすいから悪霊になっても悪いしな。消えたいときに消えたらよいとでも思ったんだろう」

どっから突っ込むべきなのか・・・・。優しいね、陛下。


「・・・・・・・つまり陛下はあの場所に幽霊がいることを知っていたのね?だから、たいして気にしていなかったと?」

「だな。結界の効力が弱まって、彼女が少々悪霊化したとでも思って、この件が片付いたら浄化するなり滅するなりと思っていたんだろうな。実際はあの王女浮遊霊が、自分のテリトリー内に子供たちが運ばれているが自分じゃどうしようもなくて泣いていたところを人に見られたんだろう。まあ、実際は人を呼ぶつもりなだけだったのかもしれないが・・・・・」

幽霊も感情が高ぶると霊感がない人でも視えたりするらしいからな。もともと浮遊霊になって地上にとどまれるだけの力があったようだしな。


なんてことだ。彼女、驚かすつもりはなく一応頑張ってくれたらしい。


私が見たのは幽霊だったのか、それともキースの人形だったのかは遠目ではわからなかったのだが、とにかく結論としては幽霊はいる、と。


「なんとなくわかってきたわね・・・・・。で、どうしてあなたはここにいるのですか?」


「・・・・・・叫びを聞いた」


「は?」



「そなたの叫びを聞いたから、来た」



叫んだ覚えなんてないけど。



「・・・・・・・・思ったより平気そうだな」

ものすごく呆れた顔をされた。本当に失礼だよね。



「平気ではないですよ。今回のことのからくりはなんとなく理解できましたけど、わからないことが多すぎます」

私のこととかね。いや、なんとなく想像はついているんだけれど?ええ、本当に。めんどくさそう。


「理に引っかからないことなら、我が教えても構わないが・・・・・・」

「・・・・・・今は遠慮しておきますわ。というか、なぜ知っていますの」

「そなたよりずっと長生きだからな。それに、われはそう言う存在なのだ」

本当にこのヒトは何者なのだろうか。


「人ではないのよね・・・・・。あなたの正体がまったくつかめませんわ。この世界って、本当にファンタジーだわ」

「その言葉・・・・」

「え?」


「なにも。・・・・別に知らなくても問題はないからな」

「・・・・・・・・」

その顔はどこか懐かしむような顔だった。



「あとは、そなたの魂が狭間にいたのがわかったからだ」

「狭間?」

「時の狭間、空間の狭間・・・、呼び方はいろいろあるが迷い込んだらどの時代のどこに落ちるかわからん。ひどければ自我が吹っ飛ぶ」

何それ、怖い。

「え。私がいる空間って・・・・・」

「そう言うことだ」

なんでそんなところに私がいるんだよ!!こわいわ!!


「ここはわれの監視領域なのだ。人間は本来ここに来ることはできないが、なぜかそなたの魂はここにいた。さすがに仕事をしないのはまずい」


「・・助けに来てくれたのですか。それはありがとうございます」

私は心の底からお礼を言った。そんなヤバいところからはサッサと帰りたい。


「・・・・・・・・・・・・早く帰ってやれ。そなたの親たちがどうなっているか想像に難くない」


「あー」

帰りたいような帰りたくないような。知りたいことが山ほどあるから目を覚ましたいとは思うけど・・・・・。


「ルーシェ」


「はい?」

なんだ?と顔を上げた。


「そなたの望み、われがかなえてやろうか」

突然だった。


「はい・・・・?」

私の望み・・・・・・・?


「そなたの視た未来を現実にはしたくないのだろう?」

なんで知っているのかなんて、もう聞いても仕方なさそうだ。きっとそう言う存在だからとかいうのだろう。

「・・・それは、そうでしょう」

この国を戦火に巻き込むなんてできないわ。わたしの前世はただの一般人なのだ。そんな度胸もないし、命を背負えるような人間ではない。


「われがかなえてやろうか?」

もう一度聞いてきた。なぜ、私の望みをかなえてくれるなんて言うのか。

「・・・・・・・・」

私は彼を見上げた。彼の目は私、と言うよりかは私を通して別の人を見ているようだった。何かを後悔している、苦しそうにも見えた。あの子・・・が、関係しているのだろうか。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もし、12歳までにどうにもならなかったら、頼みますわ」

かなりの沈黙の後、私は答えを絞り出した。今決めることなんてできはしないので、答えをはぐらかしておいた。


いざとなったら頼もう。保険は大事だ。


連れて行かれて食べられるなんてないはずだから。


「そうか。・・・・・・・なら、どうにもらない時はわれを呼ぶといい」

「呼ぶって・・・・。失礼ながらお名前は?」

そういえば名前を知らないことに気が付いた。名前を確認する前に消えてしまったしね。


「名前・・・・・・・」

彼は少し考えているようだった。え、考えるようなことなのだろうか。


「イリシャ」


「?」

「そう呼ばれていたことがあった。意味は一応あるらしいが」

「イリシャ・・・・・・・・・・・・」

女の人みたいな名前だなと思った。

「今、失礼なことを考えただろう」

「そ、そんなことありませんわ」

こわっ、心を読むなんて能力は勘弁してほしいものだ。でも、とてもしっくりくる気がする。なんかどっかで聞いたことがあるような・・・・・。

「イリシャ、ね。あなたのこと、どうにもならなくなったら呼びますわ」

できれば、呼びたくないけれど。


「最後になんですけど」

これはさっきも思ったことだ。

「なんだ?」

「どうして、そこまでしてくれるのですか?」


「・・・なんでだろうな」

いや、知らないよ。

「あの子に、そなたが似ているからかもしれない」

やっぱり私を通してあの子を見ているというわけか。あの子って誰だよと言いたくなったが、やめた。それは私が踏み込んでいい範疇を超えているような気がするのだ。


「私はあの子ではないですよ?それでも助けてくれるのですか」

「ああ。・・・あの子の血筋であることは間違いないからな」

「それ「そろそろ、戻ってやれ。さらに時間が経ったぞ」・・・はい?」

「ここの時間感覚と、お前の世界の時間感覚は違うからな」

「100年経っているとかはないですよね」

本当に怖いわねここ。まさかと思うが、浦島太郎状態ってことになってないだろうな。

「それはない。それではそなたの体も死んでいるぞ」

さすがにそうだよね。





「目を覚ましてやれ、ルーシェ」


そう言われた瞬間、世界が、ゆがんだ。













「ああ・・・・・。まさかこんなことになるなんて・・・・・」

一人の女性がベットに横になるルーシェのそばに立っていた。

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